少年と少女の在り方
飛行士
それは空を走る者達のこと。
空を走る機体、装空機にまたがり、空をゆく。
人は彼らを鳥と読んだ。
空は空を走る者にしか分からない。
感情を持った風は時として嵐となり、鳥を堕とす。
風となりて飛竜が飛ぶ。羽を折られた鳥は飛ぶ事すらままならない。
だが、鳥達の嘴は折れてはいなかった。
激情を孕んだ風を乗り、美しく舞い飛んだ。
飛竜に鉄の弾そして、己が魔陣で対抗してみせた。
鳥達の目的はただ一つ。空に輝く空陣、その向こう側へ行く事。この物語は空を、そして鳥達の夢を誰よりも強く想う少年と少女の物語である。
ジリリリリリリ———
頭上から降る耳をつんざくような音、意識はまだ遠い。だが、意識を更に遠ざける事を窓から射す朝焼けが許さなかった。仕方がないので体を起こす。起きなかったときのペナルティが怖い。いい匂いがする。この匂いはオニオンスープと、ベーコンのハチミツマスタード炒め———。肉!
意識が覚醒する。服を着替え、歯を磨き、食卓に早足で向かう。食卓には見慣れた姿があったが、気にも留めない。
「おはよう。相変わらず肉となれば早いね。」
少女が苦笑する。食卓にはパンとオニオンスープ。そして、甘い匂いとスパイシーな香りをまとったカリッカリに焼けた分厚いベーコンが並んでいた。理想の朝食とも言えるそれにフォークを刺す。
「今日のマナ量と風は異常なし。飛竜の目撃情報もない。穏やかだよ。」
少女は業務連絡を耳を傾けながらも口に運ぶ。肉汁が口の中に溢れ出す。旨味を噛み締める。
「仕事は手紙の配達、隣町の商会の物資の運搬。そして、アン・レインからの出頭命令」
朝食が一気に美味しくなくなった。
「出なかったら?」
ニッコリと少女は笑う
「仕事がなくなるね。そしたらここから出て行く」