表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第1話


ここはごく普通の中学校である、特徴がなさすぎて特に語るところがない。これからそんなどこにでもあるような市立中学校での話をするのである。ま、出来れば、最後まで付き合ってくれ。

俺は荒川樹里、樹の里と書いてじゅりだ。見たまんまだけれども。由来は俺が七月(July)に生まれたかららしい。趣味はアニメ鑑賞とゲーム攻略、特技は特になし。期待してる人には悪いが、ごく普通の地味な男子中学生だ。

俺には幼馴染が一人いる。名前は篠宮(しのみや)ひかる。なんか韻を踏んでるが、気にしないでおくれ…あいつはいつもキラキラと輝いていた、見た目も中身もそれほど悪くない。ナルシストだが…

「ねえ、じゅり、俺の話聞いてた?…真逆、俺の美貌に惚れた?」俺の唯一と言ってもいい親友がそう言って、爽やかな笑顔を浮かべた。

「…すまん」正直、篠宮はうるさい人だと思う。長年付き合ってきた俺はもう半ば諦めているから、話は可能な範囲聞き流している。だから、君たちも読み流していいと思う。

「俺の美貌に関してはスルーなのか⁉︎しかも幼馴染の話も聞かないなんて…俺はお前をそんな風に育てた覚えはないよ〜ま、いい、そういう素直なところも好きだ。」

「別に貴方に好かれようとはしてません、あと、あなたに育てられた覚えはありません…で、なんの話だっけ?」これ以上続くのは危険すぎると察知し、俺は話題転換をした。

「えっとね、今日転校生が来るらしいよ、女の子、しかも、イギリスからだってー!金髪美女かな?ま、俺に比べれば程遠いと思うがな。」親友はそう言って、鼻をならした。おい、君は確かに美男って言えるが、所詮男だ、女と比べてどうするっとツッコミたくなった。

今日は中学校三年生になって初めての登校日だ。俺と篠宮は3年B組で、三年連続同じクラス。最初の反応は「もう一年面倒を見なければいけないのか…」と心の声がダダ漏れてしまったことだ。

本鈴が鳴る。

まだ担任が公開されていないため、元三年B組を担当していた先生がホームルームをすることになっている。入って来たのは、体育の先生である河崎。筋肉を自慢として、歳は30歳後半ってところ。生徒に厳しいが自分にはもっと厳しい。だから、あまり恨みは買われない。しかし、俺の親友は違っていた。

河崎先生が教室に入るなり、篠宮はげっと声をあげ、自分の席に逃げるように走って戻っていった。ネズミより速かったかもしれない。

「篠宮!なにやってんだ!本鈴が鳴る前に座るように!もう三年生だから、それくらいのことは守れ!あと、前髪が長い!目を隠しちゃいかんと何度も言っておるだろうが、今日中に切ってこい!」兎に角、河崎は校則を破る奴に厳しい。俺の学校は普通の市立中学校なのに、校則は細々としていて、覚えるのにだいぶ時間がかかったものだ。篠宮に至っては、覚える気ゼロだけど。

「なんだよーチッ」怒られ慣れた篠宮は少しうんざりした表情を浮かべた。

「なんか言ったが?」河崎は出席簿から顔をあげ、すごい形相で聞き返した。「ひっ…い…いえ、なんでもありましぇん」「おい、動揺しすぎだろー!」何人かの男子がツッコミを入れる。俺の心をよく読み取ってくれたな、感謝するぞ。それからは、みんな自然と笑みがこぼれ、篠宮をいじった。あいつは元々からいじられキャラだから、本職に戻れて、嬉しがってんだろう、また面白くもない話を繰り広げて、みんなに話しかけていた。心なしか、俺の頬も少し緩んだ。あ、このことは誰にも言わないでおくれ、特に篠宮。こんな出来事もあり、新学期早々のピリピリした雰囲気も和らげ始めた。


「えー、では本題に入ります。今日からこのクラスに転校生が来ます。入れ」河崎はドアの向こうに呼びかける。ドアが開き、入って来たのは一人の地味な女の子だった。 失礼だが、どう見ても、地味という1つの単語しか浮かばない。茶色の髪の毛が一つ結びに束ねられて、丸メガネは顔の大半を隠していた。血色がなく、口は固く結ばれていた。肌は白い。スタイルも普通で、太くもなく、細くもなかった。「えー紹介をします。イギリスから来た華京院巴(かきょういん ともえ)さんだ。」「華京院です。よろしくお願いします。」口調はいたって平穏。声も何も特徴がない。流暢な日本語で、どこも変わったところなどなかった。

背後からみんなの失落感が伝わる。なんでみんな何かを期待していたのだ?まさか、女神がこんな田舎にある我が校に微笑んで、超絶美少女を転校させてきてくれると信じていたのか…? そんなラノベやゲームで起こるようなことは現実で起こるわけがないじゃん。



始業式はみんな整列して体育館に向かう。初めての日だから、出席番号順だ。俺は見事に男子の一番前になった。身長は普通だが、俺より名字が前の人はこの学年にいないから、三年間この一番前の席を守っている。もう正直こりごりだ。

面白みがなく、後ろを振り返ると、篠宮がいた。「よう、じゅり」「ようじゃないんだけど…お前場所ここじゃないだろ」「まーまーそんな堅苦しいこと言わないでよーどうせバレないしー」俺は肩を上下させて、ため息をついた。俺のため息がよほど面白かったのか、あいつは噴き出し、俺の肩をパンパンと叩いた。「疲れてんな、お前、ぷはっ、なにそのさっきのためい「うるさい…!」顔真っ赤だぜ?本当に疲れてるのか?」顔見て笑われるとなんだか無性に腹が立ってきて、言い返したら、真顔で聞かれたんすけど…俺はどうすればよかったのかな…?お前のせいだって言っとけばよかったのかな…そう後悔してる間も、篠宮は真面目な視線を俺に送り続けていた。なんか恥ずかしくなって、俺は背を向けた。



「えー、では、始業式は以上で終わります。次に、担任の発表をいたします。」

年老いた校長先生がマイクの前に立ち話し始める。みんなざわざわして、浮き足立っていた。

「はい、静かに。3年A組は池原先生、よろしくお願いします。」隣のクラスが歓声をあげた。池原先生は女性の英語の先生で、優しい上に面倒見がいい。顔もスタイルも良く、男子女子ともに人気が高い。みんな羨ましそうにA組を睨んだ。

「B組ー植村先生、よろしくお願いします。」沈黙が訪れる。そして、植村先生のお辞儀でやっと静かに拍手が起こった。無理もない。植村先生は美術の女先生で、無口なのだ。だから、印象も薄い、二年間授業を受けてきたが、授業以外で話をするところを見たことがない。果たしてこんなに弱々しい先生はこのクラスの担任を務められるのか俺は心配だった。でも、俺が心配することではないから、これからを楽しみにしとこう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ