第9話 魔族領への道
魔族領への道は良いものだった。
獣人と魔族の関係性が良いためだろうか。王都から見る限り、獣人たちは道づくりに精通しているのではないかというほどには道が良くできている。石畳ではあるけれども、良く整えられているし、欠けている石もない。やはり精霊を扱えるから、メンテナンスも簡単なんだろうか?
「なあ、ストレイナさん、獣人ってのは道づくりが上手なもんなのか?」
俺が気になったことを尋ねると、ストレイナさんは笑いながら言った。
「ああ、土の精霊と相性の良いいくらかの種族が道の管理を任されているのでね。彼らには好きに走っていい代わりに、道の整備を良くするようにと厳命されているんだ。」
馬とか、チーターとかは知るのが早い系の動物の血が入った獣人か。
「それって走るのが好きな一族か。」
俺の思い付きは当たっていたようで、ストレイナさんはうなずいた。
「ああ、彼らは催促とは何かを目指して走るのが好きなものが多いから、自然と道の管理に携わるようになっていった。無論、彼らの種族全てがそういうものではないよ。未知の管理を任されているのは、種族の中で特に速さを競いたがる者達が率先してやっていることなんだ。だから、皆常にやる気に溢れている。」
その後も道を管理する獣人たちの話が続いた。
馬、チーター、鳥族の中でダチョウ系の獣人たち、その他諸々速さを追い求める種族が管理しているんだそうだ。鳥族の中にも管理に協力知っている者たちが居るようだ。空を飛ぶ時の目印として道は有効だそうだ。それにレースとしても盛り上がるらしく、大会もあるという。
無論、地を駆ける騎龍、空を駆ける風龍なども参加するらしい。
なんだかんだで獣人というのは祭りが好きな一族らしい。
楽しいことがあれば、祭り。悲しいことがあれば、祭り。
嬉しいことがあれば、祭り。怒りに染まることがあれば、祭り。
そうして、喜怒哀楽のバランスを取っているらしい。だから、獣人族というのはいつでも祭りをやっているようなところもあるようだった。種族ごとに統計すればもっといろいろな祭りがあるそうだ。獣人全体として、祭りが好きらしい。戦いも好きで、強いものが正義という考え方は基本らしいが。
では、弱者はどうなのかといえば、力で勝る強者にも、精霊術で勝つなどすれば認められるらしかった。力が弱くても、精霊術で勝てばいい。精霊術で負けるなら頭脳で勝てばいい。それでも、勝てない者もいるが、それは仕方が無い。己に与えられた才を使い切って生きるように努力していれば、認められていくそうである。
ちなみに、日本で問題になっている引きこもりやニートなどはどうなるのかと問うと。
「家畜にしている魔物の餌になる。我々は何かを果たすために、人と獣の姿を与えられている。何も成さない無価値なものは存在してはいけない。何事も成さないようであれば、何物にもなれない。何かを成そうとしない者はこの国には不要だよ。」
と、獣人独特の価値観を示してくれた。
俺としては、人との関わり方なんかで引き籠る人の気持ちは少しだけは分かるけれども。だって、人間関係ほど面倒なものはこの世には無いと思う。特に空気を読めとかって、暴論もいいところだぞ。空気ってのは、気体だろう?そんなもんをどうやって読め、と言うのか?やれやれ。人間達よりも俺は獣人たちの方が付き合いやすい。
彼らは空気を読めとかは言ってこないしね。それに力こそが正義という実に俺にとってありがたい状況であるし力こそが正義と言うのであれば、俺以上の正義は存在しないのだった。実にありがたい事だ。だからこそ、ディアルクネシアには感謝の一念を贈る。ああ、ありがとうございます。俺に復讐者としてのスキルを目覚めさせてくれて。あれが無ければ、俺はすでに死んでいたからなあ。本当に有り難い。
故に、俺は何としても人間族の手から、雲の大陸に住む同胞たちを守らねばならないのだ。
大分、この世界寄りの考えになっているけれども、仕方が無い。この世界にも、なんだかんだで1年近くも居るのだし。それだけいれば愛着も湧くものだ。まあ、それでも光の大陸に住む人類にはどうしても、親しみは湧かないのだけれども。何かなあ、俺と同じ出身の人間が立ち上げた聖勇国くらいは認めてもいいんだが、他の国々が駄目過ぎだろう。
今だって、俺が依頼してエタナウォーディン達が大暴れしているんだが、そのどさくさに紛れて海賊たちが頑張っているしね。うん、うちの大陸の船の荷物を奪おうとして。だから、まあ彼らには病原菌をたっぷりと着けて人間界に還してあげたんだけれども。ゴミはごみ箱にって言うじゃない?
俺にとって、日本人以外の人間はごみとさして変わりはない。ただ、迫害された結果として、大陸の北端に住み続けさせられた民族達には同情する。だって、彼らは人間であるが、精霊達に愛された存在だからね。俺が保護してやらねばならんだろう。つまり、魔法に頼り切った人間達を圧倒的な魔法の力によって駆逐してやるのが俺の使命という事だな。
俺の魔法は新しく得た魔属性だからな。光の魔法を駆逐し、精霊術こそをこの世界の基礎にして見せよう。魔法は細々と生き残るといいよ。だってなあ、俺が大嫌いな召喚魔法なんてものは無くさねばならんだろう。だから、村人たちに優しいシステムを作ろうかな?人類側でも農民たちにはあまり嫌悪感は無いし。土と共に生きる者達は好ましい。騎士だの魔術師だのは殲滅対象だが。
薬師、農民、吟遊詩人、山で暮らす人々、海の漁師たちには優しくしてみよう。まあ、人間界の漁師は、今は辛抱して欲しい。後々には、豊饒な海を渡してあげるから。そのころには魔法使いは死滅しているだろうから。そうだな、魔力を強く持つ者は子供ができにくいようにしよう。その代りに精霊に対して親和性の高いものが生まれやすいように世の中に干渉しよう。それぐらいの呪いを与えることはできる。
…上級邪神を通り越し、魔神に昇格してしまった今ならば。
佐藤 唯志:ユウジ サトウ
種族:魔龍神 属性:魔、闇、冥、森羅
レベル4494 HP 2931593 MP 3090870
筋力 5405099(成長限界) 知力 999999・成長限界
耐久 5078099(成長限界) 魔力 6009087
敏捷 6090437 器用 5789046
魅力 99999・成長限界 幸運 9999・成長限界
*()内はスキルによる補正
権能
不屈の絶対復讐EX:いかなる障害があろうとも、スキル保持者が憎んだ相手に対して、与えられた損害の94倍の被害を与える復讐が行われる。ありとあらゆる損害を、強制的に相手に支払わせることが可能となる。回避不能、防御不能。また、復讐者たちに加護を与えることもできる。その場合、復讐者の基本ステータスが復讐を果たすまでの間は常に9倍となる。彼らが、スキル保持者の事を信仰するとスキル保持者のステータスが上昇する。
獲得スキル
上級鑑定:物の価値を判別するスキル。作られた背景や来歴までも鑑定可能となった。
攻防強化・極:筋力、耐久を常に10倍にする。いかなるステータス下降魔法も受け付けない。
塵殺技巧・極:戦闘に関わる能力が全て向上する。HP、MPが常に自動で回復する。10秒につき1%の割合。
絶対再生:魂もしくは肉体の欠片が存在する限り何度でも復活可能。生と死の狭間を繰り返したことにより発生。
慈悲無き分析者:戦闘を行っている時間に比例して敵対勢力の弱点を把握できる力。ステータスプレートの情報を読み取ることが可能となった。
闇夜の支配者:闇魔法を極め、闇夜魔法を使用可能となった証。消費魔力が常に4分の1に低下、行使した際の術の威力が4倍になる。
生死の支配者:自分より格下の相手であれば、生死を自在にできる。生かすも殺すも自在。
女神の愛し子:闇の女神に加護を与えられているものが持つスキル。闇魔法の習熟速度が上がり、光魔法に対して強い抵抗力を持つようになる。
神喰らい:神の力を奪った者である証。神の攻撃や神の力が効きにくくなる。
光への叛逆者:光の女神に反旗を翻した者。闇の女神から寵愛を受けている証でもある。闇夜魔法の威力が2倍に上昇する。
闇夜の勇者・極:亜人族、獣人族、魔族の勇者であることを証明する称号。闇魔法の習得速度が上昇する。人間族への攻撃力が3倍に上昇する。
絶対蹂躙者:敵が上級神以下であれば、即座に殺し方が頭に浮かぶ。自分よりも弱い相手に限られるスキル。だが、敵を倒せば相手の持つすべての知識、技術、経験を吸収する事が可能となる。敵が増えれば増えるほどステータスが上昇する。
至高の塵殺者:敵を葬るためにあらゆるステータスが常時2倍に上昇する。敵対者を葬るために必要な技能を本人のイメージによって発揮できる。
憤怒の修羅:怒ることで戦闘能力を増大させる。感情の高ぶりと共に肉体の限界を迎えるまでは際限なく戦闘に関わる能力が向上する。最大100倍まで。
称号
人類種の絶対殺戮者:人間族を心から憎み、大量に殺害しただけではとどまらず、あらゆる手段をもって苦痛を与え、壊した者に贈られる称号。敵が人間族である場合に限り全てのステータスが9倍に上昇する。また、人間族に敵対する存在の多さに比例してステータスが向上する。
壊国者:国を破壊した者に与えられる称号。戦争を行った時に、先頭に立ち軍の指揮を執ることで敵対勢力の狂乱状態を引き起こすことが可能となる。狂乱状態はレベル差に比例して発生する。
魔神:邪神を極めた者が至る種族。絶対的な強さを誇るもののみが到達する。世界の災厄。
敵対者には 破滅あるのみ。敵対した時点でステータスが全て半減する。
上級神に相当する力を持つ存在。
超越者:この世界の法則から脱した者。いかなる法則においても逆らうことが可能。
固有魔法
闇夜魔法
闇夜の剣:闇を用いたいかなる攻撃も可能となる。
闇夜の盾:闇を用いたいかなる防御も可能となる。
闇夜の衣:いかなる存在にも変化できる。ただし、自分より格上の存在には変化できない。
闇夜の冠:闇を用いた回復・支援が可能となる。あらゆる闇の支配者となった証でもある。
影渡・極:影から影へと渡る魔法。影がある限りどこまででも移動できる。影の中から、敵を攻撃することや引きずり込むこともできる。闇の上級魔法。
界蝕・極:闇魔法における新たな魔法。ユウジ サトウによる開発魔法。闇魔法上級に該当する。巨大な漆黒の狼を創り出し、魔力の続く限る暴食の限りを尽くす至高の作品。闇の女神に祝福された魔法。
闇夜回廊:闇の力で空間の法則を捻じ曲げて、無理矢理空間と空間をつないで移動するだけの魔法。使い方によって、さまざまな惨劇を起こすことが可能となった。
衆愚・魔獣転生・極:ユウジ サトウによる開発魔法。闇魔法超級に値する。闇龍王の絶大な魔力と風の精霊たちの協力によって発動される強制変化魔法。術者が思い浮かべた姿に、術を行使される対象の姿を強制的に変えることができる。効果範囲は込めた魔力に比例する。今のところ最大の使用面積はグリディスート帝国一帯である。消費魔力が最低限となった。
光魔法
慈愛の杯・極:対象のHPを50%ほど回復する。
薬師の杯・極:対象の状態異常を完全回復する
天裁地罰・極:光による攻撃魔法。広域魔法であり死霊に対しての効果は絶大。
神光の盾・極:光の力を纏った盾を創り出す。闇魔法を激減する。他の魔法であれば、自身の魔力と知力の合計値が相手より勝っている時は完全に無効化する。
回帰の杯・極:喪失部位をも再生させる回復魔法。ユウジ サトウによる開発魔法。上級に相当する。
神龍魔法
紅蓮龍爪・極:炎を纏った爪と牙で敵を攻撃する。
神龍の逆鱗・極:怒り狂った状態になり相手を叩き潰す。ステータスを一時的50倍に増加させて相手を攻撃する。体力の9割9分を消費。使用後は反動で必ず、1時間行動不能。
紅蓮咆哮・極:口から火炎弾を出す。紅蓮龍王が持つ炎と同質であるので神以外の全てを焼き尽すことができる。基本は広域殲滅型だが、一点集中型にも変換できる。
龍闘炎剣・極:炎の剣で敵を切り刻む。紅蓮龍王独自の魔法。
紅蓮再起・極:炎の力を身に纏い、傷を回復する。回復率は使用者の知力と魔力に比例する。火魔法が得意なものへは効果が出やすく、水属性が得意なものには効果が出にくい。
神武・煉爪獄牙・極:龍王の力を全て開放して、圧倒的な火力で周囲を焼き払う。紅蓮の炎で敵を焼き尽す最終奥義。
冥界魔法
死者の門・極:死者が暮らす世界の門を開く。いかなる存在であっても死者であれば招くことが可能となる。逆に、生者を直接叩き込むことも可能となった。
獲得魔法
森羅万象自在の法:自然環境で起こりうることであれば生命の誕生や死者の蘇生であって
も可能となる魔法。また、世界の法則を書き換える事すら可能となった。ただし、上級神
の力を逸脱することは無い。
魔神の理:ありとあらゆる災害を操ることが可能となる。新たな災厄を創り出すことも可能となった。
もう、笑う事すらできなかった。とうとう、俺は上級神に認められてしまったようだった。良いのだろうか、この世界は。俺なんかが神となっても。まあ、いいからこそ、こうして称号がやばいことになってしまっているんだろうさ。でも、これで俺は自分がいた世界に帰るきっかけを作ることが可能となったのではないだろうか?世界の法則を書き換えることができるのであれば、この世界に転移した人間を元の世界へと送り返すことも可能となるのではないだろうか?
ストレイナさんと話しながらも、ステータスの確認をして絶望感しか湧いてこなくなった俺だった。
「そういえば、ストレイナさん。獣人や魔族にとって魔神というのはどういう存在なんだ?」
気になったので確認しておこう。
ストレイナさんは、しばらく考えてから言った。
「我々が全身全霊を以てお仕えすべき御方だな。そして、人類種が破滅するのが確定した時にのみ現れると考えられているよ。邪神を上回る権能を持っているだろうからね。…まさか、魔神に至ったとかは言わないだろうね。さすがに、ありえないだろうけれども、君だからねぇ…」
ストレイナさんが俺をじっと見つめてくる。ああ、言ってしまいたいけれどもしばらくは黙っていよう。絶対に面倒なことになる。
「いいや、さすがにまだだよ。でもな、ここ最近やった悪事のせいで上級邪神にまで昇格したんだ。このままだと、魔神になる事もあり得そうだね…。冗談抜きでさあ。そうなっても、ストレイナさんは、俺との付き合い方を変えないでくれると嬉しいな。」
「何を馬鹿なことを。」
俺の額をぺちっと叩いて彼女は言った。
「はっきり言って、君なら、魔神に至っていても不思議ではないだろう。今更だよ、今更。私を救った時点で君の力は普通ではないんだから。君だって、私が王族だからと言って急に距離を取ったりはしなかっただろう?それと一緒さ。」
俺は自分を恥じた。そして正直に白状することにした。
「そっか、それだけが気がかりだったから言えなかったんだけど。俺、魔神になりました。…これから、魔族領に行くのにどう影響するかを教えてくれないか?」
「…うん、一緒に考えようか。君はいつもいつも、私なんかの考えをぶっ飛んで行ってしまうね。ああ、分かっていたともさ。私も腹をくくろうか。」
「ごめん、なんか、面倒ばかりかけてさ。」
「いいさ。どうにか考えよう。もういっそのこと、大々的に宣伝してしまえばいいんじゃないだろうか?」
「闇の女神に怒られないかだけが心配だよ。」
ディアルクネシアに怒られたらどうしようか。というか、嫌われたら精神的にやばいし、きついよな。
まあ、そのうちに考えおこう。どうにかなるだろう。多分、きっと、何とか、ね。




