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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第4章 女神が動き出したようです、面倒です、逃げましょう!
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第4話 邪神業務、引継ぎ中

さて、後はマリーシャに俺のやろうとしていることを引き継いでもらうだけだな。


INAGOの運用だ。


マリーシャの身体には、俺が許可しない限り一定量以上の魔力を使えない封印がしてある。だから、こいつは単独では人類を滅ぼすことができない。だが、俺がばらまいた魔物達とこいつは意気投合しそうで怖いのだ。俺がばらまいて、適当に育てたドラゴン君なんかは、ノリノリで人類を滅ぼそうとするだろうし。


俺が育てたせいだろうか、どうしても家の者達は血の気が多いのだ。俺の部下である、ダンジョンからやってきた魔物君たちの事だ。あいつらのことを考えると微妙に頭が痛い。悪い奴等じゃないんだが、すぐに人類を滅亡させようとするのだ。いや、人類は滅ぼすべきじゃないとかは言わないが、ちゃんと苦しめて、追い込んで、自らを滅ぼしてくれと懇願させるレベルまで追い込みたいものだ。


一気に滅ぼすと、楽なんじゃないかなと思っている。むしろ、真綿で首を締めるように、じわじわと〆て行った方が楽しいじゃないか。グリディスート帝国の事で俺は反省したのだ。あまりにも早く滅ぼしてしまうと、後が楽しめないと。まあ、今は元帝国民達も狂信国家の騎士達に追い掛け回されて苦労しているから、爆笑モノなんだけどさ。


それこそ、腹が痛くて、悶える程度には笑わせてもらった。


本当に、調子に乗っている奴らを自信満々な状態から命乞いをさせる状態にまで叩き落とすのは楽しい。自分こそが世界の中心だと勘違いしている奴らを叩き潰すのは本当に楽しいものだった。けれども、あまりに早く潰してしまうと後から反省するのだった。もっともっと、工夫できるところがあったのに、自分はどうしてそうしなかったのかと。自分が持てる力をすべて出し尽し、自分が持てる知識を全て吐き出した上で真剣に取り組んだのかと聞かれれば、俺はあの時溢れ出る感情に任せて一気に滅ぼしてしまったとしか答えられないのだ。


そう、一時の感情によってすべてを壊し尽してしまったのだった。


それはいけなかった。反省した。やはり知性を持つ者としては、復讐は永く、苦しく、辛いものを考えるべきだった。本当にあの時の自分は少々、テンションが上がり過ぎてしまっていたのだ。


だからこそ、考えが足りなかったと今頃になってもまだ、悔やんでしまっている。


復讐というのは一時の感情で全てを終わらせて良いものだったのかを考えた。本当の意味で復讐をするでのあれば、もっと長い時間をかけて工夫して、ありとあらゆるものを奪った末に終わらせてやるべきだったのかもしれない。まあ、終わったことをいつまでも考えていても仕方が無い。けれども、反省はしなくてはならない。同じ失敗を何度も繰り返すのはただの馬鹿がやることだ。俺はただの馬鹿で居たくはない、学ぶことができる馬鹿でありたいものだ。



復讐について考えることも大事だが、今はムカつく国である、神聖国・ディヴァイネーティスについて考えなければならない。獣人、亜人、魔族たちを差別しない点では悪くない国だが、ディアルクネシアの功績を認めようとしないところは最低点だ。あのバカ女神の妹として作られてしまったばかりに、苦労性な闇の女神様である。


ディアルクネシアの功績を認めさえすれば、あの国は許してやらないことも無いんだけどな。でも、認めないだろう。光の女神は、妹が居なければほとんど何もできない愚かな女神でした、なんていうどうしようもない事実に目を向けなければならないのだから。


俺は光の女神の顔を知らないけれど、きっと美しい顔をしているのだろう。そして人を惹き付けてやまない姿をしてるのも間違いないはず。そうでなければ、一つの国の住民たちが何百年もの間光の女神を信仰し続けることなんてできないだろうからな。つまり、容姿だけは及第点なのだ。女神としては残念極まる中身だけどな。自分が召喚した勇者に執着して、その勇者を人間でなく神様に作り変えてしまうほどの執心具合だ。恐ろしいほどに粘着質な女神だ。


で、だ。


そんな粘着質の女神を酷く信奉する国民達もきっと、物凄い粘着質な奴等ばかりだと思うんだわ。なんというか、子は親に似る的な感じ?普通は親を見て子は育つけど、ディヴァイネーティスの場合は信じる神の姿を見て信徒は育つ感じなんじゃないかな?


それで、恐ろしく粘着質で、光の女神に都合の悪いことは一切考えられない狂信国家が生まれたんだろうな。光の女神に都合の悪いことは全て、タイミングが悪かったからだとか、自分達が悪かったからとか、決して光の女神が悪かったからという理由にはなりえないのだ。それほどまでに純粋に信じられる光の女神はたまらないだろう。


嬉しくて、自慢したいくらいだろうさ。


それで、神格をがた落ちさせていればどうしようもないんだが。アホでしょう?けれども、そのおかげで俺が光の女神を封印できる可能性も上がったというのだから何とも言えない。光の女神の神格が高いままであれば、俺はさらなる力を求め続けなければならなかった。無論、その努力は決して惜しまないが、時間がかかり過ぎる。それは嫌だったんだよ。


少しでも早く、俺はあの光の女神に復讐がしたい。俺が、人間の感性を維持していられる間にあの女神に復讐がしたい。欲を言えば、同級生たちが元の世界に帰ることができるようにしてやってもいい。俺は帰ることが敵わないだろうが、同級生達も元の世界に帰りたいはずだしな。復讐の熱に浮かされた頭では俺と共にくる破目になった同級生たちが考えることなんて分からなかった。


けれども、今の俺であれば復讐の熱は少しだけ冷めている。帝国への復讐を終えたお陰か少しだけ冷静になることができたのだ。


だからこそ、俺と一緒に来た同級生達もきっと故郷に帰りたいはずだと考える余裕ができた。彼らも俺と同じように、ここの世界に望んで来たわけではないのだし。まあ、俺達が元の世界の俺達のコピー体でなければ、という前提条件はある。コピー体であればこちらの世界で暮らしていくしか、選択肢がない。


元の世界に帰れば、自分自身が二人に増え、遺伝子は全く一緒で、容姿が少しだけ変わった自分自身を元の世界の自分が見ることになってしまうのだから。そんなことになれば、クローン研究の素材とかにされかねないし、何より余計な耳目を集めることになってしまう。そういう面倒事は御免だ。


まったく、異世界召喚というのは、本当に厄介だ。故郷を奪われ、自分を奪われ、自由を奪われた上で、召喚した者達の言う事を聞かなければならないのだから。本当、異世界人を召喚しようと考えた最初の人物を殺したい。そいつが余計なことを考えて、女神が助力しなければ俺達がこんな世界に召喚されることなんてなかったのだから。力のある、馬鹿というのが一番性質が悪い。


頼りにされるのが大好きな女神様だから、俺が感じた苦しみを理解させることはできないだろう。彼女はただ、自分を信じる者達の苦境を救うための手段を提示しただけに過ぎないのだから。そして、異世界の人間であれば、自分を信奉していないし、自分とそれほど深い縁も無いから使い捨ての兵器にしてもかまわないという神様特有の残酷さもあったんじゃないだろうか?本当に力のあるろくでなしというのは嫌なものだ。なんとしてでも、あの糞女神を封印して俺達の世界に平穏が訪れるようにしてやらないとな。


本当に頑張って、力を付けて行かなければならない。あの女神を俺は心底、嫌いだし憎んでもいる。全力で顔面をぶん殴って消えない傷を刻み付けてやるくらいの事は許されてしかるべきだと俺は思うのだ。俺は男女平等主義だから、男だろうが女だろうがムカつけばぶん殴ることに抵抗はない。というか、俺の人生を丸ごと奪いやがったのだから、ぶん殴らないと俺を生んでくれた両親に申し訳ないレベルだろう。


やはり、親孝行の一つもすることなく、死んだようなものなのでそこらへんは悔しいのだ。


高校生のみで、親には恩しか受けていないのだし。養ってもらい、住む場所も、食べる物も、衣服も全てを与えてもらっていた身に過ぎないのだから。衣食住の全てを親に頼り切りな状態で、親孝行をできないようにされてしまえば、悔しいものである。


悔しさには蓋をしてマリーシャにやってもらう事を伝えないと。あのじゃじゃ馬が大人しく俺の言うことを聞いてくれるかどうかは怪しいんだけどな。気が重いが、やるしかないな。


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