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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第4章 女神が動き出したようです、面倒です、逃げましょう!
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第2話 魔族の国へと小旅行(企画中)

王様との会食が終わってから数日後、俺はストレイナさんと旅を始めることにした。俺は今、部屋で旅に必要な物を確認している最中だ。ストレイナさんと旅に向かう目的地は魔族の国だ。そのため、ストレイナさんととりあえず別行動をしている。俺は俺で、準備することや、やらねばならないことがあることから一週間ほど彼女に時間をくれるように頼んだのだ。ダンジョンに籠れば、一カ月くらいの時間ができるからな。


その期間で何をするのかを問われたが、俺は秘密と言っておいた。邪神部分の制御や人類に対しての嫌がらせの数々など秘密裏に実行したい作戦が多いからだ。


魔族領への旅に出る前に、俺は邪神部分の能力を制限した分身体との会話に入っている。この子に、人間側の大陸に置いてきた魔物達の監督をさせないといけないからな。あいつらは今のところ、レベルが900台で居てくれるんだが。いつ、1000を超える個体が出るか、分かったものではない。そして、1000を超えれば、あの大陸で太刀打ちできる相手が居ないだろうから、初代勇者が出張ってきそうで面倒臭いんだよなあ。


ま、楽しくないことはさておいて。


魔族と言っても、物語に出てくるような肌の色が真っ青であるとか、角や翼が生えているとかいうゲームで見慣れた特徴は無いらしい。魔法民族というのが縮められて、魔族との呼び名が定着したのだそうだ。肌の色は褐色気味だそうだ。髪の色は金属系の色合いが多く、銀色に近い色であればある程、地位が高いようだ。魔力が高い証とされているらしかった。聞いた知識はほとんど、ストレイナさんから聞いた伝聞であり、俺の知識は無いのであった。


彼等の姿形自体は普通の人間と大して差はない。ただし、闇の魔法を十全に使いこなせる民族なのだ。光の魔法は一切、使えないのだけれども。それでも、四大属性の力を失うことも無かったらしい。地、火、風、水の四つの力は基本的な力らしかった。全員が魔法使い系の民族なのだろうか?


ふむ、俺とは違う方向なんだな。俺の場合は魔法を使うが、基本的には蹂躙スタイルだし。魔法はあくまでも補助で、メインは俺の肉体だ。体が強過ぎて、武器も必要なくなってきつつある今日この頃。そして、俺の純粋な邪神成分だけ集めるのも終わったんだよなあ。


邪神部分の名前は決めてある。


マリーシャ・サージェント。


俺の名前と悪意の両方が入っている名前だ。邪神だからな、あまり綺麗な名前を付けても嘘臭い。基本的な人格も大分大人しくさせた。肉体も得ているのだから、肉体言語による話し合いがスムーズに進むものだ。精神的生命体の状態だと、殺しても完全には死なないしな。時間が経って、精神力を回復させれば、元通り元気な反抗期の少女が出来上がるのである。その点、肉体的生命体の方は脅せるし、痛覚有るし、血が流れるから痛みや辛さが分かり易い。ちょ…教育しやすくて助かっている。


精神的な生命体だと気力が折れない限りはいくらでも蘇って襲ってきちゃうんだよなあ。


だからこそ、念入りに自尊心であったり、自信であったりと色々と折っておく必要があったんだけど。それでも、懲りることなく、人類滅亡計画を具体的なプランニングにして提出してくるんだが。お父様と言うのを止めろ。止めてください。世間的な死を迎えさせたいのか、こいつは。


外見は俺が少し幼くなった感じだ。13歳くらいな…。


白に近い銀髪に黒に染まり切った一対の角。


紫と銀が混じったような不思議な瞳。


そして、白い肌に、均整の取れた体である。まったく、親によく似るとは言ったものの、ここまでに無くていいんじゃないか?俺が小さい少女になったら、こんな感じだろうという外見をしているのだ。身長は140セルチほど。俺が力を厳重に制限した結果として幼い容姿になってしまったようだ。


そうでもしないと、こいつは戯れにでも、人類を滅ぼしてしまうだろうから。それぐらいに、こいつは人間というものを嫌っている。感情の源泉は俺だけど、こいつも自分で人間についての情報を集めているみたいだった。そして言ってきたものだ。


「唯志、人間を滅ぼそう。こいつらは私が気に入っている、者達を苛めて悦に浸っている。屑だ。排除しよう、排除。」

「獣人、亜人、魔族の事か?お前が気に入っているのはさ。」

「そう。あいつらは私が気に入っている者達を苛めている。奴隷になるのは奴らの方だ。それとも、北側に居る原初の人間達に力を貸してやろうか。」

はて、原初の人間てのは何だ?俺が問うと、マリーシャは答える。

「人間どもが住んでいる大陸の北に住んでいる古い人間達だ。風の精霊が私に教えてくれた。奴らは、大陸に住んでいる人間達が大昔に、住みやすい所から追い出した古い民族らしい。そして、今も復讐心を捨ててないらしいと。利用しよう、唯志。奴らは屑どもを殺せて幸せ、私も屑どもが処理されて幸せ。お互いに利がある、素晴らしい状況!」

さすがは俺の分身。どす黒い。しかも有効な作戦だった。俺が率いる魔物達を動かすまでも無く、あくまで人間同士を争いだから初代勇者とかも出てこないだろう。俺は彼等を秘密裏に補助して、人間達をこれまた秘密裏に妨害すれば全てが上手く行く。


あの大陸で何としても滅ぼしておきたいのは、


神聖国・ディヴァイネーティス。


宗教狂いの国ほど怖いものはない。けれども、自分では滅ぼせるが滅ぼしたくない。いや、自分が嫌がっているということを認めねばなるまい。あいつらとの関わりを持ちたくないのだった。怖いし。


それは、物理的にあいつら俺を害せるかと言えば、答えは絶対にありえないのだけれども。精神的には結構効きそうなんだよなぁ。基本、狂信者の集まりの訳で、光の女神の狂信者達なわけで。俺としては極めて不愉快なんだよなあ。


うっかり、人間の大陸の半分くらいを吹き飛ばしてしまいそうになる程度には不愉快さをもたらしてくれる存在だ。闇の女神で、苦労人過ぎるディアルクネシアの事をパシリ扱いしてるのも気に食わないし、真に有能なのがディアルクネシアであると頑なに認めないあたりにも腹が立つ。そう、俺の大恩人を蔑ろにし腐っている国なのだ。…他の人間達の国は闇の女神の事などちっとも触れないから、まだましかもしれないけれど。それもムカつくので、他の人間の国には飢饉を起こさせてやるつもりだからいいのだ。


蝗。


そう、蝗害とも呼ばれる災厄の昆虫である。人類の食い扶持を喰い尽くしてしまう虫である。バッタと、イナゴの区別はあいまいだけれども、俺はそんなことを気にはしない。それでも、構わないけれども。俺が作り出した最強の蝗軍団を解き放つ時が近いのかもしれないな。人類は衰退するぞ!これで、間違いない。蝗こそが俺の持つ最終兵器だ。大体、俺がやったという事が分からないのもいい。


昆虫の異常発生って、あり得る問題だしね。自然現象としてさ。いやあ、不孝な事故だよねえ。と、自信満々に言い逃れできるのが最高だ。新しい、蝗…いや、” INAGO”を創り出さねばなるまい。再生能力は極めて高くしよう。けれども、繁殖能力は控えめにしておこう。いや、無くていいや。蝗だらけの世界なんて見たくもない。まあ、人類の大陸の環境を最適地としておき、獣人側の大陸の環境は不適合に設定してこう。


自己進化機能なんて積まない。積むと大変なことになるだろう。弱点は極低温にしておこう。俺ぐらいの魔力持ちが作り出す氷の魔術であれば、即死するようにしておこう。俺以下の魔術が相手だと死なないようにするべきだな。俺が完全にコントロールできる、最悪の生態兵器であってもらわないと。


「分かった、分かった。そんなにはしゃぐなよな、もう。」

俺はマリーシャの頭を撫でつつ髪をぐしゃぐしゃにした。マリーシャは撫でられて上機嫌だったが、髪をぐしゃぐしゃにされたのは不快だったようで膨れる。俺はそれを見てほっこりしていた。ロリコンではないが、子供って意外とからかう分には悪くないな。

「髪をぐしゃぐしゃにしないで欲しい。撫でるのは良い。」

左様ですか。

「はいはい。」

俺はおざなりに返事しておいた。この子もこれから、色々と交流範囲を広げておかないとな。偏った考えになられても、俺が困る。育児というのは奥が深いものだな。親にもなっていないし、子供も出来るような行為をしたことが無いのに、親擬きになっているなんて不思議なもんだ。


いつか、親になる時が来るのかねえ?


その時が来たら、相手はストレイナさんみたいな人が良いな。気立てが良く、神が強く、俺の化け物じみた姿も考えも気にする事のない鋼鉄のメンタルを持つ女性。素晴らしいんだが、だからこそ、俺とストレイナさんは交わることは無いだろうし。だって、身分が違い過ぎるしね。


きっと、俺にとって彼女は届くことのない星みたいなもんだ。手を伸ばしても届かないけれど、傍には置いておきたい程度には特別な感情を持ってしまっている。そんな負け犬じみていて、女々しくてたまらない俺だが。まあ、しょうがない。ヘタレと笑うなら笑ってくれていい。


俺自身もヘタレと思っているのだから。彼女が俺に好意を持ってくれているような気もするが、勘違いだろうし。


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