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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第3章 無知とは哀れなものですよ。だから希望は全部潰してやりましょう!
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第26話 知らぬ間に伝説になっていた話

気が付けば50万PVでした。


皆様、長らく付き合ってくださりありがとうございます。


これからも、完結させるつもりで書いて行きますので、よろしくお願いします。

王都に着いた。と言っても、まだまだ中心部までは遠いのだが。俺が作った魔法陣は近くにある。できるだけ、転移魔法を発動させる距離は短い方が良い。あまり長距離を転移するとどうしても、強制的に空間を歪めるものだから、目立ってしまうのだ。


まあ、何はともあれ、王都に着いたんだなと嬉しく思った。何せ、王都に着くまでにはストレイナさんによる獣人文化の授業があったのだから。獣人は基本的に実力主義の考え方をしているので、貴族、王族と言えど、あまり礼節面ではうるさくないとのことだった。最低限の礼義をわきまえてさえいれば、何とかなる程度であり日本人であった俺は合格圏内であったとさ。


そして、強さこそが全てと考えがちな脳筋集団であるためか、曖昧な表現は嫌われる元だそうだ。つまり、思った事は素直に言ってよろしい、と。日本人であった俺にとっては実に楽な意見だ。人間時代は空気を読み、周りの人間の表情を読み、声色から感情を推測して角が立たないようにしなくては社会生活を全うに送れない場所だったからだ。


無論、俺は全うに送れない側である。


結論。


俺は獣人社会に生まれていた方がきっと幸せな生涯を送れたであろうということがストレイナさんと接していて分かった。それにしても、なぜだか視線を感じる。それも結構な数に注目されており、男女問わない感じである。そして気のせいでなければ、俺を好意的に見ているというか、性的な意味で狙っている視線を感じている。


「なあなあ、ストレイナさん、俺はもしかしてあちこちから狙われているのではないだろうか?性的な意味で。」

今も視線を感じる。この殻になってからは感知能力が異常に高くなっているので、人の視線には敏感なのだ。というか、生き物全般だったか。ダンジョン内では隙を見せれば、殺されるくらいに弱かった時期があったから、その時期には敵の視線、体温などの情報すべてを感じ取れないといけないという思いもあって、感知能力から充実させていったくらいだからな。その結果、感覚が鋭敏になり過ぎて、今は少しばかり周囲の獣人達から寄せられる情報に酔っている状態でかなり、ストレスが溜まりつつある。珍しいのは分かったから、見るのは止めれ。…今更、女子の気分が分かるとはな。ちっとも、嬉しくない。


特に、情欲を持って見つめられるのは最悪な気分だから、ぶちのめしてもいいだろうか?


良いに違いない!


「ああ、狙われているみたいだな。私の方は素性を知っているから、早々手を出してこないだろうが。君の方は、素性に加えて力まで隠し通しているからね、狙われるだろう。そもそも、そこまで容姿を高いものにしなければいいだけじゃないかと思うんだが。」

ストレイナさんの呆れたようなつぶやきが胸に刺さる。まるで自業自得だと言いたげな視線である。この姿をくれたのはディアルクネシアだからな。なんか、姿を変え難いんだよな。彼女とのつながりだと思うと、余り弄る気になれない。


「でもなあ、無意味に不細工になるのは嫌だったし、力を抑えた状態だと余り姿を変えられないんだよな。力を解放している戦闘時ならいくらでも姿をいじれるんだけどさ。日常の姿だと、力の出力が最低に近いから、余り弄れないんだよ。戦闘中の俺なら、どんな姿にでもなれたけどな。」

そう、どんな姿にでもなって見せることができる。正気値を下げるような、悍ましく名状しがたい何かにだってなる事が可能であある。


実際、体内にストックしてある魔物の要素を全て前面に押し出せばそのくらいグロい生き物にだってなれるが、自分も人様も不幸になるだけなのでやらない。


醜さとは正義ではない。


うん。可愛いは正義だけどね。…そして、今の俺の姿は可愛いわけではないが美しい部類には入っている。自分で言うののナルシストっぽいので嫌なんだけれども。まあ、闇の女神が創作してくれた外見であるから致し方なし。神クラスの美貌を誇っていてごめんね♪


うん我ながらキモイ。声だけは相変わらず低めなのであった。今の自分は王都にいるので、周囲の人に迷惑をかけないように気を付けている。つまり、力の出力は限界ぎりぎりまで抑え込んでいるのである。この状態は長く続けられるものでないから、王城の近くの転移魔法陣までの事だ。はっきり言って、今の出力のままだと、俺がストレイナさんを救出したと言っても誰も信じてくれない程度には弱いのだ。


逆に救出される側だと言われかねない。


という訳で、俺は我慢しながら歩いているのだった。周りからの視線が煩わしいが、ストレイナさんがいるおかげで、俺への抑止力になっているらしいので助かっている。有名人がいると、対応が違いますな。王都の街並みというのも、人類側に劣るものではない。さすがに獣人側の首都だけあって、身分が高そうな人が追い。


というか、獣人は身分性が割と厳格臭いしな。俺がいた村とは比べ物にならないくらいには栄えているのだから。まあ、俺はあの村の方が好きだが。あの、温かくも田舎臭い、故郷とは違うのだけれどもどこか懐かしい気分にさせてくれるあそこが好きだ。東アジア風というか、東南アジア風というか、いまいち旨い表現はできないが南国のような感じだ。ああした雰囲気が自分は好きなのかもしれないな。


それに、ここはいまいち好きにはなれない。人数が多いせいで、感情が渦巻き過ぎていて疲れてくるのだ。俺の感知能力は馬鹿みたいに高くなっているので、自分に対して向けれる感情のほぼ全てを把握できる。だから、いまいちここは印象が良くならない。そのことはストレイナさんには内緒だが。故郷を貶されて嬉しい人はいないだろうしな。


やれやれ、早く王城内に入りたいものだ。


ああ、ようやく俺が魔法陣を作っておいた場所に着いた。王都の端っこからは結構な距離があったのだ。歩いて1時間くらいの距離だが。獣人の国の王都は大きいのだ。無論、首都が小さいということは無いのだろうけれども。


「やれやれ、ようやく抑えていたものを解放できるな。」

「力を抑えるのはそこまで大変なのかい?私には抑えるほどの力が無いからよく分からないけれども。」

ストレイナさんが俺に問うてきた。ふむ、どうやって答えたら汚くないたとえになるだろうか。はっきり言って、一番近い感覚は便意を極限まで我慢している感覚なんだが。出したいのに、出せる場所がなく、限界に怯えながらもトイレを探している苦痛に満ちた道中の最中のような感覚なんだが。うん、これを説明に用いるのは適当ではないな。

さて、どうやって考える物かな。…まあ、なんとかなるか。


「そうだな、屁が出そうなのをずっと我慢し続ける感じに近いなあ。屁を出したいけれども、周囲に人がたくさんいて、気軽に放てない感じか。こう、偉い人がたくさん集まった厳粛な場に居る時のような。出したいのに出せない苦しみと言っておこうか。」

こんな感じなんだけれどな。本来の力を出さずに自分の中で封印するというのは大変なんだよな。どうやっても、力を抑えているストレスがたまる。外に漏れだしている力までも封印しているのだから、こちらも大変なのだ。溢れる物は溢れるようにしておくのが楽でよろしいのだが。あの村にいた時にはそんなことを考えもしなかったが、俺は気に入っている人物が居る時に限っては力のコントロールは完璧だったらしいしなあ。


ここは気に入った人が一人も居ない場所だから力の制御が面倒臭い。ヤル気にならないのだ。別に迷惑をかけても、嫌われても、まったく心理的な痛手は無いのだから。


俺が今、ここに居るのはストレイナさんを助けた責任感からだし。ちゃんと助けたので、俺に深く関わって来ないでくれと宣言するためでもある。誤解されそうであるが、俺は正義の味方なんかじゃない。俺が従うのはあくまで、【俺の正義】だけだ。自分の価値観こそ至上である。他の価値観など知ったことではない。俺が大事だと思うものは守るが、それ以外はどうだっていい。


何がどうなろうと俺の責任ではないし。結局、なるようになるだろうという考えだ。俺が居ようが居なかろうが、死ぬ奴は死ぬし、生きる奴は生き続けるのだから。だから、俺に責任を持たせようとしないでほしい。俺には関係無いんだから。


「酷い答えだね。でも、言いたいことは分かったよ。要は、本来ならしなくてもいい苦労を自らしている状態ということだろう?やりたくも無いのに、無理矢理しなくてはならない仕事をさせられている気分ということかな?」

彼女からはいたって、常識的な例えが出てきた。ああ、それだ。サービス残業のような、ボランティア活動のような感じだ。あくまで俺にとっては、だけれども。強制奉仕って響きは嫌だし、ただ働きなんてもってのほかである。


「さて、これで王城かあ。やっと着いたな。もう、今度からは直接ここに来ようか。人に囲まれているとイライラしてくるからな。ここは人が多過ぎる。」

「当たり前だ。ここは王都なんだから人が多くなくては困るよ。…私の我侭に付き合わせて悪かったね。」

ストレイナさんが俺に謝ってくる。

「いや、別にいんだけれども。女性の我侭に付き合うのは男の義務だしな。俺が未熟なだけだから、気にしなくていいよ。さあ、ここからは案内してくれよ。ああ、少し待ってくれ。」

体内で施した封印を解いて行く。少しずつ、爆発的な力を解放してしまわないように。ゆっくりと力を解いて元の姿に戻る。


白銀に近い髪に、漆黒に染まった一対の角。


濃い紫のような瞳。銀色を帯びていて、何とも言えない雰囲気だ。


顔は相変わらず、女顔だ。そう、先ほどまでの姿よりもさらに女性よりになっている。


体つきも華奢なままだ。と言っても、身長は175セルチくらいはあるのだけれども。無駄な肉が付いていないから華奢に見えるだけで筋肉はそれなりについている。マッチョではないけれどもな。


髪の長さはなぜか伸びていた。膝裏まで白銀の髪が伸びている。はて、力を抑え込んでいるからか?それでも、さっきまでよりかはよほど楽だ。呼吸がしやすいし、感覚も正常に近付いている。肉体のスペックを落とせたものの感覚のスペックまでは落とし切れていなかったのだ。


ああ、すっきりした。そして、俺は王城に仕掛けてあるという最新の魔法が使われた警報装置をことごとく破壊してしまっていることに気が付いたのだった。


ストレイナさんが言っていた、力の大きさはサクレーヤのものでも、十分なほどに大き過ぎたようだった。…難しいよね、力加減。


「やってしまったな。まあ、私が帰って来たと分かるから大丈夫だろうが。叔父上がすぐに勝負を挑みに来そうだな。」

ストレイナさんは苦笑いしていた。


「挑まれたら、どうすればいいんだ?手加減は下手なんだけれども。」

下手に手加減したら怒りそうだしな。


「私が説得するよ。いよいよとなれば、ね。」

諦めたようにストレイナさんが言ってくれる。うん、俺の事をよく理解してくれているようで、ありがたい。そして、叔父上、獣王の性格も良く理解できているようだった。


さて、やるか。なんか強めの気配がこちらに高速で接近しているのが分かるし。


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