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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第3章 無知とは哀れなものですよ。だから希望は全部潰してやりましょう!
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第24話 邪神と本体の分離作戦!


邪神部分は何とか出力抑えつつ、表に出していくしかないようだ。せめて理性的な人格を設定していくぐらいしか対抗策は取れそうもないけれども。やるだけの事はやってみないといけないな。一応、邪神になった身だからな。


自分の事は出来る限りの範囲でだが、責任を取りたいのだ。


変身グッズは後世にまで伝える予定だから、その中に邪神部分が残っているとシャレにならないからな。邪神のみの俺の精神がどういった変化を遂げるかも未知数であるから、怖くて手が出せないというのが実情なんだけどな。


だって、邪神だしな。


邪悪な神様だっての。俺は、元々は人間なんだが、化物寄りにされただけなのにな。手に余るっていうか、なあ?


俺がこんなことを考えてばかりいるという事を隣を歩いているストレイナさんは知らない。ストレイナさんと俺は滞りなく会話を続けているのだから。俺の知力はずば抜けて高いので、分割思考をして並列作業をすることなど朝飯前なのだ。つまり、邪神の力を分離する作戦、俺の持つチートを超えたバグじみた力を封印する器の作成、ストレイナさんとの会話を俺はすべて同時に進行している。


知力が高いというのはこういった無茶なことも可能とするのだな、と妙な感想が湧く。つまり、俺がいたあちらの世界での頭の良い奴等はこういったことを普通にやれていたのだろうな。今の俺であればこれでも、まだ抑えている方でその気になれば20くらいの作業を同時に進行することもできる。頭が良いというのも一つの武器である事はよく分かった。この世界にも頭の良い奴が居たら、獣人達とも戦争などを起こすことも無く、平和に暮らせていたはずなのにな。


いや、頭が良い奴は自分の事を神じみたように考える奴もいるから、結局戦争になっていたかもしれないな。人類にしろ、獣人達、亜人族にしろ、変わらないところはあるのだ。


結局、自分達が一番可愛くて大事だってことだ。


当たり前の話だけどな。自分達の種族すら大事にできない種族っていうのは存在した事自体が過ちでしかねえしな。ま、俺には自分が可愛いっていう思考はあまりないけれども。何せ、この体になったことは忌々しくてしょうがないのに、この体でなければできないことがあまりにも多すぎたんだから。


正直な話、自分がどれだけ無力だったかを、自分が相手を叩き潰すたびに、困難を乗り越えるたびに改めて突き付けられている感じがするんだよ。この怪物の力が無ければ、ディアルクネシアが目覚めさせてくれたあの力が無ければ、俺は今はこんなことを考えずに済んでいたのにな。…間違いなく、クソ野郎の思惑通りにあのダンジョンで死んでいただろうからな。


まあ、そうならなかったのは、俺自身の個性のおかげだったから、なんとも言えないな。ああ、まあ、本当に勝ったような負けたようなそんな気分だ。チートを与えられてはしゃげる奴が俺は素直に羨ましい。そいつは俺よりも大物に違いないからな。俺は余り楽しめないんだよな。いや、楽しめる時間が終わってしまったという方が正しいか。ハーレム願望は無いし、国を作って俺が王様になって楽しむ気も無い。


俺が望むのは、ただの平穏だ。


なんでもない暮らし、何でもない普通の生活。そんな、普っ通の夢しかないんだよな。普通過ぎて面白みがないかもしれんが、それが俺という人間の望むものだしな。ああ、平穏な時が欲しい。多少の冒険は好きだが、体全体が人間でなくなった挙句に<邪神>と化すなんていささか冒険が過ぎていると思う。俺は本来、どこにも出居るような平凡で、平均的な能力しか持っていないつまらない人間だ。まあ、性格の方は異常と言っても差し支えないけれども。本当の意味で、平凡で、平均的で、誰とも争いを起こさない奴の存在ってのはありえないだろう。


誰からも好かれ、誰からも嫌われずに、世界を生きていけたらどれだけ楽しいか分からんが。それも特別優れたところが無くてもそれができると言ったら、人間の理想的な姿の一つではないだろうか。誰とも、上手くやって、誰からも嫌われずに、誰かを嫌うことも無く、誰からも好かれることも無いかもしれないけれども。そう、誰にとっても平凡っていうことは、誰かにとっての特別になりえないってことでもあるか。特別になった瞬間に平凡は失われてしまうのだから。平穏だけれども、たいそう孤独な生き方になってしまいそうな気がするな。


なんとも難しい。


だからこそ、俺はそういう人間に俺にできる限りの範囲で近付くことを理想として生きてきたんだが。うん、まったくもって、理想とかけ離れたところへとロケットで飛んで行ってしまっているけれどもな!


笑いたければ、笑え!!


というか、笑ってくれでもしなければ、この状況は救いがあまり無い気がするんだけれども。ああ、まあ、しょうがねえけども。全て俺の身から出た錆だしな。あのクソ野郎たちをぷちっと始末してしまったのだって俺だしな。帝国をテンションに任せて滅ぼしてしまったのだって俺だ。


この世界に来てからの俺は、間違いなくこの世界史上最高の殺戮者であろう。


人類にとって、存在することすら許しがたい「絶対悪」なんだろうな。でも、俺にとってはこの世界の人間族が「絶対悪」と言えてしまう訳なんだけどね。お互い様な感じだと思うんだけれどもなあ。


そうこう、考えているうちに、獣人達の国の王都に近付いているようだ。そろそろ、転移魔法陣に魔力を流しておかないと、遠距離発動をさせておこうか。よし、すぐに発動可能な状態へと移行したな。


相変わらず、俺とストレイナさんは微妙に気まずい感じが続いている気がするが、俺も今は邪神の部分をどうやって、自分から取り外すかを考えるのに忙しい。いや、彼女との会話も大事だけれども、今の俺にはしなければならないことが山ほどあるのだ。


ちゃんと会話はできているし、返答は遅れてもいない。俺は結局のところ彼女の事を大事な友人と思うようになった。けれども、それはとりあえず、という言葉が付く。彼女が魅力的な女性であることには変わりはないのだから。妙に期待して痛い目を見るのが嫌だから逃げているだけなのだ。俺って、臆病だからなあ。わがことながら、ヘタレ全開である。こんなことを考えているなど、誰にも知られてはならないな。


それにしても、邪神の部分の障壁はずいぶん堅いな。俺が取り除こうと画策していることに気が付いてしまったのか?別に殺そうとなんて考えていないんだがな。ちょっと、取り除いて、いつでも取り出せるように切り替えていくだけなのだけれども。安全装置付きの邪神、にしたいんだけれどなあ。今のままだと、俺の命令ですら逆らう気がするしな。いや、確実に温い命令なんてしたら、刃向かいやがるだろうさ。


試しに人類虐殺を命じた場合は即座に執行しようとするはずだ。いや、すでに準備を始めようとしやがった!?


こいつ、どこまでも、じゃじゃ馬なんだからな!


参ってしまう、自分のことながらだ。えーと、基本人格は女性にしておこう。俺よりは情け深くなってくれるんじゃないかな?まあ、大丈夫なんじゃないかなあ?


力の行使とかは俺の許可がなければ不可能なように設定する。具体的には出力制限で、サクレーヤくらいの出力が限界にしておこうか。それ以上の出力を求める場合は俺の許可がなければ不可能ということにしておこうか。サクレーヤは一人で世界を滅ぼすなんてことはできないからな。まだまだ、そこまでの力は持ち合わせていないから。それで、俺の方は邪神が勝手に世界を滅ぼせないようにするブロックを作っていった。そうでないと、こいつは勝手に動き出して世界を滅ぼしてしまうだろうからな。


あくまで、人間世界を完全に滅ぼしてしまうだろうという懸念であるけれども。


ただ、光の女神に喧嘩を売りに行ってしまう可能性もあるわけで、そこも厳重に管理しておかないといけないな。俺が光の女神に喧嘩を売るとすれば、神でもぶちのめせるほどに強くなってからだし。今でもいい勝負はできそうな感じだが、圧倒的に勝てないと意味がない。いい勝負では駄目だ。相手を一方的に暴力的な勢いで制圧しないとだめだ。


そうでなければ、俺たちが居る世界に対しての干渉を止めることはしないだろう。俺達が住んでいる世界から、数人から数十人のペースで勇者候補を召喚することを止めさせなければならない。俺の事は今更、どうにもならないけれども、未来の被害者を減らすことはできるからな。


本当、この世界の人間は縋ることばかりで、自分達で努力することをしようとしないから腹が立つ。獣人や魔族、亜人達は努力に努力を重ねた結果、勇者達にも対抗できるほどに種族としての強さが上がったのだから。


さて、邪神ブロックの構築の続きをするとしようかな。さっきから、必死に抵抗されていて、なかなかうまくいかないのだから。


さすが、俺の半身。本体と同様に聞き分けが無いのであった。


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