第21話 王都までの道のりと、彼女のSっ気?
王都までの道のりは、彼女との二人旅である。
とはいえ、彼女と言っても、彼氏彼女の関係などではないんだが。
ストレイナさんとの二人旅なんだな、これが。とりあえず、彼女との関係は、親しい友人くらいにはなれたのではないだろうか?女性で親しい相手といえば、シルフィンくらいだしな。他の場合は、俺の事を恩人としてみなしているから、あまり親しい関係ではないだろう。
それにストレイナさんは、俺の原形を知っていながらも俺を怖がることをしない豪気な女性だからやりやすい。怪物を超える俺の力でも、彼女は怖れることをしないので俺としては精神的に、安定することができる。さすがに、四六時中ビビられているのはどうも、気が滅入ってくるのだ。俺も、元とはいえ人間だからあまりにも化物扱いされ過ぎると憂鬱になる時くらいはある。
今の季節は旅をするには、どういう季節なのだろう。冬の真っ最中なんだが、日本では考えられないことをしている。雪がちらつく日に、外を歩くなんてことは、断じてしたくなかったものだからな。
だって、寒いじゃないか。
俺は寒いのは苦手だったんだ。寒いと、こう、体が縮こまってしまって良くなかったからな。今では、暑さ、寒さは感じられないことになってしまったな。暑かろうと、寒かろうと俺の体はびくともしないのだから。この体は、マグマの中で泳いでも、平気であるし星の極点に行って極寒の環境の中に身を置いても平気なのだ。恐らく、絶対零度の環境であっても適応できてしまうんだろうなあ。
獣人の文明の程度は、俺たちが居た世界とは違っているが、おおむね、中世ヨーロッパから現代までの間くらいといったところか。戦士とか王族とかいうのは中世っぽい感じだが、住居とかは現代建築風に見える物もある。恐らく、過去に召喚された勇者が快適な家の形として伝えたものが残っているんだろうさ。そうでなければ、納得がいかない構造だし。まあ、中にはなんかこう、間違った建築知識に基づいて作ったものもあるけれども。
金のしゃちほこが普通に家の屋根の上についているのだ。
それも洋風建築の家に、だ。
何を考えて付けたのかを考えると興味深い。他の家を見てみると、屋根には多くの動物が付いていた。それも、必ず雌雄の組み合わせでだ。飾りのない家もあるけれども、どういう意味だろうか。なんか、雌雄の組み合わせの方は文化的な意味があるのかもしれないな。ストレイナさんも、そこまでは教えてくれていなかったしなあ。
彼女とて、何でも知っているわけでなく、知っていることだけを俺に教えてくれたのだし。なんでも知っているのは、ありえない話だから。知っていること、知らないことを互いに話して埋め合わせていくのが楽しいんじゃないかと思う。ちなみに、俺が彼女に教えることができるのは戦闘関連の事くらいで、文化的なことなどちっとも教えることができないんだけどな。俺がいた日本の事なんて彼女に教えても意味が無いしな。
そういえば、この星には創星神という何でも知っていそうな神様がいたんだったっけ?でも、今までディアルクネシア以外からはその名前を聞いたことが無いんだよな。光の女神、闇の女神という名前を聞いたことはあるが、創星神という名前は出てこなかったはずだ。全能の父という名前が出てきていたか。星を作ったのだから、全能と言われても名前負けはしていないな。光の女神は一回、死ぬほどボコボコにしてやるんだけども。
そんなことを考えていたら、急にストレイナさんが俺にとっては身近でない話題を振ってきてくれた。
「ユウジ、君は恋人などはいたことはあるか?」
直球である、彼女は剛速球投手であったか。
「いきなりだな、ストレイナさん。……今までに一人たりとも居たことは無いな。恋人というのは架空の存在だろ?そうに決まっているんだ、そうに。」
恋人などいたことはあるわけないだろう。非モテの王と名乗って自虐するのが俺の常だというのに。【非リアの王】なんて演劇の題名みたいで格好いいよね…うん、心が折れそうだ。体は強いが心は脆いのだ。特に、こういう話題は厳禁だぞ☆…虚しい。
「今の容姿であれば……すまない、顔だけ目当ての女が集まっても君は喜ばないのだったな。」
ストレイナさんの頑張ってくれたフォローも虚しく響く。それにしても彼女は、どうしてこんなことを急に聞いてきたのだろうか?彼女も、恋愛に興味を持っているが話し相手がいなかったとかだろうか?俺も彼女と同じように直球返しをする。
「何だって、そんなことを聞いてきたんだ?あまりそういう話題は好きそうじゃないように見えたんだけど。」
彼女のいかにも、騎士という格好や言動から浮ついた話題に興味を示しそうな感じはしなかったんだが。
ストレイナさんが俺の言葉を聞いて少し、考え込んでから理由を教えてくれた。
「私は今まで、同じ年頃の異性とここまで長く一緒にいたことが無くてな。…なんだか、居心地が悪いというか、緊張するというかだな。うん、上手く表現できないのだが。私だけが緊張や困惑をするのは一方的で気に入らなかったんだ。…だから、その、君はどうなのかと思ってな。一応、私だって年頃の女だしな。」
ほう、なんだこれは?勘違いをしてはいけないな。これは彼女が男慣れしていないがために、出された話題であり決して俺とどうこうなりたいという願望からもたらされた質問ではないということを考えておこう。
俺にフラグなど建つはずないからな!
建つとしたら、それは違法建築とか基準偽装クラスの頼りないものだろうさ。
俺は女にはモテるはずが無いんだからっ!!モテたいけど、モテないんだっ!!!
さて、できる限りクールかつ速やかに返事をしておかなければな。動揺などしていないんだ、していないぞ、しないからな。
「ああ、俺は基本的に女の人と一緒にいるときにはその人を一切恋愛対象にしないことにしてるからな。その方が傷も少ないだろ?まあ、今は恋愛よりも光の神をいかにしてぶちのめしてやろうかで頭が一杯なんだよ。帝国の屑どもは叩き潰したからな。後は、俺は今こんな体だしな。相手が怖がるだろうさ。」
ふっ…成し遂げてやったぞ。これで、俺は女に興味は持っているもののがっついていないアピールは成功したはずだ。後は、俺の体のことを言ってこれ以上の話題は避けようアピールしないと。
作戦は失敗だ。ストレイナさんの顔が暗くなった。違うんだよ、俺はそういう顔をして欲しかったわけじゃないんだが。
「配慮が足りずに、すまない。その、私は別にユウジがどんな体であろうと気にしないからな。魔物の力を宿していようと、星を砕ける力を持っていようと君は君だろう?」
惚れてしまうだろ?
この人、なんてイケメンなんだ。いや、女の人だけども。いや、格好いいセリフだ。一度でいいから、女の子相手に言ってみたい。いや、俺が言ったところで気持ち悪がられるだけですけどね。この人のような、美人で、心根も格好良い人が言ってこそ重みが出るセリフだよねー。さ、クールに返事を返すんだ俺。
「あ、ああ。その、あの、まあ、なんだろうか。ありがとう。ちょっと、気が楽になったよ。」
失敗した。死にたい。
だが、ストレイナさんは満足気な模様。うーむ、わからん。誰か女心を翻訳してくれ。いや、魔法を作ってくれ、買い取ってやるから、言い値で。というか、ストレイナさん、貴女は相手に不自由することはありえないから大丈夫ですよ。
「そうか、それなら良かった。いや、君は私といて緊張はしないのかという質問には答えてもらっていない。」
まだ、続けるのか。
「ああ、今までは緊張しなかったけれども。今はちょっと緊張する。」
本音だ。今までは助けることができた女の人だった認識が、格好いい自分の好みな女の人にクラスチェンジしましたよ。今後は意識しないように気を付けないとね。
『ユウジの事は恩人として感謝しているが、恋愛をする相手とは考えていないんだ。すまない。』
とか言われたら、大分心に来るなあ。そんな未来が訪れないことを全力で祈っておこうじゃないか。
それにしても、改めて意識するとストレイナさんって美人なんだよね。ああ、戦闘以外では俺は大して成長していないなあ。女性と一緒に長く二人でいることなど俺もしたことは無いさ。
さて、意識していない風を装いながら彼女との旅を続けよう。妙に緊張感が増した旅になってしまったけれども仕方が無いな。せいぜい、一週間だしなんとなるさ。
いや、してみせる。




