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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第3章 無知とは哀れなものですよ。だから希望は全部潰してやりましょう!
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第19話 授業の終わり、王都までの移動開始

それから、後に彼女が話してくれたことは俺が祭りの時に聞いたことと大して差が無かった。だから、獣人が使う精霊術の事について聞かせてもらうことにした。


「私たちが使う精霊術というのは、精霊に力を貸してもらって行使する術と、精霊と契約してから行う術がある。契約してから使う術は、精霊との関係性が良くなければ万全の力を発揮できないけれども、威力が大きい。力を借りる場合は相性と関係なく使えるが、契約した場合の術よりも威力が2段階くらい下がる。」

なるほどな。俺の場合はシルフィンとしか契約していないけれども。彼女の誕生時に俺が立ち会ったし名前を付けたのも入れだからなあ。親に近いような感じなんだが、契約といえるのだろうか?


「…精霊の名前を付けた者は獣人には確認されていないよ。どこまでも、私の常識を蹂躙してくるな君は。」

「気にするなよ。俺が常識外だというのは散々体験しただろうに。」

そうでなければ、ほぼ無傷でグリディスート帝国を落としたりなどできるはずがないだろうに。自分で言っていて無茶苦茶だというのは分かっているけれども。つまり、それほどに俺の力は規格外なんだけどな。そう、だからこそ常識を身に付けなければならない。たとえ短期学習であろうとも、何も学ばないよりはマシだろうし。


今のところ、彼女に学び出してから3日ほどはたっている。戦闘訓練だってきちんとしているのだ。彼女の要望で、だ。


何せ、ストレイナさんは案外好戦的なお嬢様であるので。現在は第4階層の魔物とならば単独でも戦闘可能なほどだ。相手が、それほど知能が高くない巨人だからこそだろうけれども。それでも、第3階層まで戦い抜いたのは事実である。彼女自体レベルは高い方みたいで少々驚いたものだ、最低でも600はあるだろう。人間族は確かレベル500が限界だった。ここ数日の間に彼女から聞いたことだが、魔族は人間をベースにしているもののレベルは1000まで行ける。獣人は1300程度まで成長できる。エルフ、ドワーフも1500程度までは成長できたはずだ。さすがに優遇されているが、獣人達はおかしいだろう。とはいえ、成長限界が高いのと成長速度には因果関係があるのだ。


人間族は数も多く、成長限界が早いが成長速度が速いのだ。つまり、獣人達よりも寿命は短いものの数は増えるのが早いし、高レベルの存在がそろいやすくなる。獣人達は人間達の2倍ほどの経験が必要になるのだ。成長するにあたっての伸びしろは多いのだが速度は遅い。しかも、数も増えにくい。だからこそ、人間族たちに誘拐されてしまうのだろう。成長速度は遅いし、この大陸では勇者が攻め入ってくるまではそれほどに過酷な環境ではなかったらしいし。住むにあたっては過酷な環境であったが。拉致されることは無かっただろうから。


戦争も、大陸丸ごとでやったのは今から、600年以上前。勇者が攻めて来たのは500年ほど前。その間は平和条約化で小競り合いすら発生しておらず、ただただ戦後復興に勤しんでいたわけだ。となると、弱体化が進むのは道理だ。


今のところは、逆に強化が進んでいるのだけれども。獣人族は戦えば戦うほどに成長速度が速くなるらしいから。ここ500年は戦い続けているので種族としての限界値が跳ね上がってしまい、レベル1300の成長までできてしまうのだそうだ。本来は人間族たちと変わりのない500程度だった限界が1300まで上がるなんてどれほど勇者たとの戦いが過酷だったかを物語っている気がしてならない。というか、現在進行形で、まだまだ上がっていく気がする。今度は復讐戦が始まるだろうから。俺がグリディスート帝国を下したことによって、魔族、獣人、亜人達は必ず報復に動くはずだから。そして、人間達とも戦って、戦って、どう決着をつけるかは知らないが、彼らは行動を開始するはずだ。


俺が帝国を下したことで人間側の戦意は落ちているし、俺は獣人達の味方と公言しているのだから。人間には敵対するとはっきりと宣言している。どう考えても、人間の味方をするなんて無理だ。俺を使い捨てにしようとした奴らなど、どうしても許すことはできない。そもそも、この世界に召喚し腐ったこと自体、未だに許せていないのだから。


まあ、そこは置いておこう。獣人、亜人、魔族達が報復に出るなら止めることはしない。むしろ、俺も適当に重要拠点や補給線を破壊してやるさ。そうして、人間側はホームであるはずの大陸であるのに苦戦尽くめで、苦しんだうえで死んでもらう。奴らが攻め込んで来ようとしたら、俺が動いてもいいし、エタナウォーディンに頼んでもいい。陸路、空路、海路の全てを封じ尽くしてから駆逐してやれるのだが。そこのところはどうなっているかは、聞いてみたいところだな。これもこの大陸での常識に含まれるはずだから、ストレイナ先生に聞いておこう。


さて、限界の壁を破り続けた獣人達はこれからどうなるのかに俺は興味津々である。戦えば戦うほど強くなるというのは俺も一緒だったからな。


何せ、俺は地獄のようなダンジョンで戦えば戦う程に強さの壁を破壊していった男だし。はっきり言って、今の俺であれば、この大陸の全ての戦力を相手にしても余裕があるのだしな。人間よりも獣人に寄っているとは、やはり闇の女神の勇者であるのは間違い無いなあ。戦って、戦って、その果てに得たのはどうしようもない強さと、孤独だけか。面白くないんだよな、誰と戦っていても。きっと、神と戦ってようやく追い詰めてもらえるのだろうさ。今の俺の力であれば、そうなってしまう。


ただ、これは良くない傾向だ。


戦闘狂になりかけているのではないだろうか?だったら、自身の力を更にそぎ落としてしまうしかないな。周りが弱いのであれば、俺も弱くなって制限された戦いを楽しめるようになってしまえばいいんじゃないだろうか。


「まあ、精霊と仲良くしているのは我々獣人とエルフくらいだな。ドワーフは精霊とは一部のものとし関わりを持っていないしな。魔族には精霊が見えないから。」

元が人間だから、精霊が見えないというのはおかしいのではないだろうか?

「じゃあ、俺はどうなるんだ?俺は人間だったが、精霊と契約しているんだけどな。」

「ああ、それは君が龍の因子を持っているからだね。それも、龍神クラスだろう?だったら、自然に関わる精霊との相性は最高だよ。それでも、精霊に名前を付ける事態になる事なんて想像もできないことだからね。」

ストレイナさんは俺に向かって改めて、俺がいかに非常識なのかを突き付けてくれる。つまり、シルフィン関係の話は余りしない方が良いのかもしれないな。研究材料にされても困るしな。シルフィン自体も特別な精霊になっているし。あの子は、夜の間であり、契約者の俺が近くに居さえすれば風の精霊王であっても互角に戦って見せると言ったのだから。


研究員って悪意無くこちらを調べ尽くそうとするだろうしな。


彼等は知的好奇心を満足させるためなら、どんなことでもやりそうな気がするしなあ。精霊術界の権威、彼女は先程そう言ったことから俺は判断したのだ。獣人世界にも研究員みたいなのがいる。それも結構な権威を持っていそうな感じで、だ。となると、俺なんかは絶好の研究対象ではないだろうか?


何せ、元は人間だが龍の因子持ちであり、体を構成しているのは数百種類の魔物であり、おまけに邪神である。なんか我ながら腹が一杯になってくるような状況になっている。こう、盛り過ぎではないだろうかというくらいに盛られてしまっている。ここまで強くなろうとは思っていなかったし、属性過多ではないだろうか…。


そうして、ストレイナさんと俺の常識についての学習は続いた。現実世界で一週間はかかったが、俺は何とか平均的(平均的な貴族の獣人だったと後に知ることになった。)な獣人程度の常識は手に入れたと彼女に認められることができた。まあ、勉強自体面白かったし美人さんと二人きりで長時間を過ごせたのだから良しとしようか。


「本当にここまで長くかかったが、やっと出発できるな。ありがとな、ストレイナさん。」

何も知らない、俺にここまで教育をしてくれたことははっきり言ってありがたかった。

「命の恩人の君に対して、その程度はお礼を言われるほどのものではないよ。それに君は熱心な生徒だったから、教える方としても熱が入ったのさ。」

本当に、イケメンだなあ。女だけど。心がイケメンである。これで、王子だったら、この人は最高の王様になっていただろうな。

「それにしてもストレイナさんが王子だったら、すごいことになっていただろうな。顔良し、性格良し、武力もあるなんて理想の王族だったろうから。ま、それが好きじゃないってのは分かっているんだけどね。こうも、格好いいことを言われると男の俺の立つ瀬がないというかなぁ。…人間の器として負けてる気がする。」

「男として生まれていたなんて考えていなかったよ。君は変わってるな。私はとことん女らしくなれと言われ続けてきたから反発し続けていたらこうなっただけだよ。…男として生まれていたら王位継承権は放棄しなかったかもしれないけどね。王族なんて言うものは厄介なものだよ。常に最強であることを証明しなければならないからね。私はそれよりも諸国を自由に巡りたかったのさ。」

そこで一旦言葉を切って俺へと向き直って少しジト目がちになって彼女は言った。


「だがね、私とて女だからね。あまりにも、女扱いされないのは不満があるものだよ?」

にこりと形だけは笑っていた彼女が、俺は恐ろしかった。

「でも、ストレイナさんは格好良い系の女子だからしょうがない。可愛い姿が想像できないんだよな。まあ、美人さんだから可愛い格好しさえすれば大抵の男はすぐに落とせるだろうけどね。」

これは厳然たる事実だ。彼女は美人さんで、清潔感があって、凛とした美しさが漂っている女の子だから。


「君なあ、ああ、もう、…いいや。ありがとう、お世辞だとしても嬉しいよ。」

微妙に俺から顔をそらせているストレイナさん。まあ、怒らせていないのら良かった、よかった。


さてと、気まずい空気も霧散したから出発だ。ゆっくりと行こうかな。どうも彼女は歩いて行く気らしいから。王都の手前辺りには王城までの転移陣を作ってあるし。そこまでは美人さんと一週間くらい楽しい徒歩生活ですな。


滾ってきたな!!


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