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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第3章 無知とは哀れなものですよ。だから希望は全部潰してやりましょう!
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第17話 ニューボッチのお披露目と作戦会議

いつの間にか、一年がたっていました。


完結目指して書いて行こうと思います。皆さんもよろしかったら、今後も付き合ってくださると嬉しいです。



いよいよ、新しい俺の姿を皆に見せる時が来た。


魔力の量はサクレーヤよりも控えめにしてあり、姿形はあまり変わっていない。瘦せ型であり、すらっとした立ち姿である。ただし、顔だちだけは女性的にならざるを得なかった。まあ、それは諦めつつある。それに、なんだか男の娘状態にも馴染み始めてしまっているし。


女と見間違えられても以前ほどは腹が立たなくなってきているのだ。最近は、もう慣れてしまったし、着ることのできる服の幅が広がっていいじゃないかとも、考え出した。もう普通の男としては、駄目かもしれない、いや、間違えようも無く駄目だろう。とはいえ、この自分の姿にも愛着を感じ始めたのも事実だったりする。


元々の自分よりはイケメンであるし、何より ディアルクネシアが与えてくれた姿だからだ。その点が大きい。彼女が俺のために与えてくれた姿であるから、正直、あまり本気で男らしい姿になろうとか考えていないのかも知れない。


今の俺は獣人ベースであり、黒い狼を基にした姿にしてある。ズボンにも細工をしてあり、ちゃんと尻尾を出せるようにしてあるのだ。というか、ベルティーオたちの服をそのままパクったのだが。デザイン的にという意味だ。物理的には盗んでいない。金なら結構あるしな。この世界の魔物達が落とすものは結構、高値で売れたりするのだから。しかも、俺が持っているのはほとんどが稀少種ぞろいの品物ばかりだ。俺の場合は、魔物の部位を売っていくだけで今後、1000年くらいは全く働かなくても豪邸に住み、5人くらいのメイドを雇い、好き放題に暮らしていてもなお、お釣りがくるほどの稼ぎが出てくる。おまけに子供も働かなくても暮らしていける程度の金は出せるしなあ。


結構な金額を稼ぎだせるのだが、現状の俺は、人間界の金しか持っていなかったりする。獣人界ではまだ、換金したことが無かったのだ。理由は単純で、金を使うまでも無く、俺が今滞在している村の人々が何もかもをタダでくれてしまうからだ。はっきり言って、俺は救世主扱いをされているようなのだ。肩身が狭いような、嬉しいような、堅苦しいような、ありがたいようなと複雑怪奇な感情が入り混じっていて、自分でも何と表現すればよいか分からない。


まあ、厚意に甘えるだけではないが。村の周辺の魔物を掃討したり、村の農作業に従事したり、村の女の人達から料理を習ったりと楽しんでいる。楽しみながらも、村の発展に貢献はしているはずだ。鈴木も、あれで一応真面目に働いているしな。あいつは俺よりも空気が読めるからな、自分が勇者であったという事を気にしているのか、かなり真面目に働いているのだ。


ダンジョンから出て、村へ向かって歩きながらそんなことを考える。そして、ストレイナさんへ声をかけた。一応、これから話すことは俺の秘密を守るためなので彼女を誘って、ダンジョンハウス内へと場所を変えた。わざわざ、王都に行くために姿を変えたのだから。まあ、この姿も俺と認識してもらわないといけないので、ある程度の事情を知っている村人を使って反応を確かめるつもりだったが、いきなりストレイナさんが見つかるのは運が良いな。


要らない手間をかける必要がなくなったから、気分が良い。


「ストレイナさん、おかげでいい感じに化けることができたと思うんだけど、どうだろう?」

ストレイナさんは、しばらく固まってから再起動した。

彼女のアドバイス通りに行動したのだけれど。何かおかしかっただろうか?俺は自分の変装と力の隠ぺいに今回はかなりの自信がある。だから、彼女の意見を早速聞きたかったのだ。一番最初に、的確過ぎる指摘をしてくれた彼女にこそ、俺は認めて欲しかったのだし。彼女の指摘が無ければ、俺は王都に移動するまでには、面倒な事態を引き寄せる可能性だってあったわけだからな。


「本当に、姿を変えてくるとは思わなかった。何とも、まあ、君は本当に何でもありなんだな。」

「これなら、王都に入っても普通の人達にも身元がばれないかな?」

俺は力を隠している件も、含めて尋ねてみる。

彼女は察しが良くて、俺の意図を読み取って教えてくれる。少しばかり呆れた表情をしているのが気がかりだが、彼女の答えを聞いてみよう。


「ああ、それなら”超獣”としてならば受け入れられるとは思うよ。」

苦笑しながら彼女は言った。どういう意味なんだろうな。

「いったい、どういう意味なんだ?”超獣”っていうのは特別な意味を持つものか?」

「ああ、獣人としてのレベルを遥かに超えた者としての意味を持つよ。だが、今までの君よりも遥かにましな強さだ。歴史上、数人だけだが存在は確認されている分、皆が受け入れやすくなるだろうね。」

どうも俺の弱体化の実験は成功したようだ。何せ、俺がやったことは普通の獣人であれば一人で決してできることではなかったしな。俺がやったのと同じことを獣人側が行おうと思えば、精鋭部隊が一つは必要になるだろう。確か一番最初に彼女達が監禁されていたところのゴミ共のレベルは平均して第二階層の魔物程度だったか。だから、レベルにしてみると200くらいのもののはずだ。


とはいえあの時の俺にとってはただの雑魚以上の情報でしかないしな。今の俺でも、奴ら程度のゴミなら単なる雑魚扱いはできるけど。…あの当時の俺は本当に自重というものを知らなかったなあ。今にして思えば、良くベルティーオは怯えなかったものだ。あの子の心は俺が考えている以上に強かったんだな。何せ、俺は彼に会った時はそこまで実力を隠していたわけでなかったしなあ。


「かつては俺と同じくらいの強さを持った奴がいたんだな。今でもいるのか、そんな化け物じみている奴らは?」

まあ、俺が化物云々は言えないだろうし、言ってはいけないんだろうけどさ。でも、大多数の獣人からすれば、今の俺は抑えに抑えても化け物じみた性能になってしまう訳だな。

「今もいるね。私の叔父上がその化物の筆頭だしね。…どうせ、王都に行けばばれるから言ってしまうけれど、私の叔父は獣王なんだ。そして、私は一応、王族だ。継承権は放棄しているけれど。あんなものは必要ないし、私の父もそれを望んでいたから。」

彼女はずっと隠していたことを教えてくれた。あまり言いたいことではなかっただろうけど。


そういった秘密を明かしてくれるのは俺が信頼され始めた証なのだろうか?そう考えると少しばかり、こそばゆい。ま、勘違いなのだろけどな。何せ、俺は彼女の好感度を稼いだわけじゃないしな。彼女の傷を治したけれども、それが原因で好意を持たれても困るしな。好かれようと考えて行った事ではないし、あの状況では彼女の傷を治さないという選択肢こそ有得なかった。まあ、それはそれとして彼女に応えないとな。

「そうか、やっぱりなという感じだけど。別に俺に言う必要はなかったのに。」

俺は思ったとおりに発言した。別に、王都に行けば分かることだkら、いま改めて言う必要は無いと思ったのだ。今まで言ってこなかったことから、彼女は言いたがっていた訳じゃなかったのは明らかだし。


「これからしばらくの間は、共に旅をするし今まで世話になりっぱなしの君に秘密を抱えているのはどうも、心苦しくてね。」

これから、しばらくの間は共に旅をする、か。そういう、仲間みたいなものを持ったのは久しぶりかもしれないな。クリムゾニアスとのアレは、ただの彼の里帰りに付き合っただけだしな。俺とクリムゾニアスは仲間というよりは同志という感じだしなあ。


光の女神絶対許さないメン的な。


あのバカ女神のおかげでこちらはなかなりの迷惑を被ったのだから。それにしても、ストレイナさんのこの、馬鹿正直さよ。ああ、癒されるな。


「そういうものか。誰にだって言いたくないことはあるだろうから、俺は言われなくとも気分を悪くなんてしなかったぞ。別に王族だろうが、貴族だろうが、俺にとっては関係ないことだしな。こちとら、邪神様だし。ま、中級だけどな。」

俺が笑いながら言うと、彼女は絶句していた。恐らく、彼女意外にはこの事を知るものはいないはずだと俺が追い打ちをかけると、彼女は固まってしまった。


「…はぁああああ。もういいや、君には何を言っても許されそうな気がしてきたよ。こうして、私の心臓に悪い事しか言わないし、やらないしね。邪神といえば、人類の敵対者として最高の称号なんだ、私達にとっては救世主に等しい存在なんだよ。そんな秘密を気軽に話してくれたなぁ。…この事は絶対に秘密にしておいてくれ。信者が殺到して君は、望んだ生活を確実に送れなくなってしまうからね。」

「そんなに邪神という称号は凄いのか。俺は邪神だけど、神性なんて持っていないのに。」

俺が首をかしげると、彼女が補足説明をしてくれる。

「この大陸においては、邪神という称号を持った者は、最高の救世主であり、最上級の戦士である証なんだよ。この大陸は人類に敵対し続けているからね。だからこそ、その称号は私達にとっては希望の光となり、旗印にもなるんだ。この事実を知っているのは私だけなんだな?」

「ああ、俺が言ったのは君だけだ。それに俺はこの姿ではこれ以上の力を振るうつもりはないからな。称号欄も隠蔽をしておくとしようか。…スキル群も隠蔽しておかないとな。」

俺は彼女の指摘に慌てて準備を改めるのだった。

「はあ。本当に君は私の想像を軽く飛び出して行ってしまうね。なんというか、もう、表現できないな。」

なんだかな。ただのお披露目会が一転して、反省会になってしまう。それも俺が一方的に悪い感じで、だ。まあ、俺が悪いんだけどね。この大陸の文化とか知らない。


邪神という身分がそこまで凄まじいものだったとはな。


ただし、この大陸に神官がいた場合はディアルクネシアによって知らされてしまっている可能性があるんだが。…考えなかったことにしよう。ストレイナさんが本気で頭を抱えているしな。俺もこれ以上彼女に負担をかけたくはない。なんか可哀想になってきたしな。


「ああ、王都に出発するのはもう少し先にしてもらっていいかな?俺はまず、この大陸の文化を学ばないと大変な失敗をしでかしてしまう気がしてならないんだ。」

「そうだね、私もそれが良いと思うよ。さて、外で教えようか?」

「いや、ここの方が良い。ここは時間の流れが遅くなっているから、外での時間よりもみっちり勉強ができて、外では時間がそれほどたたないという優れもの過ぎる空間だから。」

俺がそう言うと彼女は固まってしまった。


大変だな。俺がボンヤリ思っている間も彼女の硬直は解けていなかった。


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