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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第3章 無知とは哀れなものですよ。だから希望は全部潰してやりましょう!
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第15話 それなりに幸せな話~聖勇国見聞録~

年内最後の投稿となります。


この一年間、筆者の作品に興味を持ってくださった方々、どうもありがとうございました。


来年もまた、興味を持っていただけると幸いです。良い、お年を!

さて、適当に眺めてみるか。俺は風の精霊に頼んで、情報を集めて来てもらう。他には、家庭からは不動の不人気、黒光りするGさん達にも協力を頼んでいる。


黒くて、どこにでもいる彼らは情報収集役としては結構重宝するようになっているのだ。彼等には高い知能が無いが、録音機能や、映像記録魔法を張り付けておけば移動式のビデオカメラのように使えるということを俺は発見したのだ。それも数多くの視点が得られるという点で貴重だ。


それに、彼らは殺されたとしても、俺の良心は痛まないし。


使い捨てをするのに、あれほど心が痛まない存在は無いだろう。後は、基本的なところで、鼠も使っている。彼らの場合は知能が多少はあるので、罠を設置するときには使っている。特に急ぎでもなく、精度の高い情報が欲しい時は鼠が一番だと思う。


ゴキブリ君たちはな、知能が低い。


けれども、数だけは圧倒的なのだ。集めやすいし、使いやすい。それに、この世界ではゴキブリを使い魔代わりにする奴はいないしな。俺くらいのものだろう。…あまり嬉しくはないが、俺の体の一部は巨大なゴキブリ型の魔物からも形作られているのだから。だからこそ、俺はゴキブリたちからは絶大なカリスマを持ってしまっているのだ。


あの、生命力の高さには抗えなかった。回避能力が大幅に上がったので、生還率が大幅に上昇したものだ。高速移動に、遮蔽能力の高さと、俺がダンジョン内で、まだまだ弱かったころにはお世話になった。思い出は大事だが、今の方を見てみようか。


さてさて、勇者様達は何をしているのやら。




一匹の懐かしいが、親しみたくもない例の黒い害虫が壁際を這っていた。だからと言って、誰も注目はしなかった。ただ、視線を感じたような気がしただけだったけど。気のせいだろう。自分のような女を監視するもの好きはいまい。


容姿平凡、能力平均、体型普通の自分。


顔立ちも普通だ。人目を引くような、美人でもなければ、人から指さされるような不細工でもない。100点満点で言えば52点くらいか。


そんな平凡な自分を監視するような人間はいないだろう。それに勇者としても凡庸であるのだから。何せ、ユニークスキルとやらは、【倹約家の魂】という、なんとも貧乏くさいものだったからだ。


効果は単純でありとあらゆる、力の消費が3分の2になるという事だけだ。魔力、体力、気力を消費する者の量が通常の3分の2になるスキルである。また、消費した力を回復する速度は通常の1.5倍速だそうだ。


ユニークスキルというのは、私達異世界から来た勇者は必ず一つだけ持っているものらしい。私のレベル1の時のステータスは平凡気味だったし。HP、MPは200くらいだった。他のステータスは平均で170だった。これは他の子達とも比べて特別に高くもなく、低くもないステータスだったと確認できている。


おまけにスキルが私らしくて、笑えてくる。


私の家はそれほど裕福ではないのだから。かといって、貧乏でもないけれども。父親の稼ぎは平均よりやや上レベルであるし、母親は週3日くらいほとんど趣味でパートに出ている。暮らしぶりは平凡であり、それが幸福であることも知っている。私は無駄遣いをしない主義なのだ。広告だってよく見て、店に買い物に行くし、インターネットを活用してポイント稼ぎをするのも好きだ。何せ、暮らしぶりは平均だが小遣いはそこまで多くは無い。


となると必然的に、切り詰めるところが出てくるわけである。


それが交際費だ。


友人の数が増えれば増えるほどそれに正比例して遊ぶ機会が多くなるのでお金がガンガン減っていく。私はそこまで、友達が欲しいタイプではないから、友人の数は片手の数ほどいればいいという主義だ。それも最大で、だ。最低で、片手の数ほどという意味ではない。一生の中で友達と言える人の数はそれだけいれば上等じゃないだろうか?


それにそれくらいの数の方が、揉め事も少なそうだし。後は去る者追わずの精神でいることが大事か。来るものは選ぶ主義だから。自分と近い考えであり、且つ人付き合いにおいて【重く】無いタイプが非常に好ましい。私は縛られると、そこから逃げ出したくなる衝動に駆られる癖があるものだから。友人関係は淡白でありながら、長持ちすれば理想かな。



割と自分勝手でマイペース気味なこの少女の名前は望月 桜。


金髪近眼という派手な姿の割に地味な印象を受ける少女だった。唯一の特徴といえば、赤いフレームの眼鏡くらいだが、今や彼女のメガネは度の入ったレンズが付いていないただの魔法眼鏡となった。彼女が、この世界に来て勇者となっときに身体能力全般が大幅に向上したため、眼鏡がいらなくなったのだ。ただ、今までずっと、かけてきたメガネが急に無くなると落ち着かないので、レンズに度を入れる代わりに魔法を込めてある。


帝国がまだ、健在であったころに入れてもらったものだ。王宮の魔法使いは様々な魔法を研究していて、その中の一人がマイナーな魔法だが、自分が必要としている魔法を入れてくれたのだった。望遠魔法という一つの魔法だ。眼鏡をかけている間は双眼鏡のように自由に視点をずらすことができる魔法だった。


遠くを見るときには重宝する魔法だし、周囲の安全を確認するのにも便利な魔法だ。けれども、映像を記録できたり、投影できたりするわけではない。単純に遠くの景色を見るときにだけしか使えない魔法として、性能としては微妙な魔法なのだった。それでも、今の彼女にとっては必要な魔法だ。


彼女に割り当てられた部屋から、幼年学校を盗み見するのには必要な機能だった。彼女は変態であり、変人であるのだから。


彼女はこの魔法の存在を知った時に、小さい男の子を遠くから見ても、怒られることも不審がられることも無いね♪、と大喜びしたものだ。


そう、彼女はショタコン気味なのだった。可愛らしい女の子も好きであるが、男の子には及ばないのだった。基本的に彼女は、子供が好きなのだ。


その中でも特に幼く、可愛らしい男の子が!


男という生き物は残念ながら、ある程度の年齢になると髭は生えるし、声も低くなり、体格もでかくなり、骨までも太くなってしまうが、幼く、小さい頃は大層可愛らしいのだから。幼いころの男子はただただ、馬鹿な子が多くて愛らしいと思っている。基本的に彼女は表情を余り変えることは無いが、幼い男の子たちを遠くから見ている時だけは表情が緩んでいる。その表情はお世辞にもまともな人間のするものではなく、変態と言われる種族に近いものがあった。


若干、鼻息も荒いのも変態的なところである。


「まったく、ケモ耳に半ズボン、サスペンダーの制服はいつ見てもいいわ。エルフ耳の子もいいわぁ。可愛いなあ、本当に。どうして、子供ってあんなに可愛いのかしらね。ケモ耳、エルフ耳幼女もたまらないしね。くふぅ…完全に私を殺しにかかってるわ。……ふぅ。」

ひとしきり、可愛らしく、幼く、愛おしい幼年幼女を眺めまわした彼女は一息ついた。これで、休憩が終わってからの救護院での勤めにも身が入るというものだ。


YES! ショタっ子  NO TOUCH!!

YES! ロリっ子 NO TOUCH!!


私は、これを遵守している。幼年幼女を愛する一人の淑女として守り抜かねばならない鉄の掟である。それはもう、力いっぱい抱きしめてクンカクンカしたい時もあるが、断腸の思いで我慢している。ただし、幼年幼女の側から、接触を求めてきた時は例外だ。いかに淑女とはいえ、こちらにスキンシップを求めてきている、愛しい者達に応えないわけにはいかないから。


一応、彼女は変態気味ではあるが、驚いたことに聖勇国では働いている。彼女は他の勇者よりもあらゆる力の消費が抑えられ回復も早められているために、使い勝手は良いのだ。人よりも長く働けるのが彼女の長所だ。それも、彼女は回復魔法を得意としているので、ごく自然に救護院務めとなった。


聖勇国も保護した勇者達が全員無為徒食の徒なっては困るだろうしという計算もあって彼女は働いている。変態ではあるが、世間の評価というもの計算できる少女だ。異性のタイプとしては童顔系の男子だ。髭が濃くなく、体毛も薄目を希望する。身長が低ければさらに良し。日本にいた時には叶わぬ夢であったが、異世界様様であることを彼女は実感している。


エルフという種族は見た目が若い時期が長いのだ。つまり長く幼い外見を楽しむことができるということだ。そして、獣人という素晴らしい種族もいる。特に小型犬をベースにしている犬タイプの獣人は彼女が理想とする、外見が幼く、背も低く、髭も全く生えない、おまけに声まで変わらない奇跡のような犬人達だっているのだから。


この世界に来た当初こそは悩んでいたが、今では目一杯楽しもうという気にもなってきた。何せ、日本では決して見ることができない美しく、儚く、尊い者達を毎日眺めていられるのだから。


「はぁ。はぁはあ、はぁ、はあぁ…たまらないわ。本当、グリディスート帝国を壊してくれら佐藤君には感謝してもしきれないわね。」

今は、人間を超えてしまった同級生に対して彼女は心底思っている。だって、魔王を倒してくるなんて無理だと思っていたのだから。どうして自分達がこの世界のために頑張らなければならないのかという疑問があった。今でこそ、あの幼年幼女のためであれば命だって懸けられると胸を張って答えることができるが、当時は覚悟なんてなかったのだから。


それに、グリディスート帝国ではエルフや獣人達の事を蛮族、野人と言って差別していた。あの素晴らしい外見の持ち主のどこが、蛮族であり野人なのかを小一時間問い詰めたい衝動にはかられたが、何も知らない異世界生活にほっぽり出されても困るので腸が煮えくり返る思いをしたがこらえたのだった。エルフや獣人達は、自分が今居る聖勇国でも亜人という言い方だが。悪意のこもった言い方ではないから、善しとしている。ただ、魔族はこちらの大陸で見かけたことが無いので、あの種族のショタっ子、ロリっ子はどうなのかと気になってしょうがない。


どうにかして、あの大陸に、理想郷に行きたいものだが自分は勇者である。あちらの大陸では毛嫌いされているではないだろうか。


「はあ…まだ見ぬ、ショタっ子にロリっ子達よ。私はいつか、きみたちが居るそこまでに辿り着いて見せるからね。はぁ…、はあ、はあぁ、くふふふっ…!!」

そう、可愛いものがあれば私は生きていける。さて、今日も怪我をしたおっさん、おばさん、兵士とかを治すお仕事をしようか。間に、子供が混じってれば、良いのだけどな。




「望月って、業の深い変態だなあ。いや、人の事を覗き見している俺が言えたことじゃないか。でも、あいつにはこちらの大陸に対しての悪意は全く感じられなかったという点では収穫だな。」

はっきり言って、俺に対しての悪意もあるかと思ったが、それはほとんど感じられなかった。変態ではあるが、頭は良いのだろう。それにしても、なんだか意外に強烈だったな。単なる大人しい同級生と思っていた相手が実は業の深い変態だったと知ってしまったのは何とも言えない感じだ。


ただし、これは口外しないようにしよう。それが人としての情けだし。俺の覗き行為もばれないしな。


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