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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第3章 無知とは哀れなものですよ。だから希望は全部潰してやりましょう!
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第10話 友の変化と現状確認

いつの間にか、予想もしないPV数になっていました。これも、筆者の未熟な作品を読んでくださる読者さんたちのおかげです。


完結できるように、少しずつでも書いて行こうと思います。


これからもよろしく読んでいただけたら幸いです。

唯志の表情が最近になっていやに、柔らかくなった。


それ自体は良い事なのだろうけど、何というか表情が時々妙に色っぽくて困ることがある。体つきも細身の女性のような感じなので、本当に性別を超えた怪しい美しさを身に付けてきていると感じる。ただあいつは男で、俺も男だから、あまりそういう感想を持ちたくはないのだけれど。


あの絶世の美女ともいえる表情に最近さらに磨きがかかってきたのだ。以前のような暗い澱んだ光も瞳の奥に引っ込んでいるようだしな。殺気立っていた目付きが目付きの悪いチンピラくらいには落ち着いているし、表情も柔らかいものになってきているので、この村にいる男女問わず人を引き付けているようだった。目つきが悪くても、凛としていると捉えられてあまり不評は立っていないらしかった。ただし、周りの高評価には本人は気が付いていないけれども。眼つきや周囲の評価だけでなく本人の姿自体も、また変わっている。


本人も、俺は一体何回姿が変わればいいのだろうかと苦笑いしていたくらいだしな。


髪の色は雪のような白色になっている。相変わらず、髪の長さも腰の辺りまであるから余計に性別は分かりにくくなっている。本人曰く、魔力を髪の毛に溜めているからこのくらいの長さは必要とのことだ。そのため、白髪頭というには、生気が溢れている感じだ。髪の色つやもいい感じであるし、キューティクル?のようなものも豊富にあるんだろう。天使の輪ができているからな。太陽の光が反射すると良く分かるが。


肌は白く、きめも細かいので女子が嫉妬するレベルの美肌野郎である。なんでも日焼けもしないらしかった。髪も、肌も白いからすごく儚く見えるが、こいつの本性は儚いものなんてものじゃないから心配いらない。体型自体は儚く見えてしまうのだから、始末が悪いんだけど。


瞳の色は濃く、紫を帯びた銀色になっている。紫銀とでも言っておけばいいのだろうか?眼つきの険悪さが取れて、俺が知っている中学の時からの顔に近いものに落ち着いていた。容姿のレベルは凄い勢いで上昇しているが、その方向性が美女化であるから何とも言えないが。


そして、耳の両脇から上に向かって生えている角の色は漆黒に染まっていた。光を全く反射することのないほどの見事な黒色だった。闇そのものが結晶化したような雰囲気で不吉な感じだ。東洋風の龍のような形の角が妙に、懐かしさを感じさせる。


着ているものは日本でもありそうなデザインのコートだった。ただし、スキルを使って鑑定すると、とてつもない性能だったので驚いたが。俺達がここに連れて来られたのは4月ごろで、今は12月半ばくらいだ。暦自体は俺たちが居た世界と極端にずれていないようだ。世界間での時差がある場合は当てはまらないけれども。


父さん、母さんはどうしてるかな?後、弟共は元気にしているだろうか。俺がいなくなって、日本でも半年以上が経過しただろうが、世の中はどうなっているのだろうか?警察とかは創作しているのだろうか。決して見つからないであろう、異世界にいるという映画も顔負けな摩訶不思議を経験している身としては何も言えない。見つけて欲しいのだけれども、それを望むのは無理だろうさ。


このクロードル大陸には日本と同じように四季があるらしかった。俺達が居た、グリディスート帝国が存在したのはディヴァルネシス大陸という名前だった。獣人たちが居る大陸の名前は〈雲〉に由来するものだそうだ。雲は太陽を覆い隠すことがあるから、光の女神が大嫌いな彼らにとっては良い名前なんだろう。


そして、人間達が住んでいる大陸の名前は光の女神に由来している。〈太陽〉の古い言葉を独自にアレンジしたそうである。一応、俺達勇者は戦闘だけでなく、この世界の人間達の事も教育されていたのだ。多分、こちらの世界側の事情を知ってもらう事で、俺達の同情を引いてより、協力させやすくしようとしていたんだと思う。


獣人、亜人、魔族たちと接することが無かった俺達は彼らの言い分を信じ込んでいた。けれども、実際、獣人達と付き合ってみると彼らも彼らで普通の人間と変わらない感性を持っていたのだ。帝国の連中が言っていた、教育を受けていない獣人は魔物と変わらぬ知能しかないというのは嘘っぱちだと証明されたわけだ。俺からすると、帝国は嘘吐きの巣窟であり、こちら側の獣人達の方が100倍信頼できる。


それに俺は獣人側の事情を聞いてしまったのだ。勇者達を招いて戦争を行うことになったきっかけは資源問題だったというのだ。人間側が、俺たちが居た世界と同じような経緯を経て、魔石不足が深刻化した状況になったのが今から500年くらい前だそうだ。後の事を考えない開発で、生活レベルは向上したが同時にその快適な生活レベルを落とせなくもなってしまっていた。獣人である彼らは人間側がとにかく、魔石を欲しがったと覚えていたのだった。彼らにとっては無くても困らないただの石に過ぎないものを、人間達はこの大陸の住民全てを殺してでも奪い取ろうとしたと獣人側の記録には残されていた。


だから、獣人、亜人、魔族は人間達を恐れて警戒したらしかった。これまでは人間の事を別大陸に住む少しばかり毛色の違う同朋と捉えていたようだ。だが、自分達のとってはどうでもいいもののためにこちらの大陸の住人を傷つけ、攫い、殺し、犯した人間達には怒りと共に恐怖が積もって行ったそうだ。自分達の土地を勝手に侵略したばかりか、若い少年少女、大人の美しい女性をさらっていくに人間達には憎しみは尽きなかったらしかった。だから、彼らは人間達に評価を下しているのだ。


理解出来ない血に飢えた野蛮な蛮人達。


それが当時の獣人達があちらの大陸側の人間全般に下した評価だった。本当に皮肉が効いている。何せ、人間達もこちらの大陸の住民たちを理性の無い魔物とそう変わらない者達とさんざんに、こき下ろしているのだから。だが、魔物と変わらない知性であるはずの彼らの方が文明的に進んだ生活を送っていたのを人類は知ってしまったらしい。ここら辺の事は、人間族の大陸に興味を示した侵略好きの魔王が侵攻を開始したと記録されている。


まあ、そのあたりの事は俺も習っているから知っている。資源不足の時は本当に深刻であり、残り50年ほどで大陸中の魔石の鉱床が死滅するだろうと予言されるほどに資源が足りていなかった。だから、その時にこの大陸の人間と商売のテーブルを開けばよかったのだが、何をとち狂ったのか獣人、亜人、魔族達を排斥してから資源をゆっくりと手に入れようと当時の人類は考えたらしかった。


戦争というのはいつでも、話し合いをしないから始まるのだな。という風に感心してしまった。それに対話が無くて殺し合いのみが発展していったのも怖かった。誰も立ち止まろうとしなかったのだろうか。いや、止まれなかったのか。


残り時間は50年と宣告されていたのだから。俺としてはそれはブラフだったのではないかと思うけど。俺達を騙したあの国の事だから、この時も国民たちを上手く騙して、魔石が不足して今までの生活が送れなくなる恐怖に理性によるブレーキが麻痺しているところを自分達の都合のいいように誘導したのではないだろうか。


他の騙された、勇者たちは何をしているのかが気になった。


俺は唯志の友人であるし、シャンレイの口利きのおかげでこの世界で、あの帝国以外の居場所を見つけることができた。基本的には唯志の持つダンジョンハウスの一室を拠点としている。あいつはもう何でもありだな、とあきらめの境地に至ったのは良い思い出である。強さは世界一で、ダンジョンも持っているからまだまだ強くなれる余地がある。しかも本人はいたって真面目で、手を抜くことは余りしない男だった。けれども、俺と一緒にいた勇者たちはそこまでこの世界に馴染みやすい境遇ではないはずだ。


この間、唯志の壮絶な復讐劇でも重傷を負わされただけで、呪われて姿を変えられたわけでもないのだし。帝都にいた国民も皆、魔物に変えられてしまっているのだし。他の皆は、変に崇められた結果としてあいつと戦うことになりはしないだろうかと気に病んでいる。


色々な運に恵まれた結果として、俺はこの獣人の村で受け入れてもらうことができた。それは俺が唯志の友人だからだ。俺自身の魅力でもないし、俺の能力のためでもない。まあ、力は他の人達に比べてもわずかに勇者である俺が勝っているようだから肉体労働を優先して手伝っている。後は支援魔法で、疲労を軽減したり、荷物の重量を軽減したりとあちこちをサポートしていた。とりあえず、異邦人である俺は行力信頼を自分の努力で勝ち取らなければならないのだ。


働かざる者、食うべからず。


昔の人は色々と頭がいいものだ。という訳で、今日も俺は家畜の牧草集めを皆さんと共に頑張っています。ええ、今までの考えは単純作業の合間に考えたことなのだ。だって、草集めを皆さんとした後はひたすらに重量軽減魔法をかけるマンとしての役割しか残っていないのだし。


難しいことはわきに置いておいて、今日も今日とて、この世界での俺の立場のために働くとしようか。そうしないとおいしいごはんが食べられないのだし。ただ飯を食い続けるのは、俺にとっては厳しい。精神的に追い込まれてくる。


別に、この村の人はみんながみんな、裕福と負う訳でもないし。子供でも農作業をしたり、狩りをしたりしてしっかりと働いているのを見ると、俺もいい年なのだから働かないとという気にさせられるのだ。


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