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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第3章 無知とは哀れなものですよ。だから希望は全部潰してやりましょう!
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第9話 祭りの閉幕と、反省

あれから、一週間ほどが経った。


今までこの世界に来てからずっと感じてきた全てのストレスを表に出した、あの日から一週間ほどが経ったな。


…ふぅ。



いや、あの、その、何と言いますか。


ええ、我に返ったんだ。すると、かなり酷い事をしているなあ、俺。まあ、グリディスート帝国の国民の半分近い数はもう、国外に逃げてて俺が魔法で魔物に転生してやったのは、逃げ遅れた人達だけだけどね。多分、4割は無事に逃げのびたはず。それで残りの半分くらいは、俺の可愛い部下である魔物達が食べてしまっていた。恐らく、魔物が食べてしまった分を差し引いて考えると、帝都周辺の人間は生き延びているはずだから人口の1割といったところだろうか?


宰相を除いた全員が、魔物と化したのは笑った。そして、宰相が皆から嫉妬の眼差しで睨みつけられ、ボコられているのにも笑ったけれども。何せ、帝王(笑)も見事にコボルト君に転生したのだから。復讐を始めてから2週間ほどが経った今だから言えるが、始めた当初はここまで大きな復讐になるとは思ってもみなかった。せいぜい、帝王と宰相の周辺をひどい目にあわせておしまいと考えていただけだったのに。


どうしてこうなった?


俺がやったことであるけれども。ちょっと、いいや、かなりやり過ぎたかもしれないかもしれないけれども!すっきりしたんだよなあ。本当に楽しかったんだよなあ。宰相には自殺できないように呪いをかけて、精神的に壊れたりもしないように補強もした。発狂してもすぐに正気に戻る優れた魔法を付与してやったのだ。優しいな、俺。後は、どれだけ魔物と化した住人たちにぼこぼこにされても決して死なない呪いもかけてあるし、老化を遅くする呪いもかけてある。


さすがに不老にする呪いとか、魔法はかけられないのだ。俺の種族とて、万能ではない。というか、そろそろステータスプレートの確認をしておいた方が良いかもしれないな。今回の件で色々と変わったこともあるだろうし。


例えば変わった事というのが一つあった。グリディスート帝国での復讐を終えた後に、ダンジョンに帰ってセーフハウス内で一寝入りした俺は翌朝に愕然としたのだ。


ああ、その、な。股間の部分がぐっしょりと濡れていたのだ。それも、テントを張っているままでだ。チョモランマという感じでテントを張って、いや、山を作っていたんだが。つまり、復讐を成し遂げた達成感のすごさが、そちらの達成感も呼び込んでしまったらしかった。


溜めすぎかもしれん。


正直、そういった方面の欲は抱いている暇も無いほどに俺は戦い続けてきたんだし。むしろ、戦っている間はそんな余計な感情など生まれてこなかった。今までの俺は綺麗な獣人の女性を見ても、道に落ちている綺麗な水晶程度の認識しか持てなかった。だが、この日以降の俺は違った。


世界が今までと違って見えたのだった。


文字通り、世界が一変した。世界に色が付いた、とでも言えばいいのか。少しばかり詩的表現が過ぎる気もするけれども、そのくらいに俺の意識は変えられたのだった。女性にも興味が持てるようになったと思うのだ。


つまり、ようやく日本にいた時の感覚で女性を見ることができるようになるということだ。俺に日常感覚が戻るのは良い事かどうかは、分からないけれども今のような怪物一歩手前の精神状態で居続けるよりは健全ではないだろうか?


衣食住は全て足りている。


となると、足りていないのは恋愛面ではないだろうか。まあ、こんな体の俺でもいいというお相手がいればの話なんだけどさ。何せ、合成獣も真っ青なくらいに俺の体を構成する魔物の数は多いのだから。基本的には、龍がメインとなっているが、俺の体の中にはあのダンジョンで戦ってきたすべての魔物の情報が埋め込まれている。戦う最中に、闇魔法の練習と称して、魔物たちを実験台がてら喰い過ぎたのかもしれなかった。そのおかげで闇魔法にはかなりの速度で適応したし、上達もしたのだけれども。


代償としては人としての見た目をどんどん失っていったということだな。外見は限りなく魔物だったからなあ。ディアルクネシアと話すために色々とがんばっていたおかげで俺の体は人間ぽいものに変わっていったけれども。心の方はお察しくださいというレベルで、非人間的なものへと変貌していったんだけれどもね。それでも、俺は、後悔はしていないし反省もしないのだけれども。


俺が歩んできた道は復讐に関しては完璧だったのではないだろうか。俺を不幸にした奴らはもれなく全員不幸になった。宰相はいつまでたっても国民たちから攻められ同士だし、帝王だって魔物になっている。彼も国民たちからフルボッコの刑を受けているはずだ。そして、俺は優しいから彼が死んでしまうことが無いように宰相と同じような特別待遇で彼を魔物に変えてあげている。コボルト帝王(笑)は、どんな感じで生きていくのだろうか。


魔物に変えてあげた糞ったれのグリディスート帝国の国民たちが許されるには一応、条件は設定されてあるのだ。亜人、獣人、魔族達から帝国の人間が500年間の長きにわたって犯した罪を許すと言われた時にのみ彼らは晴れて人間の姿に戻ることができる。難易度は、極悪級に高いけれどもな。


戦争を仕掛けてから500年間ずっと、グリディスート帝国の人間達は獣人、魔族、亜人達を奴隷として慰み者にしたり、労働力にして使い潰したりとろくなことをしていないのだから。そんな奴等が許してもらえるかというと、そんなはずは無いよね、というのが俺の意見である。ああ、グリディスート帝国の歴史が絶えるのが楽しみだなあ。実際に俺は宮殿のうち、図書館の本は全て俺のダンジョンに持ち込んでいる。他の施設は大体焼き払っているから、文化の継承は困難なはずだ。ま、お話の中でくらい存在は許してあげてやってもいいけれど。かつて、こんな馬鹿な国があったと記憶されていてほしいものだ。


俺に喧嘩を売ると不幸になるぞ、ということもきちんと記録されていてほしい。


闇龍王に喧嘩を売ると何もかもを奪い取られていくという噂が出ているらしいから良い傾向だ。俺はもう、喧嘩をする気が無い。


戦いはこれでも、もう十分だ。


だって、俺の復讐は終わったのだから。これからは復讐の事は忘れてゆっくりと余生を過ごしていきたいものだ。そして、嫁さんを探して、体を戻せるだけ人間に戻していってとやることがたくさんある。ただ、せっかくここまで鍛え上げた力をただ捨てるのはもったいないのだ。俺の持つ力を何か別の器に封印できないだろうか?そして、その器を使った時にだけ俺の力は十全に発揮できるという感じにしたいのだけど。


ゲームとかでありがちな、あれだ。変身する主人公である。パワーアップアイテムとして、変身アイテムとして何かを作るべきなのかもしれないな。


やはりベルトだろうか?それとも伝説の魔剣とかいうのも悪くはない。引き抜けば、伝説の闇龍王に変身できますというフレーズで埋めておいても後世的には良いネタになるかもしれない。まあ、本当に変身できるようにするつもりであるが。俺がいなくなっても人間達はの性質は変わらないだろう。その時に、俺の力だけでも彼らのために残しておいてあげたい。彼らはこんな壊れた俺でも、人間として扱ってくれたし、龍種として尊重もしてくれた。だから、俺は獣人たちの住む、この大陸をいつまでも守れるような力を残しておきたい。人間という生き物の醜さを俺は今回嫌というほどに味わったしな。


自分達の幸せのためになら、他所の世界の人間を連れて来てまで実行しようとするのだから。それをやってのけるのはクソみたいな女神なんだけどな。あの女神は早く何とかしないとだめだろう。でも、俺は神を殺せるほどに強いのだろうか?正直、ステータスだけ見るとかなり強くなっている感じはする。


少なくとも地上においては俺よりも強い生命体は存在しないだろうとも言える。その程度の自信と自負はある。


だが、神ともなると話は別だ。


戦ったことが無いしな。いる場所も知らないし、どうすればいいのかが分からない。個人的にはぶちのめしたいが、相手は一応女神だ。腐っても〈女神〉なんだよ。俺は余り女を殴るのは好きではないんだ。かと言って、何かいい方法があるものか。ここは、男女平等の精神で行くべきだろうか。そう、俺を不幸にした、恐ろしく腹の立つ存在としてただ、ボコボコにする。


無論、その時にはクリムゾニアス達一家も一緒だ。俺が最初に得た仲間で友人である彼と一緒に女神をぶちのめさなければ気が済まない。今度の目標は女神を封印するか、ぶちのめすかのどちらかだな。


うーん、こうなってしまうとディアルクネシアに頼らざるを得なくなってしまう。何せ、身近な神様は彼女しか知らないし。でもなあ、光の女神と戦うつもりだから事前練習のために戦ってくれという気にもなれないんだよ。彼女は俺にとって命の恩人だしな。返したくとも返し切れないほどの恩がある相手に向かって戦いたいとは言えない。さすがの俺でも、それは言えないなあ。


彼女と戦うのは、どうしても気が進まないしな。こうなれば、初代勇者とでも戦えないかなあ。あの人は今、神様だしな。ただ、戦神なんだよな。問題はそこだ。戦神ともなると神格として戦いには強そうなイメージがある。それに、俺は彼に恨みがあるわけでもないし、縁もゆかりもないのだ。


さて、どうしたもんかな。俺の主な目標は達成できた。だから、もう拳を振り上げる必要も無いと言えば、無い。けれども、俺は獣人、亜人、魔族たちの勇者だから。今の勇者たちを先々から撤退させて、人間達が今後1000年くらいはこちらの大陸に攻め込んでこないようにしないといけない。


なぜ、1000年とはいえ、時間制限を付けているかというと、人間は忘れる生き物だからな。どうせ、1000年もたてばかつて大敗した事なんて忘れて攻め込んできそうだし。それに、1000年間は攻め込めない状態にすれば今後俺が生きている間くらいは平穏無事な生活を送れそうだし。


もう、争い事はこりごりなのだ。本来の俺は別に争いなんて好きじゃないのだから。ダラダラ、ごろごろしてぐうたら過ごしたい。


スローライフよ、早く来い。


あと、女の子とイチャイチャしたくなってきた。性欲が帰ってきたんだよな。…ああ、俺は人間らしくなってきてるなあ。


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