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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第3章 無知とは哀れなものですよ。だから希望は全部潰してやりましょう!
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第6話 絶望への招待③~祭りの始まり~

先ほどはついつい興奮し過ぎてしまったな。


つい、カチンと来たから、問答無用で同級生たちを駆逐してしまった。いやはや、エンターテインメントを大事にするこの身としてはまだまだ、三流だなと反省しなくてはならないかな。演出家としてはまだまだらしい。というか、才能が無い気がする。俺は割と感情に流されて行動するきらいがあるからなあ。


それでも、俺の攻撃を受けて最後まで立っていたあいつの名前は何だったか。……確か、磯貝だったか。そう、磯貝だったな。野球部でファーストだったはずだ。そんなことを自己紹介の時に話していた気がする。この体は、興味が無くても、経験したことであるのならば俺の記憶を再生する能力が上がっているのだ。まあ、知力が上がったおかげなんだが。おかげで思い出したいことをすぐにでも、思い出せるし、忘れたいこともいつまでも覚えてしまっているのだけど。うん、まあ、利点ばかりなことなんて世の中には無いんだよ。


中庭よりも奥の方にゆっくりと向かうと、兵隊さんがやって来たので、彼らを駆逐しながらさらに奥の方を目指す。

「シルフィン、この城を見張るようにレッドワイバーン達に命じてくれ。数は100体ほどでいいや。10頭編成で、いつでも攻め込める雰囲気出しながら頼むわ。」

一応、地上からと空中への逃げ場を封じておこう。

『分かったわ、それにしても楽しそうねユウジは。良いことだけどね。』

「ああ、楽しいさ。今から、もっともっと楽しくしてやるよ。ククククっ。今回の事が終われば、のんびりと獣人の大陸を歩きたいもんだな。エルフ、ドワーフ、魔族達とも触れ合ってみたいしな。クリムゾニアスたち以外の龍王だって見てみたい。」

俺は今後の展望をシルフィンに告げる。彼女もきっと、付いて来てくれるだろうしな。

『そうね、そうしましょう。最近のユウジは気付いていないだろうけど酷い顔をしてることが多かったから。友達としては休んでほしいもの。このままだと、貴方壊れちゃいそうだから、心配なのよ。』

シルフィンが俺の事を気遣ってくれている。そのこと自体はありがたいが、幼い彼女にこうまで気遣わせてしまうとは俺もだめだなあ。今では13才くらいの知能があるとはいえ、彼女は生後数カ月しかたっていないような精霊なのだから。

「悪いな、気を遣わせて。でも、お前のおかげで気が楽になった。感謝するよ、俺の可愛い精霊さん♪」

『……う、うん。感謝されたわ。じ、じゃあ私は貴女の指示に従うね。』

あるぇ?なんだこの乙女チックな反応は。いや、これじゃあ俺がロリコンみたいな感じじゃんかよ。それにしても、好奇心旺盛な女の子だったシルフィンも最近は毒舌系の美少女に暮らすチェンジしてたんだな。きっと、アルティリスの影響に違いないな。


さてと、適度に気が抜けたから。


やり過ぎることも無いんじゃないだろうか。いや、無理か。あの屑を見た時には、きっと俺の人間性は蒸発する気がする。人間だったころの感覚で言えば、奴は俺の部屋の中に湧いて出た黒い悪魔に等しいのだから。しかも、これから寝るか、という時間帯にな。


殺さずにはいられないのだ、安眠を確保するためには。


つまり、俺の精神を安定させるためにも、あいつには死すら救済であると思わせるほどの過激で、執拗で、無慈悲な拷問をしなくてはならんだろう。どうしても、どうしてもあいつを傷つけずにはいられないのだから。無傷であることは許されない。かといって、殺してしまうのも納得がいかない。


苦しめ。


悶えろ。


足掻け。


泣き叫べ。


嘆き、喚き、呻き、戦き、絶望してほしいものだ。たっぷりと苦しめてやる。俺の経験した痛みを全てあいつにも経験させてやる。生きながら腕を、脚を食いちぎられる痛みを味わわせてやろう。目玉を啜られる痛みを、内臓を内側から食い破られる痛みを、頭の半分を吹き飛ばされる絶望感を。それらすべての死を克服して手に入れたのが、化物の体だという事実に絶望したものだ。同時に歓喜したけれども。


これで復讐ができるんだ、と。


そういうことなのだ。力を手に入れれば復讐に走るのが当然だ。


だが、俺は考えなければならない。復讐を終えた俺はどうなってしまうのだろうと。今の今万で復讐のために走り続けてきたのだ。そう、この異常な力は全て宰相を不幸な目に遭わせ完全で圧倒的な報復をするため、同時にこの狂った世界で自分が生き残るために練り上げてきたもの。それらすべてを使って復讐した後に俺には何が残るのか。それは大事なことだ。


今まで復讐することに夢中の余りに全くと言っていいくらいに考えてこなかったけれども、それはとても大事なことじゃないだろうか。燃え尽きて真っ白な灰になってしまうのは俺の年齢的にはまずいしな。やりたいことはあるから、大丈夫だろう。それでも、少しは不安に感じる部分はある。


この数年間は、俺にとっては復讐の事しか考えてこなかった日々だったから。体感時間では俺はこの世界に来てから3年程は経っているのだから。やはり、誰かと恋愛した方が良いのかもな。ちょっとは人間らしいことをしないといけない気もするし。人間らしいことをしていたい。


身も心も、怪物になるのは望んではいないのだから。


まあ、心は結構怪物方面に侵食されてきているのは分かっている。以前の俺なら、今のように大量の死体を量産しながら城の中を散歩なんてことはしなかっただろう。そろそろ、あの糞虫がいるあたりが分かってきた。そう、あいつは逃げることができていない。地下の方も、念入りにおもてなしをするために俺はあらかじめ魔法をかけてあるのだ。俺の領域になるようにと、魔法をかけてあるから俺の許可なしには地下に干渉することができない。だから、脱出は不可能なはずだ。


レベルが700オーバーの俺自慢の魔物たちにも、準備運動をするように通達した。そろそろ、俺も映像魔法の多重展開をしなくてはなるまい。その分の魔力など腐るほどあるから問題無いんだけどな。何せ、使う端から回復していくのだから、実質無限にあるものと変わりはないしな。とりあえず、あいつの悪行を、人間大陸すべてに広めることが今回のミッションの最大の目的だ。そして、帝国中の人間達からあいつの一族皆が、憎まれるように仕組んでやるのだ。子々孫々、プレイディス・パストツールという一人の男の大失敗のせいで、自分達の一族は苦しみ続けるのだと理解させてやりたいものだな。そのために、今から行う演技は失敗が許されない。


緊張してきたな。


一人の人間を現時点で破滅させ、そいつの一族の未来ごと握りつぶす。なんて、難しい作戦なんだ。成功すれば、俺のストレスは大幅に減少する。俺は今から、復讐を完遂することになる。あくまで、成功すれば、の話だが。頭に血を昇らせて、あいつを殺してしまえば、それは俺の失敗だ。


なまじ、いつでもあいつを殺せるだけの力があるから、対応には気を遣わなければならない。殺すのは論外、生かさず、殺さずに精神的に徹底的に追い込んで、それでもなお自殺すらさせない。発狂して、狂気の世界に逃げるのは許さない。苦しんで、苦しんで、苦しみ抜いて欲しい。切実な俺の願いだ。これさえ叶えば、別に俺は叶えたい願いなど他には無いのだから。


今のこの力なら、ほとんどの事が実現可能だ。けれども、力があり過ぎるがゆえに、仇敵を見た時に激昂して、殺してしまうかもしれない。<敵>を殺すのは俺にとって呼吸のような行為になってしまっている。呼吸をするのに深く考える人間はそう、多くはないだろう。…スポーツ選手とか武道家などは考えたりするかもしれないけれども。いや、とても大事な行為かもしれないが。


いやいや、話がそれている。違うからな。今俺が考えるのは俺にとって最高な復讐の成功パターンだけだ。


雑念は要らない。これから行う演目に必要なのは冷徹さ、冷静さである。頭に血を昇らせてはならない。それが自分で一番心配なことなのだ。


俺は復讐をすると決めた相手を目の前にして、冷静でいられたことが無いのだ。復讐すると決めた相手を目の前にしたときには、何とも言えない感覚が体を支配するものだから。あの中学の時に集団リンチに遭った時でもそうだった。


自分がスマホを持っていて、それを使えるだけの隙があると気付いた時にはすでに録画を開始していた。そして、家に帰り内容を編集していつでも投稿できるようにした。後は、彼ら5人をつけまわして生活パターンを把握するだけだった。割合、簡単な作業だった。何せ、彼らは一人ではあまり行動したがらないものだったし。1週間ほどで必要なデータは集まったので復讐を開始。


その結果、ネットで大炎上。そうして彼らは皆、転校していったのであった。めでだしめでたし。SNS、ブログ、動画投稿サイト。色々とお世話になったなあ。あの先輩方の絶望したようでいて、こちらを嫌悪しきった表情を、俺は忘れない。


とても、楽しく、幸せだったから。


復讐って楽しいのな。そういうことを改めて知った一軒でもあった。そして、俺のボッチ化が加速したのも中学の時の、この一見が発端である。


やられたことを倍返ししただけなんだけどナ?理解できないナ?


よし、そろそろ落ち着いてきたかもしれない。頭の中でバカなやり取りをしていた甲斐はある。中庭を抜ける間にも100人ほどは殺しただろう。それから城に入る際は、面倒だったので宰相がいると思われる最上階までショートカットした。


跳躍したのだ。


そして、終に、愛しい、愛しい、宰相と再会できた。


殺してやりたいほどに愛おしい相手である。だから、壊しても構わないだろう?俺はお前を殺したいほどに愛しているのだから。ああ、何を考えてるか分からなくなってきた。目の前に最高級のごちそうがあるのに食べてはいけないと言われている気分だ。


宰相と帝王は玉座の間らしき部屋に先程の奴等よりか発揚そうな兵士たちを集めていた。この部屋自体が体育館くらいの広さがあり、兵士たちは200人ほどはいた。彼らには興味が無い。俺をひきつけてやまない、大事な大事な、相手は兵士たちの奥にいた。


顔色は土気色で、そのまま死ぬんじゃないかというくらいに青褪めているのが嬉しいな。帝王らしき、若い人物はうすら笑いを浮かべている。苦労知らずの馬鹿面だから、こいつは状況を理解できていないだけか。こんな奴のせいで、アルティリス、ベルティーオ、ストレイナさんにティルガさんは酷い目に遭わされたのだ。俺の身内に等しい彼らが、だ。


他にも、村を焼かれた者たちが何人もいる。仔を奪われた尾や、親を奪われた子、いくらでも不幸な存在を量産してきた元凶にしては軽薄で薄っぺらい人物だった。そんな人物を引きずり落とす事もせずに、ただ、支え続けただけの馬鹿も一緒にいる。


ああ、もう、我慢ができない。


蹂躙しよう。


だから、俺は彼らというか、奴に向けて話しかけた。


「よう、プレイディス・パストツール。会いたくて会いたくてたまらなかったぞ。お前の事は殺してやりたいほどに求めてやまないから、会いに来たぞ。さあ、どうしてやろうか。


そこのでくの坊も一緒に壊してやるぞ。一人で壊れるのは寂しいだろうからな。いやあ、俺は一人で落とされたのに、お前には道連れまで付けてやるなんてなんて丁寧なんだろう、俺は。一人ぼっちは嫌だろうからなぁ?


おいおい、笑えよ。糞宰相におまけの糞帝王さんよ。


お前らは今からこの世の誰もが経験したくはないであろう痛みを経験させてやるんだからさ。ああ、俺が今まで味わってきた全ての痛みを注ぎ込んだ魔法を受け取ってくれ。俺からの心からのプレゼントだからな。一生懸命に作ったのだから、是非とも受け取ってくれよ?」

そう言って、俺は自分が今の今まで受けてきた〈痛み〉を記録した魔法を帝王と宰相の二人にかけてやった。


その直後に二人はわめき、叫び、涙を流しながら地面を這いずり回り始めて、俺は爆笑した。


腹筋が痛い。でも、これまだまだ始まったばかりなのよね。

「おいおい、しっかりと味わってくれよ。これはまだまだ始まったばかりの宴なんだからさ。」

この時にはすでに周囲の兵士を俺は片付け終えていた。部屋には血肉の塊と骨片が散らばっているだけだった。当たり前だが、宰相さんに帝王さんはそいつらの血肉の上で悶えて踊っているぞ。いやあ、部下たちと体を張ってコミュニケーションをとるとはね。中々、楽しそうでいいじゃない。


ま、まだまだ続かせるけどな。ああ、楽しい。ほんとうに、この時をずっと待っていたのだから。楽しくてしようがない!!


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