第4話 絶望への招待②~祭りの準備編~
そして、見事に扉はかの帝国とつながった。
何せ、一度、鈴木達が来ているので座標はその時にばっちり登録したのだ。だから、一度で帝国の宮殿まで簡単につなげることができた。
「へえ、結構大きいのな。」
俺は宮殿の上空、1000メートルほどの所に扉を開いて下を見ながら呟いた。わざわざ、空にしたのは俺の巨大な体が普通の所には収まらないことと、登場するなら空から降下していきたいという俺のロマン思考のためだ。
巨大かつ凶悪な敵が空から降ってきてそれに対処する、騎士たち。
だが、彼らの手に負える相手ではない。そこで満を持しての勇者たちの登場!
湧き上がる闘志、高揚する士気!!正に一発逆転タイムだ!
というのが人間族の視点だわな。
だが、俺はそれを覆すために、そんな演出をするのだ。途中までは勇者達に良いようにやられて見せて遊んでおく。ぐあーとか、やらーれーたー、とか言っておけば良いか。で、彼らの力量をきっちり把握したら反撃開始だな。
フェザータッチでゆっくり、ねっとり、じっとりと責めて遊んであげないと、な。俺は案外Sっ気が強いのかもしれないなぁ。一旦希望を持たせてからの、掌を返しての絶望にドボーンというのが最高に愉しめそうでわくわくするではないか。いやー、戦意が高揚してきますな。
グリディスート帝国の魔物たちの状況を見ると彼らは各々の判断によって休憩してくれていたようだ。ちゃんと、俺の命令を聞いているらしいのが微笑ましい。命令に逆らっていたら、俺がしつけてやったんだが、それはできそうにもなかった。惜しい。
まあ、そこは命令聞くだけの頭があってよかったと思うことにしようかな。俺の仕掛けもうまく作用しているようで何よりだった。呪いやら汚染やら色々と工夫を重ねたものが全て作動していて、どれにも人類は対応できていなかった。つまり、俺の方が魔法技術は進んでいると解釈してもいいということだ。まあ、帝国以外の国では通用しないだろうが、俺は帝国以外の国は本気で興味が無い。観光に行ってもいい程度の感心はあるが、それ以上の関心はない。
亜人、獣人、魔族たちが戦争するというのなら、俺も一緒に乗っかって戦ってもいい程度の感心や興味しかない。そこの国民が皆殺しにされようとも、俺の良心はちっとも痛まないだろうな。自分の尻くらい自分で拭いてもらいたいものだ。こちらは異世界御用達の介護士とでも、思っているのか。老人介護ではなく、種族としての人類介護と、話が大き過ぎるし重過ぎるけどさ。本当に、何というか、この世界の人間族というのはどうも自分勝手が過ぎると思う。
まあ、俺たちが居た世界の人間もこんなのだったかもしれんが。けれども、表立って神様なんてものが降臨なぞはしていなかったので、そこいらへんはこちらよりも成熟しているのではないだろうか。あまり、甘え過ぎてはいないというか、神様には甘えていられない世界なんだけど。
だが、この世界は難易度がvery easy modeなんだな。神様助けてー、と祈ればバカ女神が助けてくれる。でも、助けるたびに力を削っているはずだよな。だからこそ、人間族がヘイトを集めすぎているせいで、光の女神は弱っているはずなのだ。もしかすると、俺達を召喚し続けたせいかもしれないけどな。
勇者召喚をする際に自分の力と俺たち側の世界を治めている神へ何かの代償を払って勇者となり得る人材をこちら側の世界まで連れて来ているのではないだろうか。そこで、また問題が出てくる。
俺たちは本物なのか、精巧な偽物なのかだ。
これは結構、女神の弱り具合を観察するうえで欠かせないポイントだ。俺達が本物ならば、こちら側の女神は俺達に魔法を使えるようにすることと、こちらの言葉を理解できるようにすることで勇者作成を終えることができるはず。
よって、負担はそれほどでもなく、あまり弱っていることを期待できないだろう。
だが、俺たちの存在が限りなく本物に近い精巧な偽物である場合は、本物の俺達はあちら側の世界に存在し続けている。そして、偽物を作り、俺達の本物が持っている人格、才能などすべてを再現しておかなければならない。作業量が増えるので、負担も増えるのではないだろうか。それも世界を跨いで行う作業だ、どんな代償を要求されるかわからない。
俺個人としては後者であってほしい。それなら、本物の俺達は元居た世界で普通に生きることができているかもしれない。…まあ、俺は普通ではないが、少なくとも体を作り変えるような目には合っていないだろうさ。できるだけ、光の女神には多くの負担がかかっていて、弱っていてほしい。そうすれば、俺がぶちのめそうと思って、ぶちのめせるかもしれないからだ。
俺はあのクソ女神にきちんと復讐したいのだ。
勝手に人の人生を奪っておいて、神様だから許されるとか考えていそうなお花畑女は一度、現実を知るべきだ。人間だって怒るし、悩むし、悲しむのだから。
人間であって、人形ではないのだ。
勇者役を勝手に押し付けておいて、どうして俺達が幸せだと感じるだろうと思ってるんだ、あのクソ女神は。
それにこの世界の人間達にも、俺は文句を言いたい。自分のケツくらい、自分で拭け、と。ママ(光の女神)におんぶにだっこで恥ずかしくないのか、と。この、マザコンどもめということである。人類のマザコンぶりはやばいが、獣人、亜人、魔族たちの堂々たる独立独歩ぶりときたら、どうだろう。
闇の女神は、見守ることを貫いているではないか。だからこそ、彼女が見ている種族は、堂々としている。屑の人間族共とは違って、目に光があるのだ。俺の贔屓目もあるだろうけれど、人間族にはそう未来が無いだろう。
だから、別に、俺が一国くらい滅ぼしてしまっても構わないのではないだろうか?あと国は何か国かあるみたいだし。人類を皆殺しにするわけでもないのだし。
さーて、そろそろ考え事を止めにして地上に降下しようか。
3,2,1,0‼
俺は地上に降下した。俺の体の構成物は限りなく有機的な金属であるため、重さはすさまじいことになっている。結果、どうなるかといえば、地上は大幅に陥没した。いきなりの大音声に何事かと騒ぎまくる、兵士たちをちぎっては投げ、ちぎっては投げる。
文字通り、千切れてしまったけど。
うん、だって、彼らは脆過ぎたんだ。今はスキルを発動していないしなあ。ま、いっか。
俺は血みどろの道を作りながら宮殿の中を進む。俺が進んだ後には臓腑が飛び散り、肉片が散らばり、血液が川を作り始めていた。殺した兵の数は500程度か。殺したというか、千切った、というべきかもしれないな。戦いにすらなっていない、一方的な虐殺だ。丸腰の民間人相手にテロリスト達が機関銃をぶっ放すようなもんだ。
勝負になんてなりはしない。
俺はちゃんと上空から正面玄関らしい入り口を見定めて入っている。だからこそ、宮殿内にいる兵士たちは俺を殺しにやってくる。俺は人が歩くくらいの速さでゆっくりと進む。そして、物凄い速さで死体の山を築いていく。一応、何人殺したのかは頭の片隅でカウントしている。今は2387人に増えたな。わずかな時間でも簡単に人は死ぬもんだ。普通の人間は脆過ぎて相手しづらいな。手加減のスキルを使っても爆散してしまった。…手加減するスキルじゃなかったけな?
俺の疑問に答えてくれたのか、頭にふと説明文みたいなのが浮かぶ。
レベル差が、激しすぎる場合と肉体強度に差があり過ぎる場合はスキルが発動しないことがある。また、スキル使用者の潜在意識もスキルの発動に影響を与えるとも説明が浮かんできた。
ああ、俺はグリディスート帝国の人間は人間と思っていなかった。虫けらと思っていたのだった。羽虫を潰さないようにするほど、俺は慈悲深くもない。それも、害虫だった場合はなおさらだったな。何せ、勝手に縋り付いて、勝手に俺を捨てやがったクソ宰相がいる国なんだからろくでもない国に決まっているじゃないか。
それに俺は何度でも、難度だって繰り返すが自分の人生を狂わせた奴等には容赦などする気は無い。というか、何で勝手に召喚されて自由を奪われた挙句に、一方的な期待に応えなくてはならないのか?
答える奴は、きっとイイ子ちゃんか、英雄願望か承認欲求が高い奴かのどれにかに違いないな。ちなみに、俺は自分勝手な悪い子(笑)であるので、あいつらの言うことなんか聞かないし、復讐と題して国土を消し炭にしたり、水浸しにしてやるのだ。病気も流行らせたしな、人も農作物も家畜も、この国では生きていけない死の大地にしてやろう。
俺が今、やっていることは、普通のゲームでは王道の魔王がやる悪行がほとんどだな。でも、それでいいか。実際、人類側から見れば俺は魔王そのものなんだろうし。
考え事をしつつも羽虫の退治には支障がない。本当に、一撃で血肉と化してしまうからなあ。白の中庭らしき場所が血だらけだな。石畳も敷いてあるし、噴水もあって綺麗な庭園であった、所だな。
お?
なんか、ちょっと強い気が集まっている場所がある。数は30ちょっとか。ようやく勇者となった神崎達、御一行とご対面か。さて、彼のスキルは知っている。順調に伸びていけば、俺を打倒できるかもしれんスキルだが、ここでは封じさせてもらおうか。俺は色々と魔法を研究しているうちに覚えた映像魔法の準備をした。俺の魔力が続く限りは映像をリアルタイムで流せる魔法だ。
どう使うのかといえば、それは実際の現場に立ってからのお楽しみである。絶望と悲嘆をまき散らすために俺はこの魔法を使うのだ。人類達の絶望を喰って、強くなれるし俺が守るべき対象たちの所に人間族が侵攻してくるのを防ぐための策としても使えるので完璧なはずだ。
希望の象徴である、勇者たちを、大陸中の人間が見ることができる環境を作り上げたうえで徹底的に蹂躙してから、負かす。完膚無きにまで叩き潰して、俺に反抗しようなどと危害を抱けないようにして粉砕する。生かさず、殺さず、死なさずに神崎達を有効活用する。俺に刃向かえば、彼らのようになると、刻み付けてやらないといけない。
一応は同郷人であり、同級生であるから、死なせはしないけれどもそれで十分だろう。彼らは俺の友人じゃないからなあ。ただ、顔と名前をぎりぎり知っている程度の薄―い関係だ。それでも、殺すのは後味が悪いから、殺さない。兵士たちは何で、ああも簡単に殺せるのか
と聞かれれば、彼らは俺にとって完全な他人であり、知らない人だからだ。
それに、何といっても、この世界に生きている人たちは俺にとっては排除対象でしかないしな。だって、俺の人生を奪ったんだから。こちらも、彼らの人生を奪うのが悪いことであるはずがない。殴ったら、殴り返されるのが当たり前じゃないか。
歴史も語っている。目には目を、歯には歯を、と。
いい言葉だと思う。さてと、体もほどほどに温まったから勇者たちを蹂躙してこようっと。




