第1話 帝国の終わり、の始まり
この一月、仕事が忙しくろくに更新できませんでした。
夏バテで、絶不調だったことも原因です。今後は自分なりのペースで更新していこうと思います。
どうも、お待たせしました。
拙い物語を書かせてもらいます。完結までお付き合いいただければ、幸いです。
グリディスート帝国の没落が始まっていた。
単純に国土からは人がどんどんと減少し、魔物がすごい勢いで活性化し始めているのだけれども。それをやったのは俺だけどな。
人間にとっては致命的な呪いでも、魔物にとってはただの栄養剤であるのだし。とりあえず、ダンジョン最下層当たりの魔物クラスにまで国内の魔物を育成しようと思っていた。レベルで言えば、700オーバーくらいかな?そのくらいになると、割と知性のようなものが芽生え始めていて、見ていて面白かった。あの、俺と出会って、数回ほどやり合った時の絶望していく様は、たまらない。最初の内は、こいつには勝てそうだという顔から、こいつと出会ったこと自体が間違いだったと気づくまでの表情の変化が言葉は無くても分かるものだった。
本当に性格が歪んでいるなあ、と思いつつも俺は懐かしかった。ただ、これから先はどうしようかと漠然と考えている。やはり、ダンジョン内で暮らすか、龍の世界に居着くかしか選択肢はないよな。何せ、人間世界は俺にとっては、住み良くはないだろうしな。元々が人間嫌いだった俺だが、今回の異世界召喚の一件で、天井知らずの人間嫌いになったし、人間不信にもなった。
勝手に呼び寄せ、勝手に使おうとし、勝手に奪ったのに。
期待外れだという理由だけで、俺を殺そうとしたあの男達は決して許すことはできなかった。だからこそ、俺は覚えている、あの男。
グリディスート帝国の宰相、プレイディス・パストツール。
あの男を含む、王宮の人間だけは殺さないようにと、魔物たちには厳命している。それ以外の一般人などは好きにしてもいいよ、と言ってあるが。何せ、彼らは俺にとって興味の対象外であるし。それに勇者召喚の恩恵を一番受けるのは彼らだ。
自分達はただ、国に住んで税を納めて働いているだけで、勇者にされた俺達が戦争を終わらせて今までよりも平和になった世界で暮らすだけだろうから。ただ乗りだけをしている彼らには、別に慈悲なんて与える必要はないよな。大体、俺はこの世界の理の外にある人間であるはずなのに、どうして彼らのために戦ってやらないといけないのだろうか?むしろ、帰りたいのだが、帰れないという誘拐事件の被害者なんだけどな。
魔物たちに意識を同調して、どのくらい帝国の破壊が進んでいるのかを確認していると7割ほどが破壊完了した感じだった。予定通りだな。
魔物たちのレベルは600オーバーにまで育ったしな。
魔物たちがどうやって成長するのかに興味があったが、敵を殺せば殺すほどに成長する感じだった。そこは俺達勇者と変わりないらしい。だが、魔物らしいところもあって、敵を苦しませて殺せば殺すほどに成長は早まって行くのだ。例えば一般的な兵士をただ殺す場合と、四肢をもぎ取ってからじわじわ嬲り殺す場合だとずいぶんと成長率に差が出る。残虐な行為をすればするほど成長の速度は早まって行くのだった。恐らく、人間の負の感情や苦しみなどをエネルギーとしているからだろう。
俺も敵を殺したが、酷い殺し方をした方が成長は早かった気がするし。魔法で敵を一撃で爆散させて場合と、技の実験がてら嬲り殺しにしたときは、後者の方が成長できた気がする。俺も魔物寄りだよなあ。
実際、グリディスート帝国の人間が死ねば死ぬほどに俺のレベルは上がっていきそうなのだ。体に経験値が貯まってきているのを認識している。それと同時に俺が指揮する魔物たちのレベルも上昇しているのだけれど。今回の件は、魔物たちを指揮するという魔法の下、俺が行っている虐殺である。だから、俺が長期的に魔法を駆使して行っている戦闘ということで、俺に経験値が入っているらしかった。この世界にはレベルの概念あるので妙にゲームチックだ。そこだけは気に入っているが、今の俺の状況は気に入ってはいない。
何度も繰り返すが、俺はこの体になったことを心底怒っているのだ。
それに向き合いたくなかった醜悪な自分の本性と対峙させられているし。俺は自分以外がどうなろうとも、気にかけない人間であることが今回の事で証明されていることに苦虫をかみつぶす思いだった。大体は分かっていても向き合いたくない現実というのもあるのだ。特に自分が、どうでもいいと思った人間を何人も殺しておいてもちっとも良心が痛まないという事に気が付いてしまった時にはちょっとへこんだものだ。体の9割は魔物の物と取り換えてしまったとはいえ、脳だけは俺の本体の物を使っている。
心臓部は、もう既に神龍のものと化していて人間の面影などない。無呼吸であろうと酸素も取り込めるし、心臓が破壊されても半分が無事であれば、即座に再生が始まっているし。たとえ、全て吹き飛ばされても、脳が無事であれば再生は用意だった。さすがに脳と心臓が同時に吹き飛ばされれば時間はかかるが死にはしない。…魂が残っていれば、闇の魔法を使って生き返ることができるからだ。
本当に人間を辞めてしまった。
だから、鈴木の来訪は感謝している。俺を頼って来てくれたことも嬉しかった。クラスメートのほとんどに興味も関心も持っていないけれどあいつだけは友人だと思っていたし。悪友でもあるが、個人的には親友とまで思っているから。あいつがこの世界で快適に暮らせるようにはしてやりたい。それに、俺も身の振り方を考えるべきだしな。
自分の肉体がチートであることにかこつけて好き放題にやらかしまくっているわけだけど。帝国に住む薄汚い人間達を叩き潰し終えたら、今度は俺の所属を巡って、この大陸にある国々が揉めそうな気もするからな。何せ、ほぼ一人で人類最強の国を滅ぼせる男だし。あらゆる種族とも、会話可能であるし、見た目もいい。見た目が良いのは俺のおかげではなく、彼女のおかげであるが。
となると、自国の血に取り入れても悪くないということになるかもしれない。そうなれば、揉めるだろうと思う。だが、俺は易々と獣人や亜人、魔族達の権力者達の思惑に乗るつもりもない。この強さは文字通り俺の努力の結晶なのだから。
血と汗と嘔吐物と体を魔物の物へと取り換え続けたことで人間性を失い続けて得られたものだから、な。
だから、易々と俺の強さをくれてやるわけにはいかない。たとえ、これが俺の自意識過剰や妄想がもたらす考えであったとしてもだ。それだけの強さは持っていると自負している。けれども、グリディスート帝国を滅ぼしてからはどうしようか。俺のやりたいことは終わってしまったようなものだ。
それも悪くはない。
ただ、誰を旅に連れて行こうか?
自慢ではないが、友達などいない。俺は人間達の世界も見てみたかったのだ。矛盾していると分かってはいても、あの糞帝国以外の国に住む人々や風景、文化などを見てみたかった。ただ、それだけか。望みというものは。力を抑え込む術を知らなくてはならない。今の俺は力を垂れ流しにはしていないが、封印してもいない。少しでも、強者の側にいる者であれば、容易く俺の持つ力に勘付けるレベルにしか抑えきれていない。
だから、完全に力を殺し切る訓練をしようか。いざとなれば、サクレーヤ、クリムゾニアスに頼ることも辞さない。俺の関わった、かなり限られた人間関係の中で使えそうな人達には何としてでも、協力してもらわねばならない。とても、傲慢で自分勝手な考え方だが、それも俺だ。
人間だったころからその傾向はあったが、力を手に入れてからは拍車がかかったようにも思う。まあ、いいか。ろくでなしは、どうせ人生の最後までろくでなしだ。
さて、そろそろ、帝国の人間で逃げ出すことに失敗した奴らの8割は殺し終えたか。俺も、出張るとしよう。自分の魔物としての姿をさらけ出しながら、な。
だから、帝国民たちは思い切り楽しんでほしい。
上流階級に所属するものどもの情けない姿をさらしまくってやるから。
無論、国外に向けても、宣伝しないといけない。全ての世界に向けて発信してやりたい。となると、彼女の協力が必要になってくるのだが。
俺は彼女を呼ぶことにした。そして、後世でもいつまでも語り継がれることになる俺の悪行は始められた。




