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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第2章 闇の勇者(笑)になったので、人間族に喧嘩を売りましょう、そうしましょう!
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第14話 子供たちの故郷

俺はアルティリス達を故郷に送ることにした。

問題もあるが、それはベルティーオの故郷に押し付けることにする。何せ、眠ったままのライオンさんの名前を誰も知らなかったのだ。虎耳さん改め、ティルガさんも彼女の名前を知らなかった。ただ、彼女の振る舞いや言葉使いからは気品のような物が感じられたと感想を言っていることから、両親は戦士であり、王族もしくは貴族に関係していたのではないかという意見だった。獣人族の戦士というのは人間族の騎士階級に相当する物らしい。戦士の下の階級が騎士だったりするから、獣人族の文化と人間族の文化は違っているなあと感じた。


将軍という階級も無く、大戦士とか戦士長という言い方をするものらしい。騎士というのは何か、貴族を守る専用という感じみたいだ。戦闘力よりも守備力を誇るものが騎士という階級に行くようだ。攻撃力が高いものが戦士で守備力が高いものが騎士というものらしい。


要するに、戦士は戦ってなんぼで、騎士は守ってなんぼという事だな。


攻撃に特化している戦士だが、耐えて守ることは苦手とするものも多いのだろう。逆に騎士は攻め込むことには特化していなくとも、守ることに特化しているのだろう。ヤマアラシとかハリネズミの獣人がいたら強そうだな。戦士としても騎士としても。


「もう、持ち忘れた荷物とかはないか?」

俺は各自に問いかけている。ダンジョンハウスの中はかなり快適だから、自然と私物が増えて行ったのだ。ダンジョンの中で物を拾うし、宝箱を落とす魔物だっている。そんな魔物を狩り続けていたのだから自然と子供達やティルガさんは荷物が増えていた。


特にベルティーオなんか、身の丈ほどある斧を手に入れている。2メトル50セルチもある斧を振り回せるのは彼のような生まれついて腕力が強い者か、俺のような規格外の化物だけだろう。斧というには大き過ぎるが、形状は間違いなく斧である。重さはと言うと、とんでもなくて200キローグである。そんなものを10才の少年が振り回すのだから、彼を平気な顔をして受け入れていたアルティリスはかなりの大物である。


かつて力の制御ができなかった頃のベルティーオの怪力を怖がる大人たちへ向けて彼女が言った言葉は強烈だった。


『意気地がない大人たちね。情けない、ベルティーオは優しいんだから誰かれ構わず傷つけたりはしないのにね。』


と。


幼女でありながら既に母性的なものを手に入れている少女だった。と言うか、ベルティーオが尻に敷かれる未来しか浮かばないが、本人にとっては幸せなんじゃないだろうか?


まあ、少年少女の恋愛事情は良いとして、今からは移動である。シルフィンに頼み、風の精霊たちを護衛に回してもらうことにした。後、俺の方からワイバーンを呼び出して護衛につけた。闇龍王という地位は、着いたばかりでも中位の〈龍〉くらいまでは問答無用で命令できてしまうらしい。〈竜〉であれば、上位でも可能だそうだ。龍と竜は強さが違うのだ。過ごした年月で呼び名が変わるのだとか。生まれてから、2000年たたないと〈龍〉と名乗ることは許されないらしい。1000年程度であれば生まれた力を以てすれば生きていられるそうだ。だが、2000年となると生まれ持った力以上に努力が必要になる。


1000年生きた竜の血肉を自分の物にすれば、竜と同じ体になれるという伝説があるからだ。となると、人間種族がこぞって竜に襲い掛かるのだ。集団で狩り殺しても竜の肉体になれるという噂だから、集団で1000年を生きた竜を狩りに来る。となると竜の方だって鍛えないわけにはいかないのだ。そうでないと狩られて喰われてしまうからだ。ただし、竜から話を聞く限り、肉体の強度は増し魔力も増えるが人間族の寿命を大きく逸脱するほどは、長生きはできないらしい。せいぜい、長くて200年が限界らしい。


この世界での平均寿命は60歳くらいだから常人の3倍ほど長生きできるという事だ。医療もそこそこ発展しているから、平均寿命は高いと思っていたが、魔法があるゆえに暴発して死ぬ人間や、魔法によって殺される人間も少なくないらしい。それに魔物も出没する世界だから、案外人間族は長生きできていないようだ。


獣人族、亜人とされる民族、魔族は平均寿命がとても高い。だが、繁殖力は低いのだ。個々の命が長生きするため、繁殖適齢期が長いためだそうである。要は若い時期が長いらしかった。それに、子供は人間と比べるとできにくい体質らしかった。だから、人間が最も多い世界になっているのだろうが。


「ユウジは過保護ね。」

シルフィンに言われてしまった。

「いや、あんな変態どもがいるような場所だぞ。用心するに越したことは無いだろう。変態を一人見たら30人はいると思っていないとな。」

俺は変態達が再び襲ってくることも視野に入れているのだ。それに変態達は誰かに売る目的で商売をしていただろうから。黒幕がいるはず得ある。もう、間違いなく。

「でもねえ、レッドワイバーン2体に私達風の精霊が付いているのよ?正直、過剰戦力と言っても言い過ぎでないくらいね。」

意外と毒舌なシルフィンだが、彼女が言っていることは理屈が通っている。別にシルフィンたちがいれば護衛はそれだけでも十分だった。けれども、彼らは人間には見ることができないので、抑止力にはなりえない。


だから、俺は抑止力になるレッドワイバーンを分かり易い脅威として配置しているのだ。基本的に犯罪者はろくでなしで金が無い奴が多いイメージがある。


だったら、犯罪で得られる利益よりも、命がかかっていると理解させた方が後の事は円滑に事を運ぶことができる。レッドワイバーンは魔物の中でも上級に属する亜龍種だから。ただのワイバーンとは格が違うのだ。ただのワイバーンは亜竜にすぎないのだから、レッドワイバーンのやばさは良く分かるはずだ。全てにおいてレッドワイバーンはワイバーンを上回る上位種である。完全なる上位互換種だから、レベルは最低でも300だ。だが、アルティリスや他の獣人の子達に付けているレッドワイバーンは俺自らが厳選した、凶悪な奴等である。俺が素質を見込み、自ら鍛えた精鋭達だ。よって、彼らのレベルは500以上であり、そこいらの軍隊なら一頭でも殲滅できる。具体的には相手がレベル200程度の人間ならば1万人いても殲滅が可能だ。ブレス一発で100人は固い。焼死体だらけになるだろうが、まあ、大地の肥やしになってくれるのではないか。とりあえず、彼らの故郷に近付いた時には、距離を話して監視するように言ってあるから大丈夫だ。彼らには風の精霊たちを付けており、常に連絡が取れるようになっているのだから。


「ユウジは本当、一旦手元に抱え込んだら、とことん甘いわねー。」

シルフィンが呆れ顔で俺に言ってきた。まあ、どことなく褒めてくれてもいるが、半分はからかいだろうな。

「ああ。俺が保護した以上彼らは無事に家まで帰ってもらうんだ。そして、苦しかった時の事を嫌な思い出だったね、と語れるくらいになるまで精神的に回復してもらう。無論、その役目は保護者の皆様にお任せだ!俺には他人を励ますコミュ力などないのだからな。」

無駄に決めて言ってみると、シルフィンが完全に呆れた顔をしていた。事実なんだがなあ、ただのこの世で最も分かり易い事実を言っただけで、なぜ馬鹿を見るような目で見られなければならないのか?

「もう少し、自分に自信を持ったらどうなの?私を独立させ、力まで与えてくれた貴方が人と上手く関われない程度の事を気にしてどうするの?私達精霊はそんなことどうでもいいの。だって、私は貴女の自由に憧れ、焦がれる魂に興味を持ったのだから。」

「なあ、俺の人間性なんてどうでもいいってことか?それもまた、違う気がするんだがな。」

「でも私達精霊にとって大事なのは魂の色や輝きだもの。曲げる気は無いわよ?貴方の価値は人とうまく関われない程度の事で落ちるものじゃないんだから、もっと自信を持ちなさいね。私の契約者さん。」

年下にここまで言われると傷つくなあ。まあ、いいや。気にしないで良いってのなら自重なく振舞うことにしよう。うん、子供達には健やかに、穏やかに、笑って過ごせる日々を送らせてやりたい。


となるとどうするか。


答えは決まっている。


人間たちの勢力下に攻め込むのだ。既に誘拐組織に所属していた人間たちが何処の国、出身なのかはわかっているのだから。


グリディスート帝国


それが黒幕と思しき人間が所属している国の名前だった。亡霊たちに訊問させて、あの世に送ってやった奴らが吐いた情報だ。俺の攻撃で死んだ人間たちは、地縛霊となって残っていたから助かった。情報が引き出しやすかった。情報を吐かなければ、ゾンビにしてやろうかという脅しが効いたらしい。実際、俺はその程度の事は軽くできる。エンシェントゾンビを喰っているのだから、死霊魔術のまねごとくらいはできる。闇という魔法属性はそういうことが、できてしまうからこそ嫌われ怖れられているのだと理解しているのだ。今なら、あのクソ野郎が俺を放り出したのも理解はできる。ただ、勝手に呼び出しておいて、勝手に期待して、勝手に放り出すというのはいかがなものかと思うからこそ、復讐してやりたくなるのだ。


まあ、俺を呼び出したのが、帝国であれば、今回の件は一石二鳥なんだが、自分を呼び出した国の事は未だにわかってないんだよな。あいつらも勇者召喚の事は知らなかったしな。どうも、あいつらは組織では下っ端で現地調達の実担当しているらしい。受け渡しは、あいつらよりも上の人間責任を持って人類側の大陸まで送り届けるらしい。途中でつまみ食いなんかされて商品価値を落とされても困るからだそうだ。


そりゃあ、あの基地にいた程度の知性レベルではそう言う事をしそうな奴らはいくらでもいただろうしな。とりあえず、子供たちを無事に送り届けたら俺は行動を開始しよう。既に、アルティリス以外の少女はティルガさんが責任を持って保護しながら送って行ってくれている。白い犬耳の少女改め、クレスタ・ホワルートと銀色の狼身少女、シャルナ・ウィンディーシアだ。彼女は大きな家のお嬢様であり、外国に勤めに出ている姉がいるらしい。一番俺に怯えていた子だったから、仲良くなるまで時間がかかった。なぜ俺を怖がったのかを聞いてみると、どうも彼女は俺が隠している力を理解できてしまったからだそうだ。


それは怖かったろうな。なんせ紅蓮龍王をぶちのめす力の持ち主だしなあ。


彼女達二人はティルガさんが守ってくれるし、目的地も一緒だから3人そろって帰っていてもらった。場所は王都である。ウィンディーシア家の大きさがうかがわれる話である。ティルガさんは冒険者をやっているのだそうで、そういう貴族事情にも明るいみたいだった。クレスタはほわほわした天然系の犬耳少女だった。ちなみに商人の家のお嬢様らしい。シャルナとは顔見知りだったそうで、さらわれた後もお互いに恐怖をこらえながら慰め合っていたそうである。その中でもリーダー格だったアルティリスは凄い少女である。際立ったリーダー性を発揮していた。彼女が王族であれば、獣人族の歴史もまた、変わっていたのではないだろうかと思わせる程度には大器だった。


さて、彼女達は道半ばだろうが俺達はもう着いてしまったな。未だ眠ったままのライオンさんは俺が自ら作った車椅子の上で眠っている。手押し車と言ってもいいかもしれない。とにかく、車椅子を目指そうとしてできたものだが、あれ程の精巧なものは作れなかった。だから、簡単な車椅子のようなもので彼女を運んでいる。そうして、いくつかの山道を越えて、森の奥深くまでやって来た。当然、ベルティーオたちは強化済みだ。早いところ、事件を解決したいので急いでも、大丈夫なように強化したのだ。


今からが大変なんだけど。両親達になんて説明しよう。俺のコミュ力が試されている…。


ま、頑張りますよ。


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