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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第2章 闇の勇者(笑)になったので、人間族に喧嘩を売りましょう、そうしましょう!
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第2話 大海龍との遭遇

思った以上に簡単だった船を運転しながら俺は流れ去って行く海の景色を楽しんでいた。そろそろ変化の魔法を解いて良いころだろう。

「そろそろ、魔法解除するぞ。」

「ああ。そうだ、ユウジ。あの大陸に行くときは私のように龍の姿と人の姿を残した姿になっておけ。龍人や獣人などでないと今のあの大陸は移動しづらいことになっている。人間は嫌われているからな」

もっともな話だと俺は思う。何せ、自分達を勝手に連れ出し、奴隷にして、こき使うのがこの世界の通常の人類らしいのだから呆れて言葉も出なくなる。人権って何だっけ?


そんなレベルでこの世界は酷い。そもそも俺を勝手に召喚して、勝手に捨ててしまうのだからこの世界の住人は嫌いだ。滅ぼしてもいいんじゃないか?いや、滅ぼすべきじゃね?うん、滅ぼすかぁ。


しかしまあ、人間にあったのはごく一部だけだから滅ぼすのは早計かもしれないな。腐ってるのは上層部と決まっている。いつの時代世界が変わっても権力を持った人間は基本的に産業廃棄物並にろくな人間でないことが多いのだ。国民の血税をむさぼり、女を侍らし、会社からは金をもらってニヤニヤしているのさ。それが俺の知るごく一般的な政治家という、いや政治屋というイキモノの姿である。俺は権力者が大嫌いなのだ。この世界に会社があるかは知らんが、商会くらいはありそうだ。だってファンタジーだもの。


いろんな角度から考えても、俺を召喚した国を許すことはしない。


獣人たちや魔族たち、他の亜人と言われている連中全てに協力して人間族を追い詰めてやるのだ。


自分がやられて嫌なことは、他人にしてはいけない。


殴ったら殴り返されるという当然で常識的すぎて何も言えないことを俺はこの世界の人間に教えなければならない。要するに、因果応報という奴だ。


悪は滅びる。ついでに人が何割かは滅びる。


自分の世界でないため、俺にとってはこの世界の人の命は軽い。親類、知人、友人、大事な人などが一切いない世界だ。だから、俺は今のこの化物そのものの力を振るうことに躊躇いはない。多分島の一つや二つ程度簡単にパンチだけで壊せるよねー。


「確かに嫌われない方がおかしいからな、了解だよ。それにしても龍人という奴か。格好いいね、それ。」

俺は暢気にそういうとクリムゾニアスが呆れた目線でこちらを見ていた。


「なんだ?」

「お前は本当、こちらの世界では龍に生まれてしかるべき男だと思ってな。惜しいものだが、結果として私達の側にいてくれることには感謝している。私はお前とはもう一度戦えと言われても御免だからな。」

クリムゾニアスは本当に嫌そうにしている。俺だって嫌だぞ?

「俺も御免だね。貴方は認識していないかもしれないがね、女神の右腕なんて反則ぶら下げた貴方を倒すのにどれだけ苦労したと持ってるんだ?無限回復って嫌だわあ。」

「お前が言うな。似たようなスキルを持っているだろうが。まあ、お互いにお互いが天敵というか苦手になってるのだな。」

苦笑しながらクリムゾニアスは言う。

「まあね。さてと、この調子だと向こうの大陸につくのは昼過ぎたくらいになりそうだな。けっこう、距離があるなあ。」

スキルを使い、距離を測ると153キロと表示されている。この船が50キロくらいで走っているから後3時間ほどだろうか?俺の腹時計は今10時35分を指している。今日は朝8時から蹂躙していたから腹が減っているのだ。朝ご飯をダンジョンハウスの中で食べたが、すでに消化しきっている。


さて、今からは暇かと思っていたが、海面が急激な盛り上がりを見せた。何やらすごく大きなものが出てくるような気配だ。それも、クリムゾニアスと同じくらいに非強い生命力を持った存在が現れようとしているのを感じる。

「まさか、あいつか?」

知っているかのように話すクリムゾニアス。知り合いが出てくるかのような気軽な様子であるが、かなりサイズが大きい知り合いだなと思う。頭のサイズがおそらく3メートル近くあるんではなかろうか?うんありえないな。


そしてついに大きな日本の龍を思い起こさせるような海蛇的な存在が現れる。角はあるし、まああれだ、有名RPGのリヴァイアサン的な見かけだ。


「久しいな紅の龍王。貴様、あの女神に封印されたのではなかったか?」

流暢な人語で話しかけてくる。本当、この世界の幻獣ってみんな喋れるのか?知能も高そうだし、長生きもしていそうだし。良く、人類は生きてこれたなあと妙な関心をする。あまり人間に興味が無いのかもしれないが。そうでなければ、この世界はとっくの昔に幻獣たちに支配されているはずだ。

「ああ、私を解放してくれた者のおかげで外に出ている。そこにいるユウジが私を倒して解放してくれたのだ。」

クリムゾニアスが俺を見ながら説明する。

「ほう?確かにこの小僧からは計り知れん力を感じるが。他ならぬ貴様が言う事だ、本当だろうな。だが、我も小僧には興味がある。おい、小僧、少し我に力を示してみろ。」

俺は海龍を見ながら言う。

「分かった。じゃあ、クリムゾニアスを倒した時と同じくらいで良いか?」

「舐めるな。我は全てを示せという意味で言った。小僧の力を実際に見なければ納得がいかん。いくらそこの紅の龍王が言っていたとしてもな。それに我は退屈だしなあ。」

実際暇そうにあくびをしてみせる大海龍。


じゃあ、力を示すとしようかね?力を発揮すべく封印を解除する。さっきまでは挽肉を生産しないために押さえつけていたものを解放するのだから大変気分が良い。

「ああ、これが俺の本来の力だよなぁ。…う、ぅん。」

伸びをしてみる。関節がポキポキ鳴った。肩を回し、腰を回し、首を回して大海龍を見る。俺の体はかなり変化しているのが分かった。


まずは髪だ。以前は、銀髪だったが今は違う。膝の裏まであるのは依然と変わらないが毛先が紅くなっている。銀からオレンジ、オレンジから紅へと変わっている。グラデーション付とはまめなことだ。それに瞳の色だ。以前はただの紅だった。今は紅ではなく、金色になっている。何があった。


あ、女神の右腕にクリムゾニアスの力を丸ごと取り込んだじゃないですかー。


そして、顔だ。


もう取り返しがつかないくらいに女顔だ、体つきも女性っぽい。ははは、股間には相棒が鎮座しているから安心だ。サイズが…大きくなっているのが不思議だが。ああ、大砲クラスだな。あれか、生物としての頂点近くまで行っちまったのか?それとも、肉体を自由に作り変えられるからこそ、以前の息子よりも5割り増しくらいにしちまったのか?後者だけか、はたまた両方か?


最後に魔力だ。後、神力らしきもの俺の体から出ている。その出力がすごいことすごいこと。人間相手にはとてもじゃないが戦えない。消滅させてしまう。


「クククク!クアーッハハハハハっ!!」

大海龍が驚いたように呆れたように笑いだした。

「すまないな、我の眼は曇り切っていたようだ。詫びに我から名乗ろうではないか。我が名は蒼海龍王。エタナウォーディンだ。そこのクリムゾニアスとは焔と水という違いはあれど同輩だ。」

目の前の大海龍改めエタナウォーディンが名乗ってくれる。

「俺はサトウユウジだ。今は魔人で、光の女神をぶちのめす会の会長をやっている。副会長はクリムゾニアスだ。今のところ、メンバーは二人だけど今後は増えていく予定だよ。随時募集しているから、興味があるなら入ってくれ。」

営業スマイルで言ってみた。


「クククッ。お前はつくづく我を楽しませてくれるな。良いだろう、我も加入しようではないか。他の海龍たちにも話を広げておこう。後は人魚達にも話を通しておこうではないか。そうすれば、お前は海を始めとして水の中に生きるほぼ全ての種族の力を借りることができる。何せ、我は現在、全ての水の中で生きる生物たちの頂点なのだからな。」

エタナウォーディンは楽しそうに言った。やっぱり光の女神は嫌われているんだな。

「ありがとう。何か水の事で相談があったらすぐに相談するよ。そういえば、雨を降らせることってできるか?川を氾濫させることでもいいけど。」

俺は気になっていることを尋ねる。これができればはっきり言って俺の戦略はかなり変わってくる。

「造作もない。必要があれば我が精霊たちに伝えておくぞ。」

「今すぐじゃなくていい。でも、できるのならとても助かるんだ。これで人間たちを追い詰めることができる。価値のない欲にまみれた自分勝手な戦争を続けている馬鹿な国を地獄に叩き落とせるぜ?」

ニヤリとして言った。自分なりに決めた顔だったが、その表情を見て目の前の大海龍は改めて笑い声を上げた。俺の提案は非常にお気に召したらしい。こうして俺は水の頂点に立ち存在の助力を取り付けることにも成功した。


火、水と来れば次は何だろうな?それも楽しみだ。俺は船の上でエタナウォーディンに別れを告げた。結構長く話していたな。色々と話を聞けて良かったと思っている。この世界にはまだまだ知らないことが溢れているのだ。できれば、海の中の散歩をしたかったが、今はクリムゾニアスの娘さんに、父親を合わせてあげるのが先だろうよ。


人として、友として。


…生きている年月やら種族の事は気にしたら負けだ。


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