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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第1章 勇者なはずが、ポイ捨てされました…どうしてくれようか?
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第30話 異郷の地にて、思う事

視点が変わります。後、第1章はこれで終わりです。続く第2章をなるべく早くかければいいと思っています。


筆者の拙い文をここまで読んでくださりありがとうございます!

これからもお付き合いしていただけると嬉しく思います。

「あの、スズキ様?お体の具合でも悪いのですか?」


話しかけてくる相手の事を少し置いておいて、状況整理をしておこうと思う。


召喚されてから半年以上が経ってから、やっと俺は今の自分が置かれている現実を直視してもパニックに陥ることは無くなってきていた。


勇者だと見知らぬ偉そうな人達からもてはやされ、訳の分からないうちに戦闘訓練を来る日も来る日も受けさせられた。ただし、佐藤は一緒ではなかった。中学に入ったころからの腐れ縁で、お互いに口が悪く、性格も悪い者同士で馬があった。あいつはアニメ、ラノベ、ゲームと趣味が幅広かったので俺とも話があった。


まあ、俺は恋愛シミュレーションが好きで、あいつは戦略系シミュレーションが好きだったのだけど。互いの興味のある分野のゲームも少しずつは知っている程度には互いの趣味を分かりあっていた。そんなあいつは召喚された日からずっと、別任務だったり、特別訓練だったりで今まで会えていない。まあ、異世界召喚の悪い方のテンプレから考えると、この城にはあいつはいないのではないかと思うのだ。この世界にとってあいつは都合の悪い力を持っていて、それが原因で追い出されたのではないかと俺は思っている。


そうでなければ半年以上、同級生である俺と顔を合わさないということも無いはずだしな。


そして、俺は話し相手を失っているからつまらない。別にあいつみたくボッチ気味ではないんだ。俺は適度に愛想をまきつつ、クラスから浮かない程度に振舞う程度にはコミュ力があるつもりだ。媚び過ぎず、主張し過ぎずと適度な距離をクラスメートたちからとっておかなければならない。そうでなければ、見てくれがそこまでよろしくない俺にとってこのクラスは多少居づらいのだ。


身長165セルチ、体重65キローグ


こっちの世界風の発音で俺の身長と体重を表すとこうなる。まあ、なんだ、ぽっちゃりさんという体格ってところだな。これ以上、太るとデブの烙印を押される一歩手前で踏みとどまっている感じだ。


だが、そんな俺にもメイドさんが仕えてくれているという良く分からない現実がある。


現実逃避をしても始まらないが、彼女が俺に仕え始めてからはもう、半年ほどたった。非モテの俺にとっては美少女がいつも身近にいるというのは嬉しい反面ストレスにもなる。慣れていないのだ。だから、いつも会話には困っている。彼女はそんなことを気にしていないけれども、俺が気になる。会話のない空間には耐えられません。気まずいし、俺はそこらへんはチキンハートだ。


そもそも、事の発端は一番最初に俺達に事情説明した宰相さんが言ってきたことだ。彼の名前はプレイディス・パストツールという。パストツール家というのは代々宰相を輩出してきた名家だそうだ。貴族様という奴ですな。そんな偉い貴族曰く、勇者様には雑用係が必要であるとのこと。という訳で、男には見目麗しい美少女か美女のメイドさん、女にはイケメン執事が付くことになりましたとさ。


まあ、俺の事を様付で呼ぶ彼女がメイドさんである。


銀色の髪に、青い瞳、白い肌。そして人ならざる者の証としてケモ耳と尻尾が付いている。うん、冗談半分でケモ耳娘が良いです、と書いたら希望が叶ってしまったんだなぁ。更に悪いことに、この子は聖勇国という外国から来た少女である。


外見はまだ、幼い少女であり、身長は150セルチ近くくらいか?


少女というか、幼女気味な子である。


だから、俺は彼女がメイドとして付くことになった瞬間からクラスメート達から〈ロリコン〉というありがたくない称号をいただくことになった。いや、俺は同年代か少し年上という希望を出したんだ。お姉さんのケモ耳っていいよね?妖艶な感じのメイドさんが来ると俺は期待に胸を膨らませていたんだよ。


だが、現実は幼女気味の美少女メイドさん爆誕である。


…性癖的にはストライクを外してる。あと2,3年たってから来て欲しかった。そうすれば、俺もロリコンと言われなかったのに。宰相さんからは謝られた。どうも、俺好みのメイドさんは他の奴に仕えているからだ。そいつは勇者としての能力が俺よりも高い奴だった。世の中は非情であり、実力的には相手にかなわないので俺は諦めた。まあ、宰相さんが事情説明してくれたおかげで、俺はロリコン(ガチ)という評価から何とか逃れることができた。説明サンクスと思ったのは本音だ。口には出さないけれども。


まあ、あの子も悪い子ではないのだけれども。由緒正しい家の子らしいし。だから、何かあれば俺はすぐさま国際指名手配になりそうで怖いのです。


「ああ、考え事してたよ。ごめん、ごめん。大丈夫、俺は今日も元気だから。」

俺は少女にきちんと返事をする。でないと、この子はまじめだからすぐに俺を医者の元へ連れて行こうとするのだから。少女、シャンレイ・ウィンディーシアというメイドさんはな。

「大丈夫なのはわかりましたが、邪まな視線を感じますよ。」

彼女は女性であるうえに、獣の感性も備えている。俺が考えていたことを非難するかのようにジト目でこちらを見ていた。なぜ、分かる?


「あー、もう少しだけ大きくなってくれないかなって思ってたことかい?」

俺は彼女の頭頂部と、どことは言わないが身体全体をすうっと撫でるように視線を一巡させた。体つきは未だに少女のそれであるから、ロリコンは歓喜するんだろうが俺は歓喜できないんだよ。


おっぱいは大きい方が好きなんです!!おっぱい、おっぱーい!!


あぐゅ!?


「殴りますよ?」

良い笑顔でシャンレイは言ってくる。だいぶ慣れたものだ。ここまでに成長させるには苦労したものだ。何度も、もっと肩の力を抜いてくれと懇願した甲斐はある。同じ歳の少女に懇願するというのも変な感じだけれど。ちっこいけれど、彼女は俺と同い年なんだよな。あ、目つきが怖くなった。ちっこいという俺の思念に反応しているのであろう。


「もう殴ってるんじゃないか…。痛くないけどびっくりはするから、やめてくれない?俺、小さい女の子に殴られて喜ぶ性癖なんてないんだからね。ただでさえ、ロリコン疑惑持たれてんのに。」

そう、すべての疑惑が解けたわけでないのだ。俺はケモ耳が好きであるから、メイドを彼女から変えなかった。だって、ケモ耳だぜ?銀髪の狼風のケモ耳美少女だぜ?変えられないよね☆


俺の頭は腐っていた。うん、知ってた。


「スズキ様は本当、良く分からない人ですよね。他の勇者様たちはずいぶん違いますよ。」

シャンレイは呆れたように言う。

「どう違うんだよ?」

というか、何が違うんだろう?俺はなるべく自然に溶け込むように工夫して日常を過ごしているというのに。外部の人間であるシャンレイが見てわかるほど、俺は浮いているのだろうか?


「スズキ様は未だに私に手を出す様子がありません。ですが、すでにお手付きとなった方は何人かいるのですよ。」


「マジでか!?」

ナニをしてるんだか、ナニを。いや、まあ俺以外の美女メイドさんには手を出すのは分からんでもないが。良く、そんな体力残ってたな。毎日の特訓で俺の体は心も共にぼろっぼろでそんな余裕はない。むしろ暇があれば、寝ておきたい。それか美味いものを喰っていたい。


「はい。覚えたてのゴブリンのように貪られて参ったと話されているのを私は聞きましたよ?」

「そいつらの名前を言ってみてくれるか?」

俺はシャンレイから名前を聞いて納得した。顔、性格共に残念だが性欲だけは人に負けていない奴等だ。ほぼ運動部の奴らで構成されていたが、一部にむっつりスケベが混じっていた。

「んで、お手付きになるとなんか良いことでもあるのか?勇者の子供以外得られるものも狙えるものも無いけどさ。マジで狙ってるのか?」

「はい。もともと、私達は家の意向を受けてきていますし。そういうものだと、教わっていますよ。勇者様のメイドに付くということは。まあ、私は期待していませんでしたしまさか、の展開でしたが。」

彼女は悲しげに自分の体を見下ろしながら言う。きっと、視界がおぱーいによって遮られること無く爪先まではっきりと見えるあたりに絶望があるんだろうな。大丈夫、ちょっとはあるんだから病むことは無いさ。俺は温かい目つきでシャンレイを見ていた。耳が少しへにょんと下に下がっており、尻尾も元気がなく下がっているあたりが萌える。無表情気味の顔も心なしか、寂しそうである。うむ、可愛い。


「ぐえ!?」


「目線がイラつきますよね、スズキ様は。」

ちっぱいでも良いじゃない、水平線じゃあないんだし。

「大丈夫だよ、俺はちっぱいからでっぱいまであらゆるぱいを愛せる男だから。」

無駄にどや顔で決めておく。


ドヤぁ。


「…はあ、もういいですよ。スズキ様が変態な割にはヘタレなのは良く知っていますし。」

彼女は言葉で俺を殺しに来たようだ。いじり過ぎてしまったかもしれないが、反省なんてしない。後悔はした。俺はMじゃないんだから。幼女気味の少女に罵られてハアハアしないし。むしろ、心が痛いよ。

「だって、元の世界には帰りたいし。クラスの奴以外の友達も皆置いてきちまったからさ。家族も親戚も居ないしな、ここ。シャンレイだって全く知らない土地に訳が分からないまま放り出されたら何とかして帰りたいと思うだろ?」

「それはそうですけど、ね。」

「来たくて来たわけじゃないしな。とにかく、魔王を倒してからはさっさと元の世界に帰るんだよ、俺は。だから、その、あれだ。深い関係になった女の子がいると大変だし。俺の世界に連れて行ったら、今度はその子が一人ぼっちになっちゃうじゃん。自分がされて嫌なことを俺は女の子にしたくないよ。男はどうでもいいし、そもそも連れてなんか行かんし。」

俺はこうして、シャンレイ相手に愚痴を言う事で何とか心をつないでいる。


「まあ、何とも言えないですね。私は勇者様たちに縋り付いている身ですから。」

気まずそうに彼女は言った。


完全に失敗した。


今日は愚痴り過ぎだ。これでは彼女を責めているみたいじゃないか。


「悪い。君を悪く言うつもりじゃないんだ。あ、でもな、ここの暮らしは君のおかげで寂しくないよ。いつも助かってる、本当だぞ?話し相手がいつもいてくれるのはありがたいんだから。」

きちんとフォローしておかないとな。彼女の事は嫌いじゃないんだし。そういえば少し中庭辺りが兵隊さんが走り回って慌ただしいけど、どうしたんだろうね?


「……良いですよ、別に。気にしませんから。寂しいのは分かってますし、私じゃご家族の代わりには慣れませんし。でもですね、あの、弱音を吐いてくれるのはこちらも信頼されているようで嬉しいです。貴方はヘタレなんですから、いつでも弱音を吐いていいんですよ。そのくらいは良い女として聞き流してあげます。」

シャンレイは良い笑顔で言ってきた。それでも尻尾が上機嫌にゆらゆらしているのを見ると俺が言った言葉も悪いものではなかったようだ。ほっとするよ、本当。彼女に嫌われたら確実に鬱になるし。


「ああ、そうする。本当いつもありがとうなシャンレイ!」

「どういたしまして、私は貴方のメイドですから。」


こんな感じで俺の日常は過ぎていっている。佐藤は元気かねぇ?


こんな感じで鈴木は異郷の地をそれなりに楽しく過ごしている。唯志がこの事を知れば「リア充死すべし、慈悲は無い!」と言って飛びかかり何発か殴っているところだろう。それで水には流すはずだ。


彼の旅の相棒は屈強な赤の龍王である。


潤いなどは無い。これから先もむさくるしいままなのかはまだ誰も知らない。異郷の地も少しずつ自体が動き出している。人も亜人も皆それぞれが日々を生きているのだから物事が動くのは当たり前なのだが。


ただ、唯志と鈴木が出会うのはもう少し先の事になりそうなのは確かである。お互いの変化に驚くことになるであろうその出会いは未だに遠い。


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