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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第1章 勇者なはずが、ポイ捨てされました…どうしてくれようか?
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第21話 ラスボス戦へ向けて

俺は魔物を狩っている最中に気が付いた。


‐界蝕‐使って、片づけてしまおう、と。


真面目に群れごと爆殺したり、群れごと影に放り込んだりしているのが馬鹿らしくなってきたのだった。あれを使わなかったのは消費魔力のせいでしばらく俺が使い物にならなくなるからだが、もう作業をするのに飽きてきていた。むしろ、しばらくは寝て暮らすのも悪くはない。時の流れはどっかの女神のおかげで外の5分の1程度に抑えられているのだから。何日をここで過ごしたかはわからないが、1000日は間違いなく過ごしていない。外ではまだ時間がたっていても3か月程度ではないだろうか?


まあ、時間はどうでもいい。


とりあえず今からやることはセーフハウスに引き返して料理をたくさん準備して食っては寝てを繰り返すことだけである。家についた俺は料理を作り始めた。すぐに食べられそうなものから中心に作り、―界蝕―を発動させる。


すると、体の中からごっそりと魔力が持って行かれる感触がある。このハイペースで魔力を持って行かれれば、一週間ほどはまともな思考能力が戻ってこないだろう。というか、少し前までの俺ならこのダンジョンの階層丸ごとに対しては‐界蝕‐を使えなかったと思う。だが、魔物の数を半分ほどにまで減らしたいまであれば可能だ。


そういう訳であとはご飯を食べ続けるだけの、レッツニートタイムである。俺は働き(戦い)過ぎているのだ。だから、休まないといけない。復讐とかに考えを浸し過ぎていると闇に飲み込まれてしまいそうにあるしな。力に溺れるのは避けておきたい。力を使いこなしてこそ、力を持っていると言えるのであって、力に振り回されるようでは力を持っているとは言えない。むしろ力に溺れているとしか言いようがない。それは避けておこう。


力に飲み込まれるなんてあまりにも惨めだ。


ただでさえ、化物だ何だと言われているのだから。力をkきちんと使いこなしているところを見せていきたい。地上では一部の隙も無い武人として生きていきたいのだから。無様な姿はここでさらすだけで十分すぎるほどだ。変な話ここの中では無様な姿しかさらしていないのだ。そして、その無様な姿をさらし続けた俺に闇の女神は興味を持ってくれている。俺の行きつくさまを見ていてくれていた。本当にお世話になっているので彼女の役に立つことができたら嬉しいな。はっきり言ってこの世界で俺という個人をしっかり見てくれているのは闇の女神さまだけなのだし。光の女神には会ったことすらない。無論、加護とか祝福なんぞをもらった覚えも与えてくれる気配も無い。というか、この世界は俺にとってはスーパーハードモードでのスタートであることを俺は忘れていないしな。


いや、エクストラハードと言い換えておこう。


並の難易度ではないし。レベル1で、この世界の法則を何にも知らない人間が勇者の対魔王討伐作戦の最重要戦力である勇者の調整用ダンジョンに放り込まれているのだから。レベル1がどうしてそんな自殺志願者のようなことをしなくてはならなくなったのかはあの腐れ外道共が原因である。どうせ、今頃は俺と一緒に来た勇者さん達を煽って訓練でもさせていることだろう。実戦を経験させているかは謎のままだが。まあ、半年くらいは慣らし運転に努めるのではないだろうか?


大事な大事な光の女神の加護を受けているであろう勇者様たちである。確実に魔王をぶち殺してもらわないとこの世界の人間たちは枕を高くして眠れないのであろうから作戦には確実性を重視した方針で臨むはずである。俺が間に合うのなら、魔王の味方をして、この世界の人間たちには不利な展開を準備しておきたい。影からこっそりと援護していこうとは思うのだ。


勇者軍の食糧に下剤を盛り込む。水に何らかの感染病の菌を仕込む。進軍先に罠を仕掛けて大幅に戦闘力を削るとかな。


そうすれば勇者を召喚した奴らの失点にもつながるのではないだろうか?俺はこの世界の人間たちに味方をしてやる気は無いのだ。この世界の人間が望んだから、俺は不本意にもここにいるのだから。俺は望んだことは無いのだ。異世界に前世の知識を持ったままで生まれ変わることは望んでも召喚されることなんて祈ったことすらない。どうして、見も知らない他人のために働かなくてはならないのか?それも強制的に、だ。元の世界に帰れる保証もないままで働く気など起きるはずもない。それに重要なことが保証されていないじゃないか。


報酬が提示されていない。


魔王を倒せとは聞いた。だが、魔王を倒した後に勇者として召喚された俺達の処遇がどうなるのかは聞いていない。まあ、質問もしていないのだが。俺の場合は聴きたかったけれども、それより先にダンジョンに落とされているのでどうしようもないんじゃね?残っているメンバーのうち、誰かがそこに思い至ってくれればいいんだが。…無いだろうな。


俺ほど性格の悪い奴は残りのメンバーには居なかったのだから。はっきり言って、鈴木は俺よりもはるかにまともな人間性をしているし、神崎も同様だ。あれは善人の中の善人だろうよ。困っている人が居れば呼吸をするかのように手を差し伸べて、その人が望んでいることを行ってやる。あいつ一人が勇者として召喚されていれば、丸く収まったんだけどな。


俺はろくでもないことを考えつつも料理を作り食べ続ける。


何せ、魔力を回復させるためにはこうして食べ続けているのが一番なのだ。結局のところ、飯を食いつつ魔力を使って魔物たちをぶっ殺すのは楽で手っ取り早い手段だ。俺は自分の飯にのみ気を配ればいい。そんなことが可能なのもいつの勇者かは知らないけれども、ヤンデレ光の女神さまに愛されまくってくれたおかげである。今はどうしているのかは知らないけれども、ありがとう勇者様。姿も名前も知らないけれども、闇の女神さまと同じくあなたは間違いなく俺のダンジョン生活の救世主だった。本当にこのセーフハウスの事だけは女神に感謝してもいい。何せ、このセーフハウスが無ければ俺は飯一つまともなものを喰えなかったのだから。体はボロボロ、心もボロボロなんてのは勘弁してほしいものだ。もう、俺の体は人間だった部分しかないのだ。


人間だった。


そう、それが今の俺が置かれている状況だ。この体のほとんどが魔物の物で構成されているのだから。何度も手足を失い、時には眼すら失った。耳も何度作り直したかはわからない。顔だって、作り直した。大体、魔物の巣に居続けて五体満足で居続けるなど、よほどのチートが無ければ無理に決まっているのに、俺には何のチートも無かった。あるのは闇の魔法だけだった。そして自分らし過ぎて笑いが出てくるスキルのおかげでもある。そうして、俺は魔物たちの屍の上に立って今日も元気に飯を食っているのである。


間違いなく勇者が送る生活としては全うではないのだ。だから、生活環境の改善を要求する。本当、他のクラスメートたちは何してるんだか。絶対にここまでハードじゃない事尾は、間違いない。体を作り変えるなど、しなくてもいい経験を積みまくっているのは俺くらいのものだろう。


体から流れ出る魔力と体に流れ込む、魔物たちのスキルと力の感じから俺はこのダンジョンの階層の掃除が進んでいることを実感した。魔物たちのスキルが体の中で統合されている。なんか、かぶるスキルが多かったらしく、頭の中で声がしたのだ。


『類似スキルの存在を多数確認しましたので、スキル統合を行います。』


と。

つまりスキルの管理に頭を悩ませなくてもいいということですね。ありがとうございます。


物を整理するのとかは、苦手だから調度いい。不思議とゲーム的な世界だが、俺は適応がしやすかった。どうせ、ゲーム的ならセーブとコンティニューくらいつけてくれれば完璧だったんだけどな。そこまでやってくれれば俺の体だって人間でいられた部分が多かったはずなのに。今みたいに95%くらいが魔物の由来の物でできているなんてことは無かったはずなんだけどな。まあ、力は遥かに強くなったし、頭の回転も速くなったから悪いことばかりではないけれども。もう少し、俺に優しくしてほしいな、この世界。


さて、魔物たちの蹂躙作業も完了した。少し眠ってから次の9階層まで降りよう。これで、10階層のボスさえぶち殺せば俺は晴れて自由の身だ。自由になったらまずは観光して、それから情報を集めて最後にゆっくり確実に復讐へ向けて動き出そう。


数年単位を駆けて、俺を召喚した国を滅ぼしてやらないと。


これは自由と人生を奪われた俺の権利であり義務である。


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