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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第1章 勇者なはずが、ポイ捨てされました…どうしてくれようか?
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第12話 死霊の王

とりあえず、俺は死霊を殺して、喰らって、殺して、喰らって自分の力にしていた。そして、いつのころからか霊体化スキルを手に入れていた。


とうとう俺の体は金属だけでなく霊体にもなれるようになったらしい。便利なものだ。そして霊体化した状態でグリフォンのスキルを発動すると面白いことになる。


風纏尽走:風を纏って全力で疾走して相手を粉砕するスキル。威力は筋力と魔力に比例する。


シンプルだが、霊体と化した状態でやると魔物を大量に殺せるのだ。まず、俺の体を幽霊と化し魔力の密度を上げる。すると、俺の体が魔力で作られている状態となる。そのまま魔物の群れに突っ込むと、大規模魔法で攻撃したような凄惨な現場が出来上がる。攻撃と捕食も同時にできるようになったし、今のところこの階層でも俺は環境に適応しつつあった。自分の体を竜巻と化して魔物を蹂躙するのはなかなか楽しい。それでも死なない頑丈な奴は直接殴って殺す。


最近、俺は自分の体を構成している金属がミスリルであることに気付いたのだ。聖銀と呼ばれることもある金属だから、死霊系の魔物には効果は抜群である。俺の体からミスリル糸を出して蹂躙することもできる。二次元に登場する糸使いには憧れたものだが、やってみると本当に俺、かっけぇ!という風にテンションが上がる。魔物の群れをワイヤーで斬殺するのとかは本当に楽しくなってきた。


…殺しを楽しむようじゃあ三流もいいところなんだろうけどな。


それでも、今この時だけは楽しみにでもしていないと、俺の心が死ぬかもしれない。本当に、誰とも喋らず、誰とも出会わず、一切人との関わりが無くなると結構しんどいものがある。いかに長い間、ボッチでいたとはいえ家族くらいとは話をしていたのだから。まあ、学校では基本的にほとんどボッチだったけれども。神崎くらいの変わり者でない限り俺に気を配る奴はいなかったな。ああ、あいつがいた。


中学の頃からの腐れ縁の鈴木が。


うん。俺が佐藤であいつが鈴木。二人とも、まあ、どこにでもいる苗字だったわけだな、これが。そう言う縁で俺とあいつの付き合いは始まったわけだ。出席番号も常に前後だったしな。学業の成績では俺とあいつは得意科目の違いもあってどちらが上かは明確ではない程度の差だった。あいつは文系が駄目で理系が強く、俺は真逆だったから。理系の点数はあいつに鼻で笑われ、俺が文系の科目のあいつの成績のひどさを鼻で笑う。そんな関係だった。友人といっていいのはあいつくらいだったから俺にとっては大事な人間である。ホモォではない、断じて。


今ではそれもままならないが。


とりあえず、俺は魔物の探索と抹殺を繰り返していた。既に作業ゲーの態をなしてきているが、俺はまだまだ強くなりたい。また、骨の騎士や魔法使いが出てきたので喰らっておく。骨だけの狼も食っておいた。いまいち腐りかけの死体ばかりであまり食べたくはないのだが、食った数に応じてステータスが成長する仕組みなので俺はどんどん食っているのだった。味は特にしないな。



そして、背中にぞくりと来る感覚を味わった。


様子をよく見てみると、いつの間にか俺は見たことが無い扉の前にいた。禍々しさが満載の扉だった。おそらくここが主の部屋だろう。とりあえず、行こうとするか。


この階層以降は財宝がたくさんあるらしいし。


そうして俺は部屋を開けた。


そこにいたのはボロボロだが、王様のような服を着たゾンビだった。リッチとかいうタイプじゃあないか?ゾンビ系の上位種だったと思う。相手は目のないはずの眼窩で俺を睨んでいる。敵意はたっぷりだ。


俺は全身をミスリルに変えてから相手の出方を見るなんてことはせずに相手に突っ込んだ。ミスリルの武器を手に持ち、糸も同時に出して相手の首を狙う。さすがに糸は躱されたが、手に持ったナイフの方までは上手く行かなかったらしい。相手の右手が落ちた。


俺はすぐさま、炎の魔法で右手を焼き尽した。灰すら残さないような大火力で、だ。


相手は右手をすぐさま再生した。それでも少しはダメージがあったはずである。ゾンビ系の厄介なところは再生能力にある。だったら、再生できなくなるほどまでに相手を叩いて叩いて叩き潰してしまえばいい。再生するよりも早く相手を殺し切れれば俺の勝ちなのだから。無限に再生するのなら無限に殺し続けられるだけの精神力が今の俺には備わっている。


「オォォォォ…!!」

仮称キングリッチが魔法を発動して俺は驚いた。風と水を同時に繰り出している。風の刃と水の刃が容赦なく俺を襲う。だが、ミスリルボディの極めて高い魔法防御力を抜くには至らない。俺は相手の魔力を吸収しながら相手の出方を見る。魔法も無意味だと気づく程度に知恵がある相手らしい。魔法を使わなくなった。その代り、物理攻撃にシフトしたらしい。


キングリッチの全身から殺気がほとばしる。かなり強い感じだ。試しに相手のレベルを鑑定してみる。


エンシェントキングゾンビ レベル500 HP30942/42000 MP58000/60000

スキル ダメージ変換:ダメージを受ければ受けるほどMPが回復する。

高速展開:魔法を通常の半分の速さで展開することが可能。


以上がスキルによって読み取れた部分です。


なるほど、さすがにスキルを二つ持っているだけあってかなりの強さだ。未だに俺の鑑定は初級なので相手のスキルは一部しか読み取れないし、ステータスの詳細も探れない。だが、相手の厄介な特性と基本性能さえわかれば何とかなるものだ。俺は魔力を全身に流してミスリルボディをさらに強化した。そして、敵のゾンビへと突っ込んだ。


相手は俺よりも遅いので俺は連続で攻撃を仕掛けていく。途中でゼロ距離魔法の砲撃を喰らうも我慢して敵を殴る。合間に俺の魔力をたっぷり込めた拳を相手に見舞ってやる。魔法攻撃は先程試したが、俺と同じく効果が薄いようだった。ゾンビのくせに魔力耐性は高めらしい。きっと前世では名のある魔法使いだったのかもしれないな。

ゾンビを確認していると突如として動きを変えた。急に接近戦主体の動きへと変わったのだ。よく見ると、ゾンビの背中に格闘家らしき影が見える。なぜ、影が見えるのかといえば俺の霊視能力がかなり鍛えられているからだと思う。ずっと、幽体とばかり戯れていたのだから、当然彼らを見る能力は高まっている。どうも、格闘家の霊を付けて格闘戦主体に変えたらしい。


「んなもんが効くかよ!!」


俺はゾンビの浅知恵を笑いながら叩き潰すべく行動を開始する。何せ、俺は魔物であり、人間の武術や格闘が通用はしないのだ。尻尾をミスリルの蛇に変えてゾンビの足を食いちぎり、高温の魔法で焼却する。そうすることを繰り返して、ようやくゾンビの動きが鈍くなってきた。ミスリルの効果によって、ゾンビや霊たちはだんだんと落ち着きを取り返してきた。その隙に俺はその場にいる亡霊やゾンビたちをまとめて喰らった。


そうして、死霊やゾンビによる攻撃への耐性を高めつつゾンビの王を殴り蹴り、屈服させた。全身の骨をミスリルで固めた猪の蹄で木っ端みじんに砕いたのだ。猪は強いなあ。とどめにグリフォンの突撃スキルを俺は奴にお見舞いしておいた。その結果、苦戦はしたものの奴を倒すことには成功した。時間はかかったが、あいつを倒せたことに俺は満足する。強くなれていることが俺は、今自覚できた。ここに来てすぐにあいつと出会っていたら今頃俺もゾンビか幽霊のどちらかだっただろうな。


魔力を全開にして俺は炎の魔法に風の魔法を追加して同時に発動させる。絶え間なく酸素を送り込む魔方陣を作ったうえで、最大火力の炎魔法を俺は使った。相手の叫びが響き渡る。光であるならば、もっと楽に送ってやれたと思うが、何も言わない。


相手を倒し終えてから俺はレベルがかなり上がったのを感じた。


そして、奴の足元に何か落ちているのを見つけた。さっきのゾンビが使っていた煌びやかな杖だった。よく焼け残ったなあ、相当良いアイテムかな?


星霊の杖:魔力の効率を最大限に良くする。敵の魔法攻撃を防いだり潰したりすると自身の術の威力が跳ね上がる。


うん、良いアイテムだな、後衛にとっては良い。だが、俺はガンガン攻める前衛なのだ。う~ん、せっかくボスを倒したのだから、何もわがままを言わずに持ち帰ることにしようっと。ゾンビの王を倒し終えた俺は意気揚々と第4層へと向かっていったのだった。


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