第23話 魔王登場!
「私は魔族の国、ルナティールを治めるマーテリアルス・ルナティールという者だ。先ほどの尋常ではない力から、貴方が闇の勇者様だと思うのだが。」
「ええ、俺が闇の勇者です。魔族の住む国を見てみたくて、無理を言ってここまで入らせてもらいました。」
「いや、必要なことだから、むしろ我々が迎えに行くべき事態だった。手間を掛けさせて済まない。」
この魔王様はこう、若いが威厳があるな。どこかの間抜けな帝王とは天と地ほどの差があるではないか。ストレイナはずっと黙っている。まあ、魔王なんて普段会わない人だからな、緊張しているんだろう。
「魔王様直々にお迎えとは、恐れ入ります。私は獣王国王グランリオン・レオナストームの名代としてこちらに参りました。こちらが、我が王が貴方に渡されるようにとしたためられた文書です。お納めください。」
おお、公的な言葉遣いをしているストレイナを初めて見た。
「分かった、遠路はるばる大儀であった。では、王宮へ向かおうか、勇者様と使者殿。」
なるほど、ストレイナって使者というポジションだったわけか。
まあ、今の彼女は王家の血は引いているけれども、王女ってわけでもないからな。これでも、気を遣われているんだろうな。ストレイナを見てみると、使者と呼ばれても特に気を悪くする様子も無かった。
まあ、複雑そうな顔はしていたけれど。
王家の継承権はすべて放棄した彼女だが、王家の血が消えたわけでないので。彼女の国の人間は彼女を未だに王女扱いしているからな。おまけに、獣王様の息子さんは、彼女よりも弱いそうだ。だからこそ、力こそすべてという考え方である獣王国にとっては彼女の存在は大きいものだ。
男でも女でも強ければ万事オーケーな国であるのだ。
実力主義もここまで極まるといっそ、すがすがしいもんだ。
王宮の中に入ってからは、まあ、事務的な話だったな。俺の所属は何処の国でもないことを明文化された文書を作成する。おまけに、ドワーフ、エルフ達の集落に行くことにもなった。
何せ、闇の女神は今まで勇者を生み出したことが無いそうだ。俺は彼女が初めて契約した勇者であり、獣人、亜人、魔族たちにとっては自分達のために闇の女神が動いてくれた証そのものである。
よって、俺の所属は何処の国でもない。
俺は何処の国に住んでもいいけど、どこの国の住人にもなれない。闇の勇者という所属になる。要するに俺の本拠地みたいなのは【神界】とされたわけだ。地上の住まいはあくまで仮の住まいだから、そこんところでもめないようにとのことらしい。
俺が帝国を滅ぼしてフィーバーしてた頃に、俺の所在を掴んだ各国の諜報員たちが俺をどうやって自分達の国に住まわせようかと散々議論したそうだ。だが、無理矢理にでも来てもらうためには俺の戦闘能力がやばいくらいに発展していた。よって、手を出さない方向で納得したそうだ。
個人で一つの国を滅ぼしたのは俺くらいだろうとも言われてしまった。
好きで滅ぼしたわけじゃないやい!
俺の感覚だが、この魔王はどうにも好きになれそうにない。なんか、偉そうなのが気に入らない。こう、俺の国の方が住み心地良いから、獣人の国を捨てて俺んとこに来いよって俺様感がすごい。
よって、行かない。さて、さっさと次の国に行ってようか。
それからというもの、俺とストレイナは雲の大陸の主な種族の国を巡る旅を続けた。権力者や有力者たちに俺の所属は【神界】であり、地上界でないことも伝えて回った。こうすることにより、俺を囲い込むために揉めることも減るそうだ。
いいことだ。俺は人が揉めているのが好きなわけじゃない。そこまで人が困るのを見て楽しめるような外道であればよかったんだろうけどな。そうではないから、俺を巡って争いが起こらないようにと配慮して回っているのだった。
エルフの国は、緑で一杯だった。食事は野菜だけだった。果物は旨かったけどな、タンパク質は…無かったなあ、植物性の物しかな。美人はいたが、皆スレンダーでモデル体型だった。俺の好みとは違うんだよ。胸がフラットな方が多めだったなあ。おっぱいはほどほどに豊かな方が俺の好みに合っているんだけどなあ。エルフの国には浪漫が足りなかった。
ダークエルフの国には、とりあえず、泉が出るようにしておいた。飲み水が足りなそうに見えたからな。森羅万象を操るに至った俺の魔法はその程度の事なら軽い軽い。褐色に銀髪の美女は良いもんだ。ダークエルフはエルフに比べれば胸が豊かで好みだった。ストレイナがいなかったら、惚れていたかもしれないな。というか、ストレイナがずっと不機嫌で怖かった。何せ、物凄く好みのダークエルフ嬢に約束させられてしまったし。彼女はルナエルフだから、寿命は半端なく長い。その時にはストレイナも無くなっているから浮気じゃないしね。
まあ、そんなことを考えているのがばれているのか、何なのかストレイナが俺に冷たかった。
自業自得だが、辛い。
ドワーフの国は取り立てて言うことは無かった。女の子達がドワーフ(男)の様な筋肉達磨のムキムキな体でなくて良かった。合法ロリ的な方だった。いやあ、それでいいんだと思ったもんだ。しかし、俺は合法ロリにはあまりそそられないタイプなので、さほど興味もわかなかった。
そんなこんなでストレイナと過ごしながら、旅をした。
理性の削られる音ががりがりしたともさ。それでも、こらえ切れた俺は立派だなあと思ったもんだ。鋼鉄の理性と名乗っても罰は当たらないかもしれないな。まあ、そんな態度は獣人にとっては良くないものだったみたいだが、俺とてなあ。
この世界に生きているけれども、未だに就職というものをしていない。金があるけれど、それは人類側の通貨であり、獣人側の通貨ではない。両替するかな?財産はダンジョンにある者すべてだからなあ、数億くらいは簡単に稼げるんだけど。
ドワーフに俺がまだ、怪物と混ざっていたころの体から採れたオリハルコンを渡したら大喜びされて金塊を山の様にもらえたしな。呪われていない金塊だよ?金というのは一番信頼性が高い金属らしかった。
その点では異世界も日本も代わり映えしないな。まあ、金という物質は硬貨になる機会が多い物質だからなあ。獣人の大陸では宝石も通貨として使える。大陸内共通通貨だそうだ。貴金属が貴重なのは、俺の居た世界とも変わらない。
案外、俺の居た世界と感覚が似ているところもあるんだなあと妙に感心することが多かった日々だな。ちなみに、旅の間にもストレイナには手を出していません。
でも、ファーストキスは済ませたぞ?
景色の良い所があって、まあ、そこでかなり頑張ってな。




