第21話 女神、亡き後の未来絵図
女神が死んでから、しばらくの時間がたった。
オレはクリムゾニアスと共にサクレーヤさんに会いに行った。実力は俺をはるかに上回るオレであるから、きっと彼女も満足してくれるはずだ。そうでないと困るし。
「君は、これから魔族領に行くことで良いんだね?今度は、ちゃあんと目的に行けると考えて構わないんだよね?」
ストレイナさんからの信頼の無さが辛い。言うまでも無く、糞女神のせいだ。あの馬鹿が俺に絡んできさえしなければ、元々薄かった俺に対しての信頼感を更に薄めることになんてならなかったのに。
トラブルメーカーなんかじゃないぞ?歩く戦災製造機とか止めてくれ。俺は無実なんだ。
ただ、この世界が俺に対して結構どころでなく、ツンドラの如き態度をとるだけで。俺にとっては、この世界が一番厳しい世界だと思う。
「すまん、ストレイナさん。今度こそは、今度こそは迷惑をかけずに普通の旅になると思う。なればいいな、なってくれますように。」
もう、神頼みだった。内海さん、お願いします。もう、俺の事は信じてもらえないのです。日頃の行いが悪いとか?その通り過ぎて答えを返すことができない。
「まあ、良いけどね。私も、いい加減君の厄介ごとに巻き込まれるのには慣れてきたし。」
ストレイナさんからの信頼が厚くて嫌だ。
まあ、それはさておき、俺とストレイナさんは今、街道を歩いている。のんびりとした旅にしたいからだ。正直、ここ半年以上一年未満の期間にどれだけの戦いを行った事か。もう、戦いはうんざりなんだ。俺は穏やかに生きたいだけなのに。
7カ月くらいは、初代勇者ですら攻略を諦めかけた地獄の迷宮。
8カ月目は、獣人関連。ストレイナさんをぼろぼろにしていた、グリディスート帝国の奴等を駆逐した。
9カ月目は、神殺しに至る道筋だったなあ。
10カ月目の今は、ようやく本来の目的である魔族が住むという魔族領へ向けて、旅をしている。今の季節は冬だ。今頃、日本では俺達の行方不明はどう報道されているんだろうな。それから、初代勇者の神宮 迅さんは俺と出身世界が近いかもしれない。だってなあ、歴代首相の名前を言ってみたら一致したんだから。
それも5年ほど前までのは。だから、神宮さんは500年生きていたというけれども、俺たちが居た世界では5年しかたっていないことになる。となると、彼の家族は生きている可能性は大きい。たかが5年じゃあ、不慮の事故や、大病なんかにならない限りは十分、生きている可能性があるだろう。
この世界は時の流れが元の世界とは異なっていることを知って、神宮さんは希望を持てたようだった。オレが異世界帰還魔法を開発したら、その時は一緒に帰らせてもらいたいと言ってきたので無論、オーケーした。
だって、彼が光の女神に気に入られていたおかげで俺の迷宮生活は何とかなっていたのだから。彼は間接的に俺の生存に力を貸してくれていたのだ。ただ、彼は光の女神に関わることは言われたくないであろうから、俺は言っていない。
そこのところは、オレも一致している。
オレは俺以上に傍若無人で、傲慢で、人の事を気にしないようになっているけど。それでも、守るべきものはきちんと守るし、通すべき筋はきちんと押すタイプだ。
性格の悪さは、俺とオレでは大差はない。だって、今までの化物クラスの俺を人間部分と化物部分の二つに分けただけだしな。だから、基本的には変わらない。
「そう言えば、ここは今、冬なんだよな。」
ストレイナさんの服装を見て言った。ふわふわの帽子は白に金色の細工がされている。コートは茶色で、魔獣の革を使った非常に頑丈なものだそうだ。足元を固めるブーツも、土属性の竜の革を使っているので、保温性能に優れ、非常に頑丈である。
庶民が同じ服装にしようと思うと、途方もない細工費用がいる。おまけに、素材が全て超高難易度のモンスターを倒さねばならないのだ(一般的なこの世界の住人基準で、だ。)。俺なら軽く一捻りのレベルで楽勝だけどな。ちなみに、俺の服装はダンジョンで拾った宝箱で得た物ばかりだったりする。
ダンジョンで拾った多くの衣服は、どれもこれも性能が段違いで良いのだ。あの女神は迅さんに与えるために、宝箱を配置していたようだからな。あの服を着た迅さんとデートしたいとか考えていたんだろう。そのおかげで、俺はかなり性能の良いコートやマントを持っている。
今、着ているのは“最適の黒衣”というマントだ。戦闘には向かないが、魔力を付与すれば、未だに俺を倒せる奴はここには居ない。大陸最強の名は伊達でないさ。好きでなったわけでもないし、好きで名乗ってもいないんだが。とにもかくにも、俺は、この快適なマントを気に入っている。常に体の周囲に魔力による膜を張り、寒気も熱気も遮断する優れものだ。暑くもなく、寒くもなく最適な状態を維持するからこその名前だ。
黒という色も良い。
今の俺は未だに銀髪、紫目、物凄い美女顔、性別不詳。の、ままであるからね。髪は腰まであるし、手入れも欠かしていない。帽子も、かぶっている。ベレー帽のつばが少し長い仕様になっているという感じか。色は青と黒と金色が使われている。青を主体として、つばは黒い、そして所々に金色のラインが入っている帽子だ。効果は、体力・魔力の1割増加。
そこまで、大した効果ではない。それでも、俺のお気に入りだ。インナーは白のタートルネック、ズボンは黒のレザーパンツだ。両サイドに銀色の刺繍が入っていていとても、格好がいいデザインだ。両方とも、獣人の王都で購入したものだ。特に、魔法的な効果は無い。ただのお気に入りだ。
ブーツは、効果がある。蹴りの威力3割増しという実用的な効果だ。これは、茶色のごついコンバットブーツ風なデザインとなっている。名前は、“豪脚のブーツ”。そのまますぎて、女神のネーミングセンスを疑うが、まあ、分かり易くていいんじゃない?
俺とストレイナさんが王都を離れて数日がたった。
街道沿いに旅をするが、ちゃんと街道宿が整備されていて、宿に困ったことは一度もない。一番、困っているのはいつも部屋を二つ取る事くらいだな。だってねえ、結婚もまだなのに、男女が同じ部屋というのは破廉恥じゃね?恋人…にもなっていないのに。そこら辺は大事にしていかないとな。
変態であることは否定出来ないが、せめて紳士的な変態で居たいものだ。
そんな日々が続いたある日、街道でストレイナさんに尋ねられた。
「なあ、ユウジ。私には魅力がないのか?」
ふむ、この美人さんは何を言っているんだろうね?
「そんなわけあるか。いきなり、何を言い出すんだ?」
「いや、君はちっとも、私を襲う気配を見せないからね。その、あれだ、君は不能…なのかな?」
「そんなわけないだろ。これ以上ないくらいに健康だけれども、ストレイナさんとは、まだ恋人になっていないだろ?」
「君、ひょっとしてだが、私の気持ちに気が付いていないのか!?確かに、明言したことは無いけれど、いい加減気が付いているとばかり思ってたのに。」
ストレイナさんが顔を、紅くしつつ言っている。可愛いし、尊い。守りたいこの、エロ可愛いストレイナさんを。
「え?え?俺、なんか好かれるようなことしたっけ?」
うーん、傷を治したことか?うーむ、心当たりがほぼ無い。だって、これほど可愛い人に俺なんかが好かれるわけないじゃないか。何とか、人間に戻れはしたもののステータスでは立派な化物たる俺を。
「君、今夜は寝かさないからね?」
ヤダ、ストレイナさんたら男前。いやん。
「それ、普通男のセリフじゃないか?」
「君が、男らしく私をいただいてくれさえすれば、私は自分からこんなことを言いださずに済んだのに。」
ストレイナさんが酷く気落ちした声で言った。
「いや、だって、さあ。俺から告白するつもりだったんだよ。…その、女神がストレイナさんを攻撃した時に確信したんだよ。俺の女に何しやがるって!でも、ストレイナさんには告白して、俺の女になってもらってなかったからさ。機を窺っていたというか。魔族領に雰囲気の良いデートスポットないかなあとか。」
そこで、言葉を切る。異世界だとか、人間だとか、知った事じゃないな。告るか?告ろうか!
「ストレイナさん、俺は貴方が欲しい。世界も種族も、立場も全部違うけど、俺は貴方に惚れたからさ。将来を共にしてくれないか?大好きだ!!」
俺も、ストレイナさんへ告白した。
「え、あ、うん。よ、喜んで。」
小さく言った、ストレイナさんは酷く愛らしかった。そして、ここが人気のない街道でよかった。まったく、街中だったら公開恥刑に等しい所業だぜ。
そして、次の町で泊まった宿屋にて、一緒の部屋で寝た。でも、手は出してないよ?婚前の性交渉ってまずくない?保護者にも無許可でってのは、ちょっとなあ。
「君は、どうして手を出さなかったんだい?添い寝だけでも、悪くはないけれどね。もう少し、雄らしさが欲しいというかね。」
ストレイナさんが難易度の高い要求をしてくる。ハハハハハ、異世界童貞高校生の俺には、難易度が高いんだよ!!彼女すらいたこと無いんだぜ?女の子の手を握ったことも、腕を組んで歩いたことも、デートも、何も無いんだぞ?
そんな俺がいきなり、恋人たちの最終儀式に突入できるかと言えば、無理でした。最終的には結合したいけどさあ。彼女の保護者に黙ってやるのは気まずくない?責任はちゃんと取りたいからねえ。金ならいくらでもあるけど、ご両親の挨拶はまだだし。そこは大事なもんなんだ。
「あのなあ、ストレイナ。俺には今の今まで俺を好きになってくれる女の子なんて居なかったんだよ。だから、どう接していいか分かんないんだよなあ。」
悲し過ぎる本音を言った。。
「ああ、その、なんだ、すまない。君も私と一緒だったんだね。」
恋人いない歴=年齢。
それが、俺とストレイナの悲し過ぎる共通点だった。ストレイナと呼んでいるのは、彼女が望んだからだ。まあ、恋人同士というのに、さん付けは他人行儀か。
そう、恋人同士だ。ニヤニヤしてしまうな。
「まあ、いいか。私も焦り過ぎたから。」
「良いんだ、俺がヘタレなだけなんだからさ。気にするなよ。いずれは、結婚して欲しいと思ってるからすぐに、手は出さないんだし。きちんと責任取りたいからな。やっぱり、男としてはな。」
「あ、う、お、ええ、うん。その、お願いします。」
はて、妙にしおらしい。
ああ、さっきの発言をした俺を誰か、ぶっ殺してくれ。
いきなりプロポーズしちまった。
「すまん、結婚申し込むときはもっと、凝ったシチュエーション作るから。今のところは、そっとしておいてくれ。」
もっと、良い雰囲気のある場所でプロポーズしたいもんだ。具体的なイメージはまるでわかないが、この世界での綺麗な場所で、二人きりで、周囲に邪魔が入らないような場所が良いんだが。




