第19話 彼女の終わり
「嫌よ、嫌!どうして、どうして、私ばっかりこんな目に遭うの!!」
頭を抱えて、喚き続ける光の女神。
俺からしても、効果的な罰だと思う。はっきり言って、あの女神は人間が大好きと言いなが
ら人間を見下してもいたからな。何かあれば、自分に頼ってくるしかない、無能な存在。ゆ
えに自分を崇め奉らなければいけない存在。そして、そんな矮小な存在に手を貸す全能たる
自分。
さぞかし酔い痴れていたに違いないが。
だからこそ、大げさに縋り付いてきた人間に対して勇者を4回も呼んでやったんだろうか
ら。ただ、この世界の人間って、かなり馬鹿だからな。女神が代償付きで召喚してたの知ら
なかったんじゃないかな?気が付いたら、危機になるたびに女神に勇者を召喚してもらう
癖がついた結果がこの、惨状なのかもしれないけれど。後は、こちらの世界の神様ってこと
で、万能だって思われてたんだろうしな。それに、あのバカ女神は自ら、全知全能アピール
をしてしまっていたんだろう。
その結果としてここまでの落ちぶれっぷりをさらしてくれたわけで、俺としては飯が美味
い話だ。後から、食べる飯はさぞかし美味いだろう。自分が嫌いな奴が不幸になるのを生で
見るのは、たまらない娯楽だろう?
それにしても、課金ガチャみたいなもんかな、俺達勇者の存在ってのは。女神にとってはだ
けど。
最初は単発ガチャだったからな。負担も軽かったんだろうが。その後はずっと、10連、20
連、30連が基本だったろうから。払う代価も増えていっただろう。
まあ、初代勇者が最高レアだとしたら、俺たち一般勇者は普通のレアくらいだったろうけれ
どな。それでも、普通のレアでも数が増えることにより負担が増えれば、最高レアとも変わ
らない、いや最高レアすら上回る負担があったんだろう。
まあ、この世界の人間の自業自得だから、俺にとってはどうでもいいんだが。
俺がつらつらとそんなことを考えている間に、内海さんの準備は整ったようだ。
「よしよし、じゃあこれから君を人間として生まれ変わらせる儀式を始めるよ。」
内海さんがそう言って、ディヴァイナ・ネ・シアの方へと手を向ける。すると、あの馬鹿か
ら光が出て来て、ステータスプレートの情報みたいにあいつのステータスが曝された。俺た
ち全員が見えるようにしてあったのはなぜだろうか。嫌がらせか?
ディヴァイナ・ネ・シア
種族:中級神(最上級神)・永続退化 属性:光
レベル2500(5000) HP750000(1500000) MP1000000(2000000)
筋力 1250000(2500000)知力1000000(2000000)
耐久 1000000(2000000) 魔力1000000(2000000)
敏捷 1750000(3500000) 器用1000000(2000000)
魅力 500000(9999999) 幸運500000(9999999)
*現在は信仰心低下により全ステータスが半減。
権能
遍く光をEX:地上に光をもたらす。太陽の運行を担当し、地上の天候を管理する権限。大地に恵みをもたらし、命の営みを管理するためのスキル。いかなる天候をも操ることが可能となる。*現在は効果が半減。
暖かな光をEX:いかなる損傷を負った者でも蘇生が可能となる。あらゆるもの癒し、慈しむための権能。自然が破壊され過ぎた際に、手直しをするための技能。あらゆる負の瘴気に侵された魔境ですら、浄化できる権能。*現在は効果が半減。
設定スキル
万物鑑定:物の価値を見た瞬間に把握する。作られた来歴、作成者の思念すら鑑定可能。
光ある限り:光がある限り不滅。死んでも、蘇ることが可能となる。*現在は効果が半減。
光の支配者:光の魔法の効果が通常の10倍となる。*現在は資格がない。
最上級神:この世界に生きる者では傷をつけることができない。神聖にして不可侵の神である証。*現在は資格がない。
称号
天体管理者:星を統べる者。あらゆる自然を操ることが可能。*現在は資格がない。
光の恩寵:光がある限り、決して死ぬことや老いる事、病むことも無い。*現在は資格がない。
聖なる息吹:あらゆる空気を支配する。不浄の物に対して特効効果を持つ。通常攻撃の効果が100倍となる。魔を持つ者に対して特効効果がある。*現在は資格がない。
不沈の太陽:光ある限りステータスが向上し続ける。効果は太陽が最も高く天に上った時で通常のステータスは100倍となる。*現在は資格がない。
光の女神:地上を管理する権限者名称。太陽の運行を担当し、人間からの信仰により権能を維持する。人間からの信仰の度合いにより、効果は変わる。ステータスも変化する。
なるほど、ステータスが完璧ではないけれど、これほどの権能が設定されていれば、俺でも
勝てなかっただろうな。ここまで弱体化していたからこそ、俺は勝てたんだな。というか、
女神の信仰を奪う行動をしていて良かったな。そうでなければ、勝てなかったところだ。
INAGO作戦は思わぬ効果をもたらしたところだな。
要するに兵糧作戦だったんだな。女神の強さは民達からの信仰に依存する強さだった。そ
れは戦争に例えれば武器弾薬みたいなもの。それを俺は根こそぎとまではいかないが8割
ほど奪ったのだ。その結果が、これ。
かなりの弱体化に成功している。神格というのはスキルの事かとも思ったが、どうも違う
らしい。何を切り売りしていたんだろうね。神格という俺達には分からないものを売って
いたんだろう。
「これは酷いな、本当に。よくもここまで弱体化したもんだな。」
内海さんが呆れたように言った。そして、感情の読めない目でアホ女神を見やってから作
業をした。両手で、空中に浮かんだディスプレイのようなものを目まぐるしく弄りなが
ら、作業をしていた。
近未来的なパソコンを操作しているようにも見えるけど。時折、パソコンでする動きをし
ているからな。ウインドウを開けては閉じ、開けては閉じを繰り返し10分ほどが経って
から、内海さんは言った。
「終わったよ、これで君は、3万年間は人間として暮らしてもらう事になった。3万年後
に君の寿命が尽きる前にもう一度この地にやってくるとしようか。ずいぶんと迷惑をかけ
てしまったからね、この大地にはさ。俺ももう少し、創造主として責任を持つべきだった
かもな。」
頭をポリポリと掻きながら内海さんは言った。そして、再びうずくまったまま静かになっ
たクソ女神のステータスを展開させる。
ディヴァイナ・ネ・シア
種族:人間 属性:光
レベル0 HP7 MP10
筋力 0 知力0
耐久 0 魔力0
敏捷 0 器用0
魅力 0 幸運0
設定スキル
鑑定:物の価値を鑑定するスキル。最下級の物。
称号
愚かな女神:神格を切り売りした挙句、人間へと転生させられた愚かなる女神。知力のステータスにマイナス補正。
回帰の女神:人間として、生き続ける。死んでは転生、死んでは転生という風に罰として人間として生き続ける。
そして、女神の体は光輝き始める。これはどういう事だろうか?
「生まれ変わってきなよ、ディヴァイナ。今度こそは正しく生きろ。3万年後にまた会おう
か。」
内海さんは無表情に、無感情に、ただ義務感から口にしたように見えるほど感情の無い声で
言った。さすがに創星神だけはある。慈悲が無い、圧倒的に慈悲が無い。まあ、要らないん
だけれども、俺からすればな。
「本来であれば決して子供が生まれない夫婦の間にのみ、お前は生まれ変わるようにした
から。お前の存在も一応の救いにはならないといけないからな。じゃあな、俺の失敗作。」
怖いな。
これが神の視点という奴か。オレは既に獲得しているんだろうな。俺の場合は生涯獲得する
ことは無いだろうけれども。まったく、まあ、これでお別れだな。
「じゃあな、KYで、無能のクソ女神。」
ついでに中指を立てて送ってあげた。その後は、親指を下に向け、首を掻き切る仕草も付け
ておいた。
物凄い顔で俺を睨んでいた女神だったが、言葉を発する気力もないのか、黙り込んでいた。
これで、俺の復讐は完全に終わったなあ。これからはどうするかは決まっている。復讐心に
とらわれずに生きていきたいねえ。元の世界にも、帰りたくはあるしな。一応、この体は人
間がベースの物だしな。
「じゃあ、俺はこれで帰るよ。もう、この世界は俺の手を必要とはしないだろうから
な。余り保護者がでしゃばるものでもないし、この世界のことは君たち任せたよ。今
までになく、面白い経験をさせてもらったことを感謝するよ。」
にこやかに、内海さんは言った。神の気まぐれに巻き込まれる人間としてはたまったもの
ではないんだけどな。
まあ、こうして、俺の物語にもひと段落はついたわけだ。これからは、俺とオレの物語に
なって行くのかねえ?とはいえ、俺がオレに積極的に関わらなければ互いのことは分から
ないけれども。平和に生きたいものだな、これからは。クソ女神は封印されたし、俺はス
トレイナさんと平和に旅がしたい。




