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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第4章 女神が動き出したようです、面倒です、逃げましょう!
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第14話 創造主

とりあえず、クリムゾニアスは分離しておこう。得体が知れなさすぎる相手に殺されるかもしれんし。俺が。間違いなく勝てないから、戦わないけれども。相手に戦意が無いのはホッとした。うちの娘をボコりやがって、という感じに来られたら、俺は死んでいるだろうから。


「えーと、俺は佐藤 唯志です。色々あって、人間を辞めて魔神をやっています。」

年上だろう、相手に気を遣って丁寧にしゃべる。

「自己紹介されたら応えないとな。俺は内海 創。かつては日本人だったこともあるが、今は星を作る神様ってのをやっている。年齢は覚えてないな。ああ、それと丁寧にしゃべらなくていいぞ。俺、そういうのは気にしないし。」

軽い。神様なのに軽い、フランクな神様だ。


「あの、お父様はどうしてここに来たんですか?以前に捜されていた嫁というのが見つかったのですか?」

ディアルクネシアが問いかける。

「ああ、そんなことも言ってたっけ?いいや、俺が探した限りでも、転生もしていないみたいだったから。もう、諦めた。これからは、好き勝手に作った星の管理をして寿命が尽きるまでは生きてみるさ。」

一瞬だけ、深い悲しみを見せたが、それ以降は何と言うか年経た者がする独特の眼差しに戻っていた。こちらを見透かすような、若い命を愛おしむような眼差しだ。神様っぽいなあ。

「では、この馬鹿姉を何とかしていただけますか?貴方がしっかりと躾けてくれなかったから、私はとても迷惑していますので。」

ディアルクネシアが身に纏う殺意を強めにして言った。怖い、美人が怒るとどうしてこんなにも怖いのか?

「悪かった、悪かった。俺の設計ミスだったな。ちゃんと、星の管理をするようにしたはずなんだがな。性格をヤンデレ風にしたのがまずかったかな?依存心が強過ぎたか。」

ああ、初代勇者に大分依存してたけど。


「お父様、どうして今頃やって来たのですか?どうして、どうして、私が寂しい時にはいつもいつも来て下さらなかったのに。」

なんかいつの間にか復活していた糞女神がしれっと会話に混ざっていた。まあ、いいか。親の前で娘の脳天をぶちまけるほど、俺も子供でないし。親が帰ってから、いくらでもやれるし。


「お前がしっかりと俺の命令を聞いていなかったから来たんだよ。確かに俺は人間を守れとは言ったぞ。でもな、甘やかし過ぎろと言った覚えはない。…お前が俺の命令をきちんと聞いていないと苦情が来たんだ。この星の管理者からな。まったく、情けない。失敗作だな、お前は。」

きついなあ、この言葉は。にしても、神様になったからってここまで傲慢になるもんかね?いや、まあ、失敗作ってのは分かるがね。


「私は出来損ないではありません。きちんと人間達を管理しておりますわ。」

「どこがだ?高々、人間上がりの龍神と融合しただけの魔神君に良いようにしてやられていたじゃないか?あれが、ディアルクネシアなら苦戦はしただろうが、勝って見せたはずだぞ。まあ、魔神君がとんでもないんだけどさ。それは認めるよ、お前の相手には荷が重かっただろうとも思った。だがな、そこまで神格を失っていなければもっと勝負になったはずだ。どうして、そこまで神格を失った、訳を話せ。」

なんかなあ、さっきまで命のやり取りしていたのがいつの間にかよそ様の家庭の事情的な感じのやり取りになってる。



白熱している場から離れてクリムゾニアスに言った。

「もう、俺帰っていいかな?」

「いや、さすがにそれはまずいだろう。帰りたくなる気持ちも分からなくもないが。それにしても、まさか我らの星を創った神があのような者だったとはな。今日は光の女神を叩きのめしためでたい日だが、こう、締まらないものだな。」

確かに締まらない。何と言うか、不良娘が父親に説教されてるだけの場になったしな。ディアルクネシアは苦労性の妹ポジになってるし。まあ、散々苦労してたからな。報われて欲しいもんだ。


それから30分ほど説教は続いていた。


4回異世界召喚して神格をほとんど俺が住んでいた地球の神にやったことを話したところで、内海さんが怒りだした。


「馬鹿野郎ッ!!ほいほい異世界召喚なんぞ、許可してるんじゃねえ!!求められても断れよ。本当に世界が滅亡するかしないかの時だけにしか使わせちゃいけなかったんだよ。」

呆れ果てた様子で内海さんは言っている。何と言うか、最初は謎めいた若者風神様って感じだったのに、今ではすっかり阿保な妹がしでかした子を嘆くお兄ちゃんという感じになっている。


気の毒だが、もう帰りたい。魔族領に行きたいし。そろそろ飽きてきたしなあ。俺はクリムゾニアスと地面に座って、酒盛りを始めていたがまだまだお説教が続いていた。

「やれやれ、いつまで続くのかねえ?おお、クリムゾニアス。これは旨いから食っておけ。ブラッディマッドブルの心臓の一番良い部位の肉だ。少し焼いて塩で食うと最高に上手いんだ。」

「ふむ、確かにいけるな。私が持ってきた酒はどうだユウジ?龍族のみが作れる酒だぞ。」

竜が水に働きかけて酒にする術があるようで、それを使って作られた酒なのだそうだ。ちなみに、神龍クラスが作った酒は本当に旨いらしい。で、クリムゾニアスは神龍である。

「うまいなあ、それしか言えないくらいに旨い。俺にもできるかなあ?一応、神龍の資格はあるんだぞ。」

魔神だが、俺の身体を構築している要素の中には龍族の特性もあるのだ。

「ウォルティニアから習うといい。今日持ってきた酒は、あれが作ったものだ。私では到底、妻の様な深みも旨味も出せんのだ。」

「なるほどなあ、良い嫁さん持ったなクリムゾニアス。」

「ああ、自慢の嫁だとも。そして、お前は自慢の息子になる気は無いのか?私達は待っているんだが。サクレーヤも拒むことは無いはずだ。」

また、クリムゾニアスの娘の婿になれトークが始まった。俺には、ストレイナさんという好きな人が居るんだが。

「悪いけど、俺には好きな人が居るんだけどな。」

「ほう、うちの可愛い娘よりもいい女なんだろうな?」

「俺にとってはな。一緒に居て楽しいのさ。サクレーヤは一緒に居て戦うのは好きだが、落ち着けるタイプじゃないんだよ。俺はいつでも戦いたいタイプじゃないんでな。」

「ほう?」

クリムゾニアスはニヤニヤして話を聞いている。

「ふははは、私がサクレーヤをお前にくれてやるのは何百年先でも構わんのだが。龍族の寿命は長いからな。」

これだから、龍族って奴は。考え方の桁が違うのだ。彼らの寿命は、数千年はあるのが普通だ。しかも神龍クラスともなると本当に、万年の時を生きてしまうらしいし。厄介なことだ。いっそ、俺の力を本格的に分離するか?精神を二つに分けてしまえば可能になるはずなのだが。既にクローン体を作るめどはつけてあるし、後は実践だけだからな。


酒盛りを初めて1時間ほどが経った。


まだまだ内海さんは光の女神を叱っていた。ディアルクネシアも一緒になって叱り飛ばしている。もう、帰ってもいいだろうか。


「すいません、もう俺は家に帰っていいでしょうか神様ぁ?」

酔っているのは自覚しているが退屈だったし、光の女神が叱られているのを眺めつつ飲む酒は格別だったから飲み過ぎた。酒?この世界では自分が大人だと思ったら飲んで良いそうなので俺は飲む。だって、所持金はやばいくらいに持っているし。


「うわあ、酒臭いな君。そういや、うちの馬鹿が迷惑をかけた詫びをしたいんだけど、なんか希望はある?」

希望?そうだな人間の部分の俺と、魔神に染まった俺を分けて欲しいかも。そうすれば、ストレイナさんと添い遂げる俺と、サクレーヤと添い遂げる俺に分かれることができるじゃないか?万歳。後は魔神変身セットかな?それは、まあ魔神の俺がやるだろうからいいか?俺は内海さんに要望を告げる。


「変わった事を頼むなあ。でもいいよ、君と君の中の魔神部分を分離しようか。でも、ステータスはかなり下がるけど良いのかい?」

「お宅のバカ娘をぶちのめせたので満足ですし、俺は人として生きたいんですよ。何千年、何万年と生きる気は無いので。それは魔神のみになった俺に任せることにします。」

そう、俺はずっと悩んでいたのだ。これだけ馬鹿げた力を持ち続けるのは荷が重い。魔神は流石に手に余る。強過ぎる程度ならいいが、神格まで持つとなると、俺の凡人としての精神では耐えられなくなってくる可能性があった。


「ああ、そういう不安は分かる。俺も通った道だから。でも、まあ、そうだな分身体作りみたいなもんだな。完全に君が二人に分かれたようにしてやるさ。触れば記憶の共有も可能なようにしておこう。」

「ありがとうございます!かみさま!」

大分酒が回ってきたみたいで、考えがまとまらなくなってきた。この酒は何なんだ?見るとクリムゾニアスはいびきをかいて眠っていた。羨ましいな、気持ちよさそうに眠りやがって。


そして、1時間後に酔いが醒めて目覚めると、そこには俺がもう一人いた。


「よう、俺。これからは俺がお前の魔神関連を引き受けてやるから安心しろ。ストレイナさんに当たってみろよ。砕けるかもしれんが、人として生きていけるのは確約されてるぞ。」

魔神としての俺が言ってきた。うん、やはりイケメンだな。だが、纏っている空気はやばいの一言に尽きるが。

「了解だ。当たって砕けてみるよ。お前はサクレーヤに当たるのか?」

興味本位で聞いてみる。

「ディアルクネシアに当たってみるさ。もう少し力を付けてからな。」

照れくさそうに言う俺は、やはり俺だった。届くかどうかも分からない領域の最上の物を目指す姿勢。すなわち無謀さは俺が持っていたものだ。


「これで満足かな?ああ、うちの娘が気に入ったのなら嫁にしてくれてもいいよ?できればの話だけどな。」

内海さんが言ってきた。

「どうもありがとうございました、これで俺は二つの生を楽しむことができます。」

人としての生と、神としての生の二つだ。


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