表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第4章 女神が動き出したようです、面倒です、逃げましょう!
101/119

第12話 女神との邂逅、魔神の浸食

【ユウジ、今から貴方達を私の住んでいる領域に案内するわ。何を話すかは分かっているでしょう?】

ええ、分かっていますとも。魔神化の件ですね。


申し開きもございませんとも。でも、気が付いたら魔神になっていたのであって、魔神になろうとしてなったわけではないと言いたい。意識してなったのなら、ともかく無意識でなってしまっているのだから、情状酌量の余地はあるはず。


「あの、ストレイナさん。今から、闇の女神が俺達を召喚するそうだ。なので、動かないでじっとしていてくれ。」

座標がずれると困るだろうしと付け加えた。

「私は、今、この大陸に住むすべての者から羨ましがられる立場になったな。本当、君と過ごしていると、退屈しないね。」

そう言って召喚されるのを待っていたが、なかなか召喚されない。


おかしいな、闇の女神の召喚を妨害する何かでもあるんだろうか?


いきなり、極大の閃光が俺の方を目指してきたのはそんなことを考えている時だった。


俺なら耐えられるが、ストレイナさんは耐えられない。即座に決断する。ストレイナさんを転移結界によってダンジョンハウスへ飛ばした。その分、俺が防御に使える時間はすり減るが仕方が無い。


身体の中には力が溢れ満ちているので、それを全て肉体活生に回す。


そこまで考えて気が付く。この閃光の威力であれば、この大陸が沈みかねないと。なぜだか頭が異常に冴え渡っているので、良かったが通常時であればここまでは冴えていない。死ぬかもしれないという、現状を打破すべく肉体が驚くほどの思考の加速を行ってくれているのだろうか?それともカンストした知力か?


ステータス的には999万9999が限界なんだよなあ。筋力、耐久は10倍すればそれを遥かに超える。超えた分はどうなるのだろうか?しかも、俺は神殺しに近い身だしな。さて、この閃光を無効化はできるかな?


可能。


敵は誰だ?


光の女神。力の規模は俺よりも下。中級神だが、神格に限り俺が上。ただし、存在力では俺よりも上。しぶといだけのサンドバッグか。封印は可能か?


可能。闇夜魔法の全てを駆使すれば問題ない。


実行まで、5秒。


閃光が俺にぶち当たるまでは7秒ほどはあったか。実行だな。


「闇夜魔法展開。剣にて勢いを殺し、冠にて盾による結界を強化、敵を捕縛後、闇夜回廊を開いて敵へぶつける。」

俺が、俺に命令する。魔神としての俺が世界に命令する感じだ。それは滞りなく実行される。



極大の閃光を闇の剣が駆逐していき、強化された闇夜の盾により極光が閃光程度まで縮小された。そしてそれを撃ってきた大元とみられる地点でふんぞり返っている光の女神を補足したうえで、彼女を捕縛する。あっけなくとらえられて拍子抜けするが、そのまま闇夜回廊を展開した。無論、彼女が撃った閃光付きだ。


視界から数十キロ離れた天空で花火が上がった。うん、薄汚い存在でも花火になれば多少は見ていられるなあ。


そのまま、俺がいる地点まで落下してきた。こいつ、本当に女神か?弱過ぎるだろう?騙りか?騙されているんだろうか?


「よくも、よくも、薄汚い獣の分際で私に傷をつけたわね!今すぐに、この戒めを解きなさい!!」

「解けと言われて封印を解くような馬鹿はいないと思う。で、お前は誰だ?光の女神の子供か?悪い事は言わんから、さっさと帰ってママのおっぱいでも吸ってな。ド・チ・ビ!!元人間なんかに封印されてどんな気持ちだ?なあ、聞かせてみろよ、糞神。神の出来損ないだろ?さっさと母親連れて来い。お前じゃ、俺の相手にはならんからな。速く失せろ、ガキを殺す趣味は無いんだからな。」

闇の鎖によって縛られているのは見た目が10歳程度のクソガキだった。将来は美人になるだろうが、この大陸を沈めようとしたクソガキだ。さて、どうしようか?


子供とは言え重罪人だが、ぶち殺すのは気が進まない。とりあえず、厳重に封印かまして、海の底に沈めておこうか。


「放せ!離せ!獣ォォォッ!!」


五月蝿いガキだ。さて、本当にどうしようか?光の女神にしてはあっけなさ過ぎるだろ、これ。こんなんが女神なわけないから、見習いか。うーん、舐められてるなあ、俺。


「しょうがない、とりあえず、手足をもいで、それから目を潰して、耳を引き千切り、鼻を潰すか。そんでもって、封印を厳重にして海の底に沈めとこう。ディアルクネシアに一応、尋ねておこう。神殺ししてもいいかどうかな。良ければぶち殺してもいいんだが。さすがにこちらの大陸を沈めようとしたのは闇の勇者としてはいただけんしな。」

さて、とりあえず罵詈雑言を吐き散らして煩いガキを潰そうか。


腹を蹴り、身をよじったところでもう一度腹を守っている腕ごと蹴り飛ばす。自分の目の高さまで浮かんだからさらに蹴り飛ばして空まで飛ばす。それでも、罵詈雑言を叫び続けているのは凄いな。


俺も負けじと、空へ跳びあがり空中大回転をしたうえで蹴り付けた。


高速回転からの踵落としだ。普通の人間というか敵ならこれで挽肉になるはずだが、このガキはまだ五体満足だ。魔物よりも頑丈だな、それも最上級クラスの。一応神らしい。


「いきなり何すんのよ、ケダモノ!痛いじゃない!野蛮なケダモノめ!私が十全であれば、お前なんかに!?」

「黙れよ、クソガキ。温厚篤実の権化と言われた俺でも怒る時は怒るぞ?」

地面に落ちていたガキの両手両足を同時に引き千切ってやり、剣を通して捕食した。


「あああああっっっぎいいっっああああぁぁぁっぁあああ!?!!!」


耳をつんざくような声がした。


耳が痛い、聞こえすぎるのも考え物だな。まったく、堪え性がない奴だ。俺なんか、腕を喰われた時くらいしか叫んでないぞ?足もか。全く普通に切り落としたんだから傷口だって綺麗だろうに。何を叫ぶ必要があるのか?いくらでも回復できるだろ?


「ああ、うあああぁぁ、痛い、痛いいいぃぃ、痛いの嫌あぁぁいやあ。」


とうとう泣き出した。おまけに漏らしてやがる。


「お前、本当に女神か?神様なら痛みなんて無いし、漏らしもしないだろ?」

神ってのは、こう、やたら強いもんだろう?いや、ディアルクネシア以外の神なんてこんなもんかもしれないな。


「獣に殺される、嫌ぁぁ、ううう……いたい、いたいぃぃぃ……勇者ぁ、助けて…助けて!!」

うーん、本当に勇者関連の女神なのか?


それにしても弱過ぎるだろう?だって、俺がやったのは閃光撃ち落として、ぶちのめしただけだぞ?いや、こいつの肉体は再生し始めてるか。それも結構早いな。手足をもいだはずなのに、もう完全に元通りか。


ふうむ、サンドバッグにはなるかな?いやいや、少女をサンドバッグってどんな猟奇趣味だ、俺。自重しよう、自重。まあ、大陸を沈めようとしたんだからしょうがなくもあるんだが。


だって、俺はこいつなんてどうでもいいしな。石ころほどの価値も無い。


「ユウジ!まだ殺してないわよね!?」

かなり焦った様子のディアルクネシアが出てきて驚いた。


「え、これって女神の子供なんじゃないの?いくらなんでも神にしては弱過ぎるだろ。」

俺は泣いているチビをさりげなく踏みつけながら聞いた。いや待て、さすがに妹の目の前で姉を踏みつけにするのはいかがなものかと。俺は足をのけた。

「いや、止めなくていいわよ。貴方が本気で怒っているのは分かっているから。それに、そこの馬鹿はそれぐらいしても懲りないから大丈夫よ。」

ディアルクネシアが疲れたような顔で言った。なんか、すまない。


「でも、どうして俺がここまで圧倒できるんだ?俺のステータスは999万9999が限界だろ?ステータスに限界と書いてあるし。」

ディアルクネシアに尋ねる。

「それはね、通常の貴方としての限界よ。今の貴方は完全に魔神と化している、それも憤怒状態のね。だから、この世界の法則を完全に超えてしまっているわ。今の貴方のステータスは私に匹敵するわ。」

いくらなんでも、それは買い被り過ぎだろう。だって、ディアルクネシアに勝てるビジョンは浮かばない。この足元の汚物にならいくらでも勝てそうだが。


そう伝えると、彼女は溜息をつきながら言った。

「ええ、それは私の方が存在としての格は貴方を遥かに超えているものね。でも、ステータスとしては、貴方と私に大きな差はないわ。貴方が今の状態で居る限りはね。」

なるほど、完全な魔神と化すれば俺は彼女に匹敵するだけの出力はあるんだな。


ステータスプレートを見てみると、限界突破の文字があちこちにあった。状態は憤怒の魔神となっている。本気で心の底から怒っているらしいけれども、自覚は無い。俺は冷静だぞ?


「貴女、馬鹿姉を踏みつけ続けていることに自覚はあるの?時々、魔神としての力で以て攻撃もしてるわよ?」

呆れかえった表情で、ディアルクネシアが言ってきた。


「え?」

足元を見れば、再生しきれないだけの傷を負ったぼろ雑巾があった。こんなことを俺は無意識で行っていたって言うのか。俺の無意識って一体?実は俺って、人を痛めつけることに快感を感じるタイプなのか?それとも、人を人とも思わないほどに魔神化が進んだとか?


「貴方が怒るのは無理ないわよ。分かっているんでしょうけど、そいつが貴方をこの世界に召喚した張本人よ?」

その言葉を聞いて俺は納得した。


「あぎぅぃぃいいいやあああっっっっ!!!!」


一段と大きな叫び声がしたが、すでに関心はない。あるのは、ただクリムゾニアスには悪い事をしたなという気持ちだけだ。


「悪いな、クリムゾニアス、お前よりも早く復讐しちまった。でも、まあ、奴には知らせなくてもいいかもな。こんな汚物を相手にするほどあいつの価値は低くないし。ごみ掃除には俺の方が適任だろ。」

「誰が、誰を汚物と呼んでいるのかしら?」

足元から冷え切った声がした。なんだか、クソガキが大きくなっている気がした。なぜだろうか?


「ユウジ、貴方の事だから死なないとは思うけど苦戦するわよ。今までの彼女とは別物と思いなさい。どうも、完全に理性が飛んだみたいだから。」

ふむ、人間側の大陸からこいつに向かって力が流れ込んでいる。阻害しようにもうまくいかない。これが神格の差か。いや、存在力の差だな。俺は神としては急造品だからな。昔からの神にはとてもかなわない。


「だったら、歴史がある奴を呼べばいいな。」

俺は彼を召喚することにした。共に肩を並べて戦うために。


全ての因縁にケリをつける時が来たのだ。


ちょうどいい、消化不良だったところだ。


ぶち殺して…いや、ぶちのめしてやろう。幸い、俺も憤怒の魔神状態が解除されていない。これは千載一遇のチャンスだ。彼が到着するわずかな時間にそんなことを考えた。


最終決戦だな!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ