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捨てられ勇者の異世界ボッチ放浪譚  作者: 雨森 時雨
第4章 女神が動き出したようです、面倒です、逃げましょう!
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第11話 闇の女神、色々考える

新年あけましておめでとうございます。


今年も、完結目指して頑張りますので、よろしくお願い致します。



ああ、頭が痛い。


あの馬鹿姉が動き始めた。でも、それを止めるわけにもいかない。私達二人には、相互不干渉の盟約がある。お父様が決めたことだけれど、決められていて正解だと思う。


そうでなければ、何回あの馬鹿姉を叩きのめしていたか。私たち最高神の二柱が大喧嘩すればこの世界は間違いなく荒れ果ててしまう。それだけは避けたかったのだろうか?お父様の、考えは分からないけれども、まあ、私とあの馬鹿姉のそりが合わないのは確かだ。


馬鹿姉は過保護に過ぎるのだ。


だからこそ、人間達も、おねだりすれば助けてくれるとばかりに、馬鹿姉を利用する事を覚えてしまった。


縋りついて、腹の底ではほくそ笑んでいる人間達。


縋りつかれることで機嫌よく、頼まれ事に応じてしまう馬鹿姉。


どっちもどっちだ。そうしている間に人間達が自分で招いた勇者の一人であるユウジによって帝国が滅ぼされたのは当たり前のことかもしれない。自分達の都合の良い道具扱いしようとしたところ、私の力を宿していたからと言って排除したのだから。闇属性の魔法を扱えるものは、私の加護すべき大事な保護対象なのだ。なぜ、ユウジがあの馬鹿姉の魔法でなく私の属性を宿していたのかは不明だけれども。そうでなければ、彼は普通に勇者として戦えただろう。でも、それはできなかった。なぜなら、私が象徴となっている闇の力を身に宿してしまったから。


基本的に、この世界の人間達には闇に対する適性が無い。


光の女神である馬鹿姉が保護しているからだ。お互いに干渉しあわないように、獣人達や亜人達にも光属性の適性は無い。回復魔法などは無属性であるのだから。まあ、とは言っても無属性魔法を専門に学ぶよりも大地の力を借りて回復魔法を使った方が効果は上がるのだけれども。精霊術でも四大属性の精霊以外はいない。光と闇の精霊は作られていないし。私達二人の女神の手助けになるようにと四大属性の精霊しか作られなかったのだ。


実際、あの馬鹿姉が精霊の事を軽んじているので、人間達に精霊魔法に対する適性を余り与えなかった。その結果、人間側の大陸のうち多くの地域には精霊が住み着かなくなった。まあ、北の蛮族とされている者達を守るために多少は住み着いているようだけれども。あの古き民達も、光の女神である馬鹿姉を崇めずに四大精霊を崇めることからそうした不遇な扱いを受けているのだけれども、彼らは後悔している様子もない。


彼等は魔法が使えなくされているけれども、精霊術は問題なく使えるのだから。


私からのせめてもの救済措置だ。さすがにあの魔境ともいえる極寒の地を精霊術もなしに生き残るのはかなり厳しいものがある。一年のうちの半分は氷河によって閉ざされている未開の土地だから。それだけ、悪い環境に追いやられても彼等は四大英霊への信仰を止めることはしなかった。それだけは、人間という種族の信仰心の強さというものに関心を覚えたものだ。


その結果、ユウジの配下である中級邪神が暗躍。まあ、見事なまでにかつての帝国跡地に彼らを案内したものね…。ユウジがけしかけた魔物を撤退させれば、そこは手つかずの大地だもの。かつては人が住んでいたから、建物は一通り残っていたし。改築すれば使える程度の破壊しか行われていなかった。


あの辺も、ユウジは意識して行ったのか、たまたま偶然の成果だったのか?


あの子も大概評価が難しい。というか、今では魔神にまで上り詰めてしまった。予想以上に進化する速度が速い。私があの子に行ったのは、スキルを覚醒することだけ。本当にそれ以外は何もやっていない。復讐心の強い子だったから、状況に応じたスキルが覚醒したのはたまたまだ。


あの、猪型の魔物に喰い殺されていた未来もあったろう。でも、彼はそれを打ち破った。規格外のスキルを覚醒させるといった方法で。絶対復讐なんて物騒なスキルは彼以外に発動させたのは、過去に一人だけだ。それも、過去に居た勇者だった。その子も邪神となって今では世界の外にまで出て行ったけれども。あの子だって元々は…私が様子を見ていた子だった。


女の子だったから、まあ、本当に危ない時には助けてあげたけれども。あの子も今はどうしているのかしらね?時々は、報告が来るけれども。どこそこの世界の人間達を滅ぼしたらしいとかいう、他の神様から連絡で。大体、勇者を召喚するような世界の人間は容赦なく滅ぼしているわね。この世界には帰って来たくないから、帰って来ないのでしょうけれども。


ユウジと組んだら、本当に手に負えないかもしれない。


あの子との相性はいいはずだもの。


ユウジもあの子も自分が第一で、他人はどうでもいい。自分の身内は大事にするけれども、他人は他人。身内が大事にしている他人でもなければ、絶対に助けはしない。…恐ろしく似通っているものね。本当に、あの子が外の世界に行っていて、良かった。


そうでなければ、今頃は魔神連合なんての物ができているかもしれない。冗談抜きで、あの子だって、魔神になるだけの強さと性格と適性があったから。


それを差し引いても、ユウジとあの子は相性が良かったはずだ。同じ見捨てられた者同士という点も含めて。今は置いておくとしようか。問題は、あの馬鹿姉が動き始めたという事だ。馬鹿姉が動いている時点で事態は望まない方向に行くことは分かりきっている。せっかく、ユウジが今はだんだんと人間性を獲得しつつあるのに。ただの強さだけが突出した状態の魔神など取るに足らない災厄でしかない。その気になれば、私が一人でも潰せるだろう。だけれど、せっかく魔神にまで上り詰めたのであれば、貫録を身に付けて欲しいとも思うのだ。人間でありながら、種族を何度も変えて、魔神にまで上り詰めるなんてことは聞いたことが無い。


かつてない成功譚であり、聞きようによっては英雄譚だ。


だからこそ、ユウジには人間性を回復してもらいつつ、魔神としての貫禄を身に付けて行ってもらいたい。さすがにこれ以上、こちらの世界の事情で振り回すのも気が引ける。一度、召喚された者は二度と帰ることができないのが制約となっているからだ。何せ、元の世界には全くなかった、魔力やステータスなどのこの世界特有のシステムに馴染ませるために魂を分析して、肉体を解析して、精神を変容させているのだ。


元の世界に帰っても、今度は馴染めなくなっているだろう。


敵は全て殺す。逆らうものは殺す。悪は滅ぼす。自身に危害を加える者は敵。生き抜くことこそが最善。強くなるのが正義。弱くなるのが悪行。力のある者は何をやっても許される。力が無いものは何をされても仕方が無い。奪われたくなければ強くあれ。王族、貴族など尊い血筋の者に危害を加えてはならない。


といった、倫理観の改造を行っているのだ。彼らがいた元の世界に帰った場合でも鍛えられたステータスは変化せずにそのままだ。まあ、魔法は使えなくなってしまっているだろうが、肉体的には十分な凶器になるだろう。彼らがやってきた世界にある、核兵器とやらならば、彼らを殺すことも可能だろうが。


そんな改造を施された魂などを持ち帰られては元の世界側の神とて困るはずだ。よって、異世界召喚された人間は決して元の世界に帰ることは無いという契約の下にこちら側の世界の人間が異世界の人間を召喚するのだ。そして、向こうの世界から人間を奪う分だけ、こちらの世界の神は召喚によって干渉されることで乱れた事象の分の慰謝料として神格をこちら側の神から奪えるのだ。異世界召喚など本来であればする必要のない儀式だからこそ、神同士も罰則を与えることができるようになっている。他所の世界に干渉することは神同士でも厳禁されていることなのだ。


自分が管理する世界以外には干渉しないというのが神同士の基本的な契約となっている。


だが、それを家の馬鹿姉は4度も破っている。だからこそ、今の姿なのだろうけど。昔の1000分の1も力は残っていない癖に威勢だけはいつだっていいものだから、参ってしまう。あの、猪突猛進さは誰が設定したものか?多分、本人特有の物だと思いたい。


さて。ユウジには知らせてあげないと。


私が先に彼を保護できれば、女神同士の契約によって彼にすぐに仕掛けられるようなことだけは避けられるから。


不出来な姉を持つと妹がいつだって苦労するのだ。もしかして、お父様は不出来な姉と、苦労性な妹という構図を作りたいと考えたからこの性格設定にしたんじゃないだろうか?


仕方が無い、役割でないにしても、私が姉の凶行を止めなければならない。あんなのでも、姉は姉。はぁ、癒しが欲しいものね。


ユウジは見ていて面白いけれど、悩みの種でもあるからね。


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