旅行のはじまり
読んで下さってありがとうございます。
膝掛けは思ったより早く仕上がった。次の日は夜勤明けでお休みで、リルティはメリッサと本の感想を言い合ったり、お茶をしたり、楽しく過ごせた。
その日のフレイア王女は、王様と王妃様とお兄様お二人と楽しい時間を過ごしたとセリア・マキシム夫人に聞いた。
なんと膝掛けは「リルティとメリッサが編んだの。わたくしは、この毛糸を選んだの。お父様大事にしていただける?」 とおっしゃったそうだ。それを笑いながら、「ぬくそうだな。今度二人には褒美のおかしでも差し入れよう」といってくださり、喜んでくれたといっていた。
なんともフレイア王女らしいなと、メリッサと笑った。
食堂でご飯を食べにいくと、酷くきつい視線を送られたり、「はしたない」「よくまぁあの顔で」と嘲られたり笑われたりしたが、思ったよりは酷くなかったと思う。まだ第二王子が王宮に戻られてそれほどたっていないので、強烈なシンパなどがいなかったからだろうとメリッサは、プリプリ怒りながら、言っていた。
リルティは、なんとなく自分のことのような気がしていなかった。どこか他人事で、明日の準備のことなどを考えていた。
初めてメリッサと離れるのだ――不安がないはずがない。
「大丈夫よ。あなたはもうちゃんと侍女としてやっていっているのだもの。王太子殿下の侍女といってもイレギュラーなんだし、そう難しいことは言われないと思うわ」
そうだ、気楽にいってらっしゃいとセリア・マキシム夫人も言っていた。
「行ってくるわね。お休みももらえるっていってたから、何かあったらお土産買ってくるわね」
そういうと、メリッサは笑いながら、「じゃあワイン」とねだった。今からいく王太子のバカンスの場所はワイナリーのあるところなのだ。小さな城があるが、それは狩りなどに使われる城館だった。
「期待しないでね」
「リル、ほら、胸張って」
あれから少し俯きがちなリルティにメリッサは気付いていて、そうアドバイスする。
こんな素敵な友達がいて、私はなんて幸せなんだろうとリルティは思った。
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この国はゴットホルト王国という。王都アウレリアは、温暖な気候で年中比較的過ごしやすい。北は海が広がり、海の幸が豊富だ。
リルティは、南にある自分が住んでいた父親の所有する領地のほかは、少し離れたところにある伯爵領である大きな街イレーネくらいしか行ったことがない。
王都は人が多く、リルティのような田舎者からしたら、とても大きく怖ろしいところだった。ぼんやりしていたら、手にはキャンディとかパンが握られていて、お金が減っていることもある。買った覚えはないのだけどいつの間にかそんなことになっていて、それからあまり街にでることもなくなった。お使いなどはメリッサが一緒だから怖くない。彼女は、それこそ気が付いたら値切っていて、半額で買っていることもあって、酷く驚いたことがある。
「リルティは、ザーラに行ったことはあるのか?」
リルティは、この状況に先程から、王都に来るまでのことを思い浮かべて逃避していたのだが、声はそれすら許してくれなかった。
「あ、ありません……」
声が上ずるのは許して欲しい。どうして、こうなった――?
何度、自問自答しても答えは出なかった。
「すまない。今日決まったんだ」
何が――?どれが――?
ライアン王太子が申し訳なさそうに謝ってくれたが、リルティは混乱した頭の中で呟くことしか出来なかった。
馬車の中に人数は四人。リルティ、王太子、王太子の側近の方、そしてジュリアス王子だった。
「何故、私がこちらの馬車に……?」
何度も何度もこの中身をみた瞬間から嫌だと、身分が違うといって拒否してみたが、リルティの勢いでは、ちょっと困ってるくらいにしかみえなかったのだろう。時間がないからといって、押し込められてしまった。
「ああ、急だったので、馬車の準備がね。出来なかったんだよ」
それなら、行かなくてよかった――。フレイア様の横でメリッサと一緒に本を読んでいるほうがどれほど、心休まったか。
「ジュリアス王子殿下がいらっしゃるとは……」
「それは、先程決まったんだよ」
「先程……?」
「ああ、三十分ほど前だ――」
ライアンも眉間を押さえて、溜息交じりに呟いた。
「ん。リルは、嬉しくて声もでない? それなら無理いってついてきた甲斐があるってものだ」
人を苛めて楽しんでいるのだろう、リルティはキッと睨みつけてしまい、そこが王太子の前だと気が付いて、言葉を飲み込んだ。
「髪飾りはつけてきてくれなかったんだな」
それが原因で、こんな居心地の悪い目にあったというのに、つけてくるわけがない。
けれど、実は壊さないように大事に箱の中に保管している。意地悪でくれたとしても、異性にプレゼントされたのは初めてだったのだ。本来なら嬉しくて小躍りしててもおかしくないくらいだったのに。
ジュリアスの言葉が、少し残念そうだったので、リルティは目線を膝に落とした。
「お前は……、少し黙ってろ」
ライアンは、リルティの困ったような顔に気付いて、ジュリアスを嗜める。ジュリアスもそれ以上はなにも言わなかった。
ただ、下をむいたリルティを窓から外をみる振りをしてずっと見つめていることに、リルティ以外は気がついていた。
予約するの忘れて寝ました……。
メリッサもトゥルーデもお留守番ですw。なぜなら突っ込み要員が多すぎて、話が進まないことに気付いたからです><。もうちょっと距離感が近くなるといいなと思ってます。
ご指摘いただいて、薔薇の髪飾りはなおすから保管するに変更しました。
大阪弁を日常で使っているので、気付かなかったんです。気になるところとかあったら教えてくださいね。
ありがとうございました♪