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午後十時の王子様  作者: 東雲 さち
本編―離宮の輪舞―
27/92

王子様からのお土産

読んで下さってありがとうございます☆

 四人でお茶をした後、リルティは一人で本を読んでいた。

 メリッサに借りた恋愛小説で、主人公は侯爵家のお姫様だった。王子様とゴールインしたと思っていたのに、王子様の心変わりで失意のために修道院に行ってしまったところで次の巻に続いていた。続きが気になるが、持ってきていなかった。


 なんて酷い王子様だろうかと、リルティは憤慨する。黒い髪に黒い瞳……あら、誰かに似てるわとリルティは思った。


 そういえば、今日お茶をした令嬢達は、王立の学院の生徒だということだった。昨日の夜、王太子さまの周りにいた第一グループとリルティが名づけた人々のほとんどは、その頃からの級友らしい。


「でもジュリアス様は王立学院には入られなかったの。だから、ここにいる人達の中で少し距離を置いているでしょう」


 そうジョセフィーヌは言っていた。二十五歳のライアン王太子と彼女達は直接の面識はないが、やはり同じ教授に習っていたこともあって、少し親近感がある。


 ライアンには婚約者がいるが、他の男性たちはまだ決まったお相手がいなくて、ライアン王太子を囲む親睦会という形で同じような階級の男女を集めた集団お見合いのようなものなのだという。だから、男爵令嬢だといったので驚いたらしい。


 リルティも色々端折ってだが、ここに招待された理由を言った。


 フレイア王女の膝掛けのこと、たまたま声を掛けてきたジュリアスに驚いて怪我をしてしまったこと、褒美と休養を兼ねて招待してもらったことを言うと、三人は驚きながらも納得してくれた。


「王女様、素敵な方なのね」


 フレイア様のことを褒めてくれたマリアンヌに私は大きく頷いた。


「とても頭がよくて、私達のこともとても親身になってくださる優しい方なの」


 リルティは嬉しくて、フレイアの素敵なところを沢山話した。いつもメリッサと話しているからいくらでも出てきて困るくらいだった。


 三人は聞いた後に「リルティは王女様のことが大好きなのね」と声を揃えた。


 後で少しだけ恥ずかしくなったが、それは三人が帰って静かになってからのことだった。




 帰ってきたジュリアスは、寛いだ格好に着替えてから、リルティの部屋を訪れた。


「はいってもいいか?」


 ジュリアスは、グレイスに聞いて、リルティの了解をとってから部屋に入った。


 リルティは居間で手紙をかいていたが、ジュリアスの訪れで、紙をしまい立って迎えた。


「邪魔だったか?」


 いいえと首を振ると、ジュリアスはリルティの手の甲に触れないように気をつけて挨拶のキスをした。


 目の端で、グレイスを見ると彼女はそれでいいと頷いていた。


「今日は視察だったんですか?」


 ジュリアスはリルティが暇をしてるだろうと思ってきてくれたようだった。


「ああ、気を遣った……」


「ライアン様に苛められたんですか?」


 昨日のことを思い出してそういうと、ジュリアスは少し目線を天井に移した。


「あー、昨日のことな……。ライアンは二人の時以外は、意地悪はしないんだ。俺のイメージもあるしな。やはりライアンが一緒の視察は、刺客や事故に巻き込まれないか気を揉むんだ。特に俺が一緒だとな」


 そういえば、よく狙われるといっていたなとリルティは思い出した。あの襲われていた男の子の時だ。


「大丈夫なんですか? ジュリアス様は……」


「俺は大丈夫だ。俺は強いよ」


 ジュリアスはそう言ってリルティにウィンクをした。美男子がそういうことをすれば、どれだけ格好いいかリルティは初めて気がついた。美形な叔父で慣れているが、叔父はウィンクなんてリルティにはしない。


「ミッテンもいるしな」


 側近の名前がでて、そういえばゲルトルードもミッテンも見ていないなと思う。会っていないだけだろうか。


「ミッテンは、この城館の警備にあたってもらっているんだ。あいつは誰よりも強い……」

 少し悔しそうにジュリアスはそう言った。


「強い方に護ってもらえて安心ですね」


 リルティの言葉に、少し考えてからジュリアスは「そうだな」と少し寂しそうに言った。 少しその言葉が気になって、聞こうと思ったが、ジュリアスは紅茶に砂糖とミルクをいれてかき混ぜて一気に飲んだので驚いて聞けなかった。


「熱くないですか?」


「リルは、猫舌か」


 頷くと「可愛いな」とジュリアスは微笑った。その言葉に少し頬が赤くなったが、リルティは思い出したようにお礼を言った。


「栗のケーキありがとうございました。とても美味しかったです」


 思い出すだけで笑顔が溢れる食べ物というものはある。


「喜んでもらえたなら、それでいい」


 リルティは、今日来た三人のことを話した。直情型のシンシアの事。優しくて可愛いマリアンヌのこと。賢くて綺麗なジョセフィーヌのこと。


「ああ、学院に通っている子たちだな。仲良くなったのか」


 ジュリアスは自分のことのように喜んでくれた。


「ライアンが学院に入ったから俺も行けると思っていたんだが、騎士団に入れられた。楽しかったけどな。ライアンと一緒に勉強したりしたかったな」


 内緒だけどなとジュリアスは秘密を打ち明けるように、リルティにそう言った。


「今日は一緒に視察に行けてよかったですね」


「ああ、楽しかったよ」


 ジュリアスは、ポケットから小さな袋を取りだして、リルティに「お土産だ」と渡した。


「見てもいいですか?」


 許可をもらってから、紙の袋を開けると、植物や果物の刺繍が入ったハンカチが入っていた。


「もらってくれ」


 ジュリアスの顔が少し赤くて、意外に思いながらもリルティは喜んで受け取った。



 二人が楽しそうに話をする姿をみて、グレイスは嬉しそうに微笑んでいるのだった。

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