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午後十時の王子様  作者: 東雲 さち
本編―離宮の輪舞―
26/92

王子様は好物を用意する

読んで下さってありがとうございます☆

 昼からジュリアスとライアンは視察に出かけたらしい。

 アンナからそう聞いて、リルティは庭でお茶を頂くことにした。せっかくのバカンスなのだから、楽しまなくては損だとアンナに言われて、その通りだと思ったのだ。

 持ってきた読みかけの本もあることだし、天気もいいし、絶好の日向ぼっこ日和だ。


 暖かい午後の日差しの中、リルティが庭でアンナにお茶を入れてもらっていると、そこに昨日知り合った三人の令嬢がやってきた。どういう対応をすればいいのかリルティは少し迷ったが、ここへは侍女として来たのではないといわれていたので、男爵家の令嬢として対応することにした。


「突然お邪魔してごめんなさい」


 昨日親切にしてもらったマリアンヌが、そう言って挨拶してくれた。お馬鹿といわれていたシンシアと理知的な感じのジョセフィーヌも礼儀正しくお辞儀した。


「ようこそ、どうぞゆっくりなさって」


 リルティが勧めると皆、丸いテーブルを囲んだ。


「すぐ用意させます。少しお待ちくださいませ」


 アンナはそう言ってメイドに命じてお茶菓子とティーセットを用意させる。


「ごめんなさいね、先触れもなしに来てしまって」


「あなた、午餐の席に来なかったから、どうしたのかと思ってきたのよ」


「シンシア、昨日あなたを苛めてしまったから来ないんじゃないかって……」


「ちょっと、そんなこと言ってないわよ! ちょっと言い方がきついのはわかってるのよ……。でもあなたも断らないから……」


 次々に言われて、リルティは少し面食らった。まさか午餐にでなかったからといって心配してもらえるとは思ってなかったからだ。

 午餐は、まだ調子が悪いということにして一人で部屋で食べたのだ。


「ごめんなさい。心配してくれたのね」


 そうリルティが申し訳なさそうにいうと、シンシアが「心配してないわよ! ちょっとどうしてるのかなっておもっただけで……」と言う。


 シンシア以外の三人は思わず笑ってしまって、シンシアは真っ赤になってしまった。


「でも、昨日のダンスはびっくりしたわね」


 ライアン王太子と踊ったことかジュリアス王子に連れ去られたことを驚かれているのかと思っていたら、違ったようで、リルティはホッとした。


「貴女、とても優雅だったわ」


 ジョセフィーヌは、昨日と違って眼鏡をしていたけれど、それを少し上げて掛け直してそう言った。


「え……あ、ありがとうございます」


「ええ、素敵だったわ」


 足が痛くて、そんな綺麗に踊ったつもりはなかったけれど、そういわれたら嬉しくなってしまう。赤くなったリルティにクスクスとジョセフィーヌとマリアンヌは笑って、お茶を飲んだ。


「貴女、王宮で侍女をしてるって聞いたけど」


 やはり、噂は流れているようだった。本当のことなので、リルティは頷いた。


「フレイア王女殿下にお仕えしております」


「やっぱり王女殿下に仕えてると立ち居振る舞いまでちがうのね」


 ジョセフィーヌは、興味津々のようだった。


「行儀見習いとして王宮で仕える人も多いっていうものね」


 そんな大したものではないが、確かにそういう目的で王宮に伺候している人達も多い。フレイアに仕えるものの中には、伯爵令嬢などもいる。


「ていうかなんでジュリアス様は貴女を抱いてどっかにいったの?」


 やはりそこは、空気の読めないシンシアが尋ねる。


 ウッとリルティは詰まってしまった。二人もちょっと乾いた笑いをもらしてシンシアを見る。


「ごめんなさいね、この子馬鹿だから……」


 ジョセフィーヌは、そう言ってシンシアを怒らせた。


「温室へ……」


「温室?? 貴女まさか……」


 三人がゴクリと息を飲むのを感じて、リルティは息を詰めた。


「求婚でもされたの?」


 マリアンヌが、ボウッと夢見る瞳で聞いてきて、シンシアは目を輝かせ、ジョセフィーヌは頭を抱えた。


「え? ええ??」


 リルティは戸惑いながら、なんでそんなことに……と、思ったが「葡萄を見せてもらいました」と言うと、明らかに三人ともガックリと肩を落とした。


 マリアンヌとは違う意味で、ジョセフィーヌは何かを期待していたようだった。


「葡萄なんかみて何がいいのよ?」


「今の時期に葡萄がなってることがおかしいのよ」


「でもあんまり乙女チックじゃないわ……」


 三人三様だが、あまりお好みのシュチュエーションではなかったらしい。

 リルティは戸惑いながらだが、この三人とお喋りしているのは嫌ではなかった。


「お茶とお菓子の用意ができました」


 アンナが栗のケーキをお茶請けに紅茶を用意してくれた。


「あら、美味しそうね」


「ジュリアス様がリルティ様のために用意されました」


 アンナは、そう言って上品に作られた栗が沢山入っているチョコケーキを切り分けてくれた。グフッと、リルティはなにもないのに咽てしまった。


「「「ジュリアス様が? リルティ様のために?」」」


 三人は声を揃えて驚いたが、リルティも同様だった。


「リルティ様が栗が好きだとおっしゃって。料理長に作ってもらったんですよ」


 なんで私の好物を知ってるのかしら? とリルティは不思議に思った。ジュリアスに話したことなどないはずなのに。叔父様に聞いたのかしら? と、考えながら一口食べると、唸りたくなるほど美味しかった。


「「「「美味しい……」」」」


 四人は、もだえるようにそう呟いた。


 アンナはリルティが楽しそうにしてるのが嬉しくて、自分も楽しくなって四人の話を聞くのだった。


やっぱり女の子を書くのは楽しいです~♪

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