俺の小さなお姫様
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俺には、血のつながらない歳の離れた義兄がいる。
だが、あえて義兄ではなく兄といいたい。
兄の父の後添いに母が俺を連れて、家に入ったからだ。
義父は、レイスウィード男爵家の当主だ。
小さな領地は平和なだけの田舎で、ゴットホルト王国の王都アウレリアからは馬で五日程かかる。領地は村がいくつかと町が一つ。それだけだ。それでも、義父も兄も領地を愛しているし、領民も真面目だし、領民を気遣ってくれる領主を尊敬している。
残念ながら義父と母の間に子供はできなかった。義父も俺を可愛がってくれたし、兄も大事にしてくれた。幸せな幼児期を過ごせたと思う。
十四歳になったとき、母が「一応お前の父親は騎士団にいるから、嫌じゃなかったら、お前も入りなさい」と言われた時は、なんの冗談かと思ったが、それは道としては悪くなかった。
ここは小さな町だし、あまり兄の役には立てそうもなかった。うちの家はどちらかというと文官体質で、質実剛健というよりは、ペンは剣よりも強しといった家風だったので、一人くらい騎士になっていれば有事の際に便利かなと思ったのだった。
王都で会った父は、俺に似ていた。髪は茶色だったが、瞳の色は紫で、なんというか優男だった。
なるほど、小さい頃から「この愛らしさは天使か」と言われていたのはこれの血かと、納得した。
俺は、昔っから、老若男女問わず、愛される体質だった。母はそれを見て、いつも深い溜息をついていたが、この父をみれば理由はわかるというものだ。
父の女癖の悪さが、離婚の原因だったらしい。
今になって何故、父がいるから騎士団へ行けといわれたのかも理解した。この父をみて、自分の将来を考えろといいたいのだろう。
とはいえ、俺はレイスウィードを名乗っているし、父と深く関わるつもりはない。
全然、覚えてなかったしね。
義父と母と兄とその妻と姪甥が、俺にとっては大事な家族なんだ。
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兄には、五人の子供がいる。長女、長男、次男、次女、三女。次女が生まれたくらいに家をでたが、俺は長い休暇の度に家に戻っていたから、どの子も自分の弟妹のような気がしていたし、実際みんな懐いてくれた。
ある日戻った俺に、三女であるリルティが、可愛らしい声で「おじちゃま」と呼んだ。
ショックだった……。
俺はまだ二十一歳で、おじちゃまといわれる年ではなかったはずだ。なんてことだ。この前までは「お兄ちゃま」と呼んでくれていたというのに。
衝撃から立ち上がれない俺のために、義姉は娘に聞いてくれた。
「どうして、お兄ちゃまじゃないの?」
リルティは、とても愛らしくピンクのワンピースの端を掴んで、理由を言った。
「だって、お兄ちゃまは二人いるでしょう? でもおじちゃまは一人しかいないの。おじちゃまのほうが、特別だと思うの」
「おじちゃまでいい――。二十一歳だが、もうおじちゃま以外は受け付けん!」
姪に特別だといわれて、嬉しくないはずはなく、俺がそう断言すると、リルティの横にいた義姉が物騒なことを言う。
「テオ、貴方、血のつながりはないからいいけど、この子が大人になるまでに手を出したら、殺すわよ」
義姉は、怖ろしく殺気だった瞳で俺を見た。
「義姉さん、俺はそんな趣味はない」
「そう願うわ」
呆れたような顔で見るのは止めて欲しい。
俺は純粋に、兄の娘であるリルティを可愛いと思う、ただの姪馬鹿なだけなんだけどな。
まぁ、でも、リルティが連れてきた男を腕試しくらいはするだろうし、結婚式には号泣するだろうとは思う――。
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リルティを王宮に呼んで、二年が立つ。
リルティに交際を申し込むやつは、俺のところに来い、俺を倒してから、その手をとるがいい――。
そう言って、ばっさり切ってたんだけど、今日怖いことを主であるライアン王太子に言われた。
「ジュリアスはお前に挑んできたか?」
その言葉の意味を考えて、俺は声を失った。
姪をだしに手合わせして、どちらが勝つか博打してた罰があたったのだろうか。まぁ、その博打の勝ちでリルティとあちこちに美味しいものを食べ歩いていたから、怒りはしないとおもうのだが、リルティは、義姉の血をひいているからか、普段は大人しいくせに、怒らせると怖い。
もうリルティもそんな歳になったのだなぁと感慨深いが、あの漆黒の王子様と手合わせするのは勘弁してほしい。相当な手練だと聞いているし、怪我をさせるのもマズイ。
俺は自業自得ながら、大きな溜息を吐くのだった。
リルティの叔父様サイドのお話。
テオは兄と十歳違いで、兄は十八で結婚十九歳で長男に恵まれました。
「ジュリアス」うんぬんは、ライアンの前でリルティがキスされたので確認のためです。ジュリアスは、リルティに会う前は隣国にいってたので、「俺を倒してから―」は、知りませんでした。
また、説明してますよ~~><。