俺たちは・・・・・・
初めまして。鈴木芳と申します。まだまだ未熟者ですが、頑張らせていただきます。どうぞ宜しくお願いします。
さっきからパソコンのキーボードを打つカタカタという音が聞こえている。そうだな。約3時間くらい聞いている。慣れてきたその音を発しているやつの体が心配になってきたので、そろそろ声をかけるとしよう。
「おい、和也。いい加減休んだらどうなんだ。今日はもう1人見つけたんだ。十分だろ?」
和也の双子の兄俺、和樹はこの世で唯一肉親の弟に話しかける。3時間近く同じ姿勢でパソコンの画面をみてるなんて体に悪いだろう。全く、もう20歳なんだから自分の体くらいちゃんと管理しろよ。
「だめだよ、和樹。ようやく"ひかる"が見つかったんだ。あと1人、あと1人いれば俺たちは本当の家族になれるんだ」
こちら背を向けたまま和也が応える。
「あとは"かおる"だけだ。きっと見つかる」
猫背な和樹はどこか哀愁を漂わしながら自分自身に問いかけるようにそう言った。自分を励ましているように聞こえるその言葉通り、最後1人、見つかってほしい。
------けど保証はない。"かおる"が見つかる保証も、"ひかる"と"かおる"が俺たち小林和樹、和也の家族だという保証も。
10年前両親が離婚した。それと同時に俺と和也は同じ施設にあずけられた。そのまま2人でずっと生きてきた。それまではお互いにお互いがこの世界で唯一の家族だと思っていた。そう、俺たちの両親の知り合いだと名乗るあの男が現れるまでは。
俺たちは1ヶ月前に滝沢と名乗る男に、バイトの帰りに声をかけられた。その、滝沢ってやつは両親の知り合いらしく俺たちに話があると言ってきたので、仕方なく話を聞くことにした。
「君たちが和樹くんと和也くんだね?いやあ、まさか本当に東京にいるとは思ってなかったよ!探した甲斐があった。ああ、申し遅れたね、私は君たちのご両親の友人の滝沢重典だ。しかし、和樹くんはお母さんの由利似で和也くんはどちらかというと、お父さんの和弘似だねえ」
いやあ、実に面白いとゲレゲラ笑う滝沢さんに顔をしかめながら俺は口を開いた。
「で、話ってなんすか?俺たち一応大学生なんで明日も早いんですけど」
和也が俺のことを睨んできた。目が合う。“滝沢さんに失礼な態度をとるな”か。全く、本当にこいつは。天然なんだかお人好しなんだか。
「ああ、ごめんね和樹くん。それが君たちをずっと探していたんだよ。私は君たちのご両親が亡くなる前に頼まれてね。君たち2人が暮らしていける資金の援助と、君たち以外の君たちの家族のことをね」
そう言うと滝沢さんはやっと言えたと言わんばかりに、ふぅ、と安易のため息をついた。
どういうことだ?俺たちに資金?遺産か?母さんと父さんが死んだ?
聞きたいことが次々と出てきたが俺の頭の中には1つの疑問しか浮かばなかった。
------俺たち以外の俺たちの家族------
そして俺は、資金の話よりも俺たち以外の家族の話が出てきたときに目を見開いたまま、今もなお驚き続けている和也に釘付けになってしまった。
次回へ続く
最後まで読んでくださりありがとうございました。