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 始業式だったこともあり、あれから簡単な授業とテストを終えたあと、早々に解散となった。俺と夏希は健を校舎裏に呼び出した。

 そして、優しい顔で言った。

「健、ボコるぞ。早く答えろ、しばくぞ。どこから聞いた?」

「冬木くん、圧殺しますよ。早く教えてください、絞殺しますよ。どこまで聞いたんですか?」

「敬語なのに、後者の方が怖い」

 健は震えながら、答えた。

「いや、だから、夏希ちゃんの魔法にかかったら心を覗けるって……」

「覗けるって……覗かれるんだぞ」

「おお、それはそれでゾクゾク……」

 夏希の鋭い視線を感じて健は黙った。

「で、他には?」

「えっと、本当は大して何もわからなかったんだけど、あの場ではああいうのがお決まりかなと……」

 おお、コイツも頭を使う時があるんだなとかちょっと思ったが、大した事では無かった。

 夏希は「ほっ」と息を吐いて続けた。

「では、それだけなんですね?」

「うんうん! だから、問題なしっ!」

 まぁ、例え全部こいつに知られたところで害は無さそうだけどな。

「じゃー僕、そろそろ用事あるから行くね!」

 そう言って、俺たち二人のくぐり抜けたあと、手を振って言った。

「ばいばい、夏希さんと春人く(・)ん(・)」

「は、おい、ちょっ……」

 俺がセリフを言う前に、隣で夏希が何かを呟いたかと思うと、目の前の健は凍り付けになっていた。

 そして、笑顔のまま俺に向かって言った。

「そうだ! ねぇねぇ、春人!」

「お、おう、どうした?」

 何か名案を思いついたように言う夏希に、俺は恐怖を感じつつ、応じた。

「この氷、壊してもいい?」

「……やめてあげてくれ」

 死んじゃうから。



 数分後、夏希が俺をくん付けで呼んでいたという事実を絶対に言わないという約束……もとい契約を夏希と結んだあと、健は帰って行った。

 しかし、あいつの生命力には驚かされるな。

 バカだけど。

「ま、とりあえず、俺たちも帰ろうか」

「そうね」

 そう言って帰ろうとした瞬間、俺の携帯が鳴った。

「わりぃ」

 俺は携帯の画面を見たが、知らない番号からだった。と言っても、登録している人数が少なすぎるだけだが。

 とりあえず、通話ボタンを押し、耳に携帯を押し当てた。

 通話口からは、か細い女の子の声が聞こえてきた。


『あ、あの、一年の赤毛です。桐生先輩の携帯電話でよろしいでしょうか?』

さっきの一年生の子か。

『ああ、あってるよ。どした? さっきの子が目を覚ましたのか?』

『あ、はい、目は覚ましました。それで、色々聞いてたんですが、私一人じゃ処理しきれなくて……』

『いま、どこにいるんだ?』

『さっきの保健室です』

『わかった。今から行くから、ちょっと待っててくれ』


 そう言って通話終了ボタンを押した。

 俺は横で静かにしていてくれた夏希の方を向いた。

「わるい、夏希。急用ができた」

「今の電話……」

「ん?」

「今の電話、誰からですか?」

 なぜ敬語?

「ああ、一年生の子だよ。今日ちょっとあって……」

「へぇー、もう一年生の女の子に手を付けたんですね」

「いや、手を付けたって」

 駄目だ、ていうかこの不機嫌は確実に半分健によってもたらされてる。

 異世界初日から、すごい日だな。

 俺はとりあえず、潔く処罰されようと待っていたが一向にその気配はなかった。

「何してるんですか? その子達が待ってるんでしょ?」

「え、ああ。て、お前も来るのか?」

「ダメですか?」

「いえ、大丈夫です」

「よろしい」


 まぁ、そのうち機嫌は治るだろう。



 保健室の中に入ると、赤毛さんと蒼井さんが椅子に座って待っていた。

 俺がドアを開けた瞬間に「あ、先輩!」と元気に赤毛さんが言ってくれたんだが、夏希が入った瞬間「……がた」と付け足した。

 なかなかの反射神経だな。

 俺がベッドのそばに近付くと、蒼井さんに話を聞く前に赤毛さんが「あの!」と言った。


「ん?」

「その隣の、綺麗な方は……桐生先輩の恋人ですか?」

「ああ、いや、こいつは……」

「やだ、綺麗だなんて、お上手ですね! でもまぁ、そう見えるのならそれでもいいかもしれませんね」

「いや、ダメだろ!」

 俺が否定する前に一息に言い切りやがった。

 俺は一つ咳払いをして、丁寧に訂正する。

「こいつは、俺の姉さんで桐生夏希って言うんだ。今日の始業式で呼ばれてただろ?」

「「ああ、あの!」」

 蒼井さんと赤毛さんは二人共得心がいったようだった。

 隣で、「ちょっとぐらい……」とかぶつぶつ言っている奴がいたが、これ以上放置するとダメ女キャラが付きそうだから俺が遮って、早速本題に入った。

「それで、蒼井さんは何があったのかな?」

 俺のその言葉を受けた蒼井さんはひとつ深呼吸して、口火を切ってくれた。

「あの……ですね――」



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