第一章 第六話 介入
「おっしゃ! やってやるぜ!」
最初に攻撃したのは、真紅の機体であった。
背中のバーニアが、全力稼働で炎を吹き出す。
その勢いのまま、巨大バグに叩きつけられる拳。
背部の装甲に大きな亀裂が入り、バグが耳障りな悲鳴を上げる。
その間に、俺たちは再び『シンクロニシティ』を発動させた。
巨大バグの拘束が解かれる兆候を、結希と共有するためだ。
「(僕も、負けていられない! ここは大技を使う!)」
結希がバグに切りかかり、パスを形成する。
そこで生じた繋がりに、エネルギーを溜めこむ。
他のヒーローが攻撃している間に、攻撃エネルギーを最大までため込むようだ。
「新入生に、負けてはいられないぜ!」
二年生の中でも、別格の巨体をもつ機体が拳を振るう。
装甲の上からでも、内部に浸透する強烈な一撃。
真紅の機体が作った亀裂から、汚い体液が一気に噴き出した。
「これは、痛いよ~!」
さらに二年生の一人が、跳躍する。
着地したのは、バグの背中の部分。
亀裂を、持っている棒で無理やり「こじ開ける」ことにしたようだ。
さらに大きくなる、バグの悲鳴。
「(そろそろ、拘束がまずい! 結希、急げ!)」
必死に体を震わせ、拘束から逃れようとする巨大バグ。
鎖を使っているとはいえ、この体を拘束し続けるには、強度不足は否めない。
「(分かった! 行くよ、『托卵』!)」
結希の大技が、バグに炸裂する。
この技は、溜めたエネルギーが大きければ大きいほど、威力を発揮するのだ。
二年生たちが稼いだ時間は、最大までため込むのに十分なものであった。
爆発と言っても良いほどの、凄まじいエネルギーの奔流。
頭部を狙った攻撃は、一方の眼を完全に破壊し、脳に当たる部分にも相当のダメージを与えたようだ。
「(がんばれ)」
その時、不思議なメッセージが届いた。
結希の声ではない。
シンクロニシティを「ジャック」して、誰かが思いを届けたようだ。
「(今のは、一体何?!)」
「(分からない。考えるのは後だ、追い打ちに行く!)」
気になるのは、事実だ。
しかし、ここが勝負どころ。
考察は生きていれば、後からいくらでもできる。
俺は、前に出ることにした。
機体の右腕部に備え付けられた、銃の出番だ。
巨大バグに接近し、結希がえぐり取った部分に銃を乱射する。
深緑の機体も、それに呼応して黒い球を、その部分に叩き込む。
重い攻撃を受け、さらに削れていくバグ。
「(まずい! 久郎、緊急離脱!)」
結希の焦った思いが、こちらに届く。
必死に回避行動をとるが……バグの方が少しだけ、早かった。
拘束を無理やり解除し、全方位に向けて全力の衝撃波を放つバグ。
どうやらこれが、このバグの切り札のようだ。
それに巻き込まれ、吹き飛ばされる俺たち。
さらに真紅の機体も、攻撃寸前であったため巻き込まれる。
大きく吹き飛ばされ、俺たちの近くに落下した。
「ヒーリング・ウェーブ!」
紺碧の機体が、俺たちに回復魔法をかける。
しかし、すぐに動けるほど軽いダメージではない。
バグが、こちらに向けて衝撃波の狙いを定める。
絶体絶命の危機。
――その時、救いの女神が現れた。




