表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

第一章 第五話 反撃の構図

「3、2、1……『シンクロニシティ』!」


 結希と俺は、同時に歌い始めた。

 歌を通して、結希の思いが伝わってくる。

 それは、結希の側も同じはずだ。


 感覚、感情の共有。

 通信状態に左右されることのない、心による直接の会話。

 それがこの技、シンクロニシティの効果だ。


 今回選んだのは、俺たちがプレイしているオンラインゲームの主題歌。

 気分を高揚させるには、これしかない。


「(久郎、まずいよ! 二年生はともかく、新入生は完全に浮足(うきあし)立っている!)」

「(だろうな。俺も支援したいのだが……ワイヤーだけでは心もとない)」


 俺の機体には、ワイヤーが内蔵されている。

 自重を支えるだけの強度はあるものの、この巨大バグに対して有効とは思えない。


「(何か、もっと丈夫なものがあればいいのだけれども)」

「(丈夫な……それだ!)」


 結希の言葉で、一つの方法を思いつく。

 後は、行動に移すだけだ。


「(悪い、結希! あと一分、持たせてくれ!)」

「(分かった。出来るだけのことは、やってみる!)」


 俺は戦場を後にして、学校の校門に向かうことにした。


「おい! 戦いを放棄するというのか!」


 教師の叫ぶ声が聞こえる。

 もうすでに、後衛は何人も逃げているという状況だ。

 これ以上の戦線崩壊を避けたいという気持ちは分かるが……今の俺にとっては、ノイズでしかない。


 校門にたどり着く。

 そこには、チェーン式の侵入防止柵が備え付けられていた。


 俺は、それを適当な長さまで引き出す。

 そして、腰に装着されているナイフを取り出した。


 このナイフは、高速で振動する機能が搭載されている。

 それを発動し、背の部分にある、のこぎり状の部分をチェーンに押し付ける。


 凄まじい音とともに、数秒でチェーンは切断された。

 俺は全速力で、戦場に戻る。

 結希の必死の思いが、俺の背を押した。


 グラウンドにたどり着く。

 戦線崩壊は、確実に進んでいた。

 前衛でも、既に地面に倒れ伏した者が何人もいる。

 地面に流れている血の量からして、命を落とした者も少なくないだろう。


 後衛は、数人が中心となり、辛うじて支えているという状況のようだ。


 紺碧(こんぺき)の機体が放つ回復魔法は、波のように広範囲に力を及ぼす。

 膝をついていた前衛の機体が、再び立ち上がった。


 深緑(しんりょく)の機体が、ボールのような攻撃魔法を放つ。

 白いボールがバグの前足に当たり、攻撃が直撃することを防いでいる。


 そして、遊撃の真紅の機体もまだ、健在であった。

 だが、明らかに動きが鈍くなっている。

 エネルギー切れが近い状況を、何とか騙しつつ攪乱を続けているようだ。


 二年生も、完全に崩れてはいない。

 だが、前線が崩れた際の影響を受けており、かなりまずい状態に追い込まれているようだ。


「(待たせたな、結希!)」

「(大丈夫。何かやるのだったら、先に合図して!)」


 俺は、右手を高く上げる。

 結希はシンクロニシティを解除し、声を上げる。


「動ける者は、全員離脱! 急いで!」


 慌てて離脱する、前衛の機体。

 そして、巨大バグを相手に、俺の策が繰り出された。


 チェーンを「背骨」とし、ワイヤーを「肋骨」のように張り巡らせる。

 ワイヤー単体では、拘束するには力不足。

 だが、チェーンという太い芯を利用することで、拘束力は何倍にも跳ね上がる。


 羽の部分を含め、全身が無数のワイヤーとチェーンで拘束されるバグ。

 動きが完全に、止まった。


「今しかないよ! みんな、全力で攻撃して!」


 結希の声に、ヒーロー科の全員が呼応する。

 さあ、反撃の時だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ