第二章 第十八話 ハズレ職と思われていたもの
この『ブレイブソード』では、吟遊詩人はいわゆる『ハズレ職』扱いをされている。
効果が、フィールド全体に及んでしまうこと。
音楽が途切れると、効果が消えてしまうこと。
スキルによっては、長時間音楽を流すことが要求されること。
これらが相まって、吟遊詩人のメインとなる『呪歌』は、非常に使い勝手が悪いと考えられているからだ。
しかし、俺は疑問を抱いていた。
これだけの完成度を誇るゲームの運営が、単なるハズレ職を作るとは思えない。
ハズレに見えているだけで、何らかの隠し要素があるのではないか。
その一端が、今回明らかになったようだ。
HP0の状態になっても、持ちこたえられる。
この効果は、極めて大きい。
フィールド全体に及ぶことから、恐らく敵にも適用されるはずだ。
だが、更なるダメージを与えることで、倒すことは恐らく可能であろう。
こちら側の「保険」と考えれば、最高レベルの効果といっても過言ではない。
「さすがに、今日は終わりにするほうがいいと思うにゃ。銃のメンテナンス、結構時間がかかるからにゃ……」
マオが嘆く。
俺の武器である「銃」は、NPCの店では整備を断られてしまう。
そのため、発明家であるマオがメンテナンスを行うことになるのだ。
「分かった。安全な場所に移動しよう」
俺たちは『帰還の石』を使った。
設定した安全な場所に、一瞬で帰ることができるというアイテムだ。
ただし、ダンジョンの奥地では使えない場所もあるため、過信は禁物である。
いつもの喫茶店。
俺たちのアジトに、たどり着いた。
「今日の冒険はどうだった? 楽しめたのなら、良いけれど」
ニカが、カナに話しかける。
「面白かった。最後はダメだと思ったけれども、ちゃんと助けてもらえたし」
最後の事件で、トラウマになっていないかと心配していた。
どうやら大丈夫なようで、一安心である。
「それで、彼女をパーティーメンバーにする件は、どうする?」
ニカの問いに対する答えは、既に全員決まっていた。
「僕は賛成! 守ってあげる必要はあるけれども、即戦力だと思うよ!」
「俺も同意する。『奇貨居くべし』と言うからな」
「それを言うなら、パーティーメンバーの半分は奇貨になるにゃ」
マオの言うとおり。
俺はガンナーという、将来性が低いとされているサブクラスを選んでいる。
マオはベースとして発明家を選んでおり、本来支援型のキャラクターだ。
ここに吟遊詩人が加わっても、何らおかしくない。
「そういうわけだから、マオも賛成するにゃ。にゃふふ……Wikiに隠された秘密を暴くのは、マオたちにゃ!」
好奇心旺盛な、彼女らしい返事であった。
「そういうわけだから、ハズレスキルを取得してみるにゃ!」
「えっと……既に『レストア・メンタルパワー』というスキルを、取得したのですが」
これはまた。
MPの回復に役立つスキルであるが、とにかく回復速度が遅いため、ハズレスキル扱いされているものだ。
「HPとMP、両方回復できたほうが良いかと思って……まずかったですか?」
「いや、問題ない。とりあえず使ってみてはどうだ?」
カナが、竪琴をかき鳴らす。
そして、それに合わせて歌い始めた。
「にゃにゃ! なんだか、集中できそうな予感がするにゃ! 銃を貸すにゃ!」
俺はメンテナンス前の銃を、マオに手渡す。
マオは整備道具と、素材を取り出した。
「これならば……『簡易整備』発動にゃ!」
銃が光を放つ。
負荷がかかり、壊れかけていた部品が素材によって補強され、元の姿を取り戻していく。
「終わったにゃ。確認してみるにゃ!」
銃の動きを確認する。
状態は、かなり良い。
本来ならば『本格整備』が必要だろうと考えていたのだが、少なくとも現段階において、その必要は無くなったようである。
「これ、やばくない? 修理スキルの概念が変わるよ?」
ウィルの言うとおりだ。
集中力の向上による、スキルの効果上昇。
冗談抜きで、この効果は支援型のキャラクターにとって、救世主になりうるほどである。
もはや、ハズレ職とは全く思えない。
これからの冒険において、彼女は大きな助けになるだろう。
不用意に使わないよう、気を付ける必要はあるが……もはや彼女をパーティーメンバーに入れないという選択肢は、残されていなかった。




