第二章 第十七話 落ちた後で
赤いメタルプディング……レッド・メタルプディングのHPは、通常型の三倍である15。
そして、俺の所有している銃の装弾数は、15+1。
既に銃をスライドさせ、本体への弾丸の移動は済ませている。
そのため、最大で16発を放つことができる状態だ。
ただし、懸念はある。
ファンタジー寄りのこの世界では、銃の信頼度は現実よりも低めに設定されている。
途中で弾詰まりが起きる危険性もあり、また全弾発射した後は、銃のメンテナンスが必要になるだろう。
それでも、パーティーメンバーの中で、最も多い攻撃回数を有するのは俺だ。
うまくいけば、銃だけで倒すことができる。
例え途中で弾詰まりしたとしても、残りの回数はダーツでカバーする。
行動の成否は、カウンターで放たれる攻撃を、俺がどれだけ回避できるかにかかっている。
「俺が行く! ニカとマオは援護を頼む!」
返事を聞く時間が惜しい。
俺はレッド・メタルプディングに向けて、走り出した。
後ろから、歌が聞こえてくる。
バフ・ミュージック。
カナが、身体能力を向上させてくれているようだ。
正直、ありがたい。
銃を連射する。
攻撃回数が多ければ多いほど、反撃の回数は増える。
だが、反撃の軌道はより直線的になるため、回避しやすくなるはずだ。
まずは六発。
こちらに向けて、猛スピードで迫る赤い棘。
転がるように回避し、何とかダメージを受けずに済ませることができた。
バフ・ミュージックがなかったら、恐らく一発は食らっていただろう。
近くにあった木に、ワイヤークローを射出する。
その後、その木から大きく離れ、再び六発をレッド・メタルプディングに叩き込む。
より正確になった反撃が、俺を襲う。
ワイヤーを一気に回収し、体ごと引きずるようにして回避。
かなり大きな動きであったが……一本、かわしきれなかった。
わずかに掠めただけなのに、大量の血がふき出す。
ニカの回復魔法、マオのポーション弾が俺に向けて飛ばされる。
ポーション弾とは、薄い殻状の物体にポーションを詰めたものだ。
相手に当てることで、中身のポーションが体にかかり、回復させる効果がある。
ここで、銃が弾詰まりを起こしてしまった。
相手のHPの残りは、3。
銃をしまい、ダーツを指の間に挟み込む。
そして、3本を一気に相手に向けて投げつけた。
HP0。
倒したと思った、次の瞬間。
レッド・メタルプディングは、爆発を起こした。
さすがに想定外であり、飛び散る棘をまともに喰らってしまう。
俺のキャラクターは、HP、装甲共に薄めだ。
このダメージには、耐えきれない。
地面に倒れるのが、分かった。
体が透けていく。
今回の狩りは、中断せざるを得ないだろう。
俺がデスペナルティを受けたとしても、カナの経験値を考えればプラスになっているのが、せめてもの救いだ。
そこで、違和感を覚えた。
透けているのだが、意識が途絶えない。
カナの歌っている曲が、変わっている。
ヒーリング・ミュージック。
Wikiでは、効果が低すぎて使い物にならない、いわゆる「外れスキル」とされているものだ。
だが、そのスキルによってギリギリのところで、俺は「生かされている」ようである。
ニカが、回復魔法を使用する。
俺は肉体を取り戻し、立ち上がることができた。
これは、ジャスト・ヒールと同じ挙動である。
「回復成功。でも、これは一体?」
ニカも、疑問を感じているようだ。
俺は、仮説を述べる。
「恐らく、ヒーリング・ミュージックの本来の使い道は、これなのだろう」
体を起こしながら、続きを語る。
「だが、あまりにも有用すぎる。恐らく知っているプレイヤーはごく少数で、Wikiに書かないことを選んだのだろう」
Wikiは、あくまでも「プレイヤーが編成するもの」である。
そのため、そこに書かれていることが真実とは限らない。
そして、ヒーリング・ミュージックがここまで有用なスキルであると分かれば、パーティー編成そのものに大きな影響を与えかねない。
ゆえに、あえて「外れスキル」の記載を残すことで、有用性が知られることを防いでいるのだろう。
「今回は、本当に助かった。ありがとう、カナ」
俺の礼に対し、カナは少し照れた顔をしていた。




