第二章 第十五話 整えられた翼
「まずは防具だけれども……変身することも考慮して、作ってみる」
ニカが、アイテムボックスから素材を取り出した。
魔物の素材を中心として作るようであるが、かなり高位のものも含まれている。
「それ、初心者にはオーバースペックじゃないかにゃ?」
「うん。経験値にマイナス補正が入るかもしれない。でも、長く使える方が最終的には得だから」
高レベルのプレイヤーが、低レベルプレイヤーにさまざまな便宜を行い、成長速度を上げることを「パワーレベリング」という。
このゲームはかなり、その行為に対して厳しい。
単にとどめを刺すだけの状態にして、低レベルのプレイヤーが敵を倒しても、ほとんど経験値は得られない。
また、装備がレベルの平均より上回っていると、得られる経験値にマイナス補正が入ってしまうのだ。
今回の事例は、後者に該当する。
しかし、このゲームは『デスペナルティ』がかなり大きめである。
そのため、得られる経験値が減ったとしても、良い装備を最初から使うという選択肢はありだと、俺は考えている。
「それじゃあ、作るね」
トンテンカン。
なぜか、金属音が流れる。
布製の防具であっても、簡易作成の場合はこの仕様になっている。
「完成。付与スキルは……よし。変身対応あり」
布を中心としながら、魔物の羽や糸を潤沢に使い、大幅に防御力を上げた逸品。
これならば、今の俺たちの装備よりも、少し下くらいの位置づけになる。
「カナ、これを着ていて。その間に、武器を作る」
奏は、防具を装備した。
一度装備し、自分のアイテムであると認識された防具は、一瞬で切り替えが可能になる。
また、防具を「透かせる」選択肢もあり、見た目重視のプレイヤーはその機能を使って、ベースとなる衣装を常に表示するようにしているようだ。
また、金属音が流れる。
「できた! これは、良い出来!」
装備の名前は、聖銀のハープボウ。
ミスリルを素材としており、竪琴として、そして弓としても使えるようになっている。
以前入手したものの、需要が低くアイテムボックスの肥やしになっていたものを、流用したようだ。
「無限の矢筒を改造して……これで、完璧」
弓を使う以上、当然矢が必要になる。
しかしこの世界では、無限の矢筒というアイテムを使うことで、無限に矢を補給することが可能である。
弓の弱点である、ランニングコストを抑えるために、ほぼ必須アイテムとなっているものだ。
運営側も配慮しているようで、比較的簡単に入手できるようになっている。
「装備してみて。多分、カナの職業ならばうまく使えると思う」
ステータスを確認した時に、職業も表示されていた。
吟遊詩人。
楽器の扱いは、お手の物だろう。
ただ、弓の方がまともに使えるかどうかは、検証する必要がある。
「分かりました。やってみます」
まずは、竪琴として音楽を奏でる。
思わず聞きほれるほどの、素晴らしい演奏であった。
更に、歌が加わる。
吟遊詩人の初期スキル『バフ・ミュージック』が発動する。
全体的に強化される分、それぞれの値は低く設定されているはずなのだが……。
「これ、下手な特化スキルよりも、効果が高くない?」
結希の言う通り、明らかに強化の度合いが大きい。
種族の影響を考慮しても、なお高い水準だ。
「装備補正もあるかも。ミスリルだから」
ニカは、ある程度予想していたようである。
ちなみに、この状態で俺たちが戦闘を行った場合、戦闘に貢献したということで奏にも経験値が入る。
正直、このスキルだけでも十分に、パーティーに貢献できるであろう。
「あと、矢は短めにしたから。一応、試射してみて」
矢筒から矢を取り出し、流れるように解き放つ。
的として想定していた木に、次々と突き刺さる。
四本の矢を二連射し、ほぼすべてが木の真ん中に刺さっている。
精度は、十分以上だ。
「初心者とは、思えないほどの能力だな。はっきり言って、即戦力だぞ」
これは、期待できそうだ。
俺たちは、レベルアップのために向かう場所を、少し難易度が高いところに変更することにした。




