第二章 第十三話 仮説という名の地図
エニアグラムについて、簡単に説明する。
これは、人の心を9種類のパターンに分け、それぞれの特性によりどのような思考傾向を持つのか、分析するためのものだ。
現代ではやや古い概念とされ、MBTI16タイプ診断の方が流行している。
しかし、俺はウイングを重視する形で、エニアグラムに接している。
隣り合う数字の影響を受けるという考え方で、その場合はタイプの数は18。
より詳細な情報になるという感覚があり、こちらを採用している。
「俺のタイプは、ほぼ間違いなくタイプ5、ウイング6だな」
タイプ5は、考える人だ。
そこにタイプ6の要素である、忠実な人が加わる。
結果として、問題解決能力に優れた人物像が導き出されるのだ。
「結希のタイプは、1で間違いないはずだが……ウイングを見誤っていた?」
タイプ1の場合、ウイングは9と2の二つに分かれる。
9の要素を持つ場合、タイプ9の争いを避け、調和を保とうとする性質が働く。
今まで俺は、こちら側だと思い込んでいた。
「ウイングが2であるとするならば、あの時の行動に納得がいくな」
2の要素を持つ場合、タイプ2特有の『誰かを支えたい、援助したい』という性質が働く。
歌の中に沈みそうになっていた、奏を助ける行動は、明らかにこの要素が含まれる行為だ。
「そこまでは良し。さて、喫茶店で舞の教えてくれたサイトを見ることにしよう」
フジ市は、急速に発展している。
そのため、チェーン店の喫茶店も各地に点在している。
俺が選んだのは、人魚のシンボルが描かれたチェーン店であった。
少し、歌に影響されているのかもしれない。
コーヒーを注文し、ソファーに座る。
このチェーン店は、ゆっくりした時間を過ごせるため、思考を巡らせるには都合がいい。
「どれどれ……アニメのキャラクターと、エニアグラム?」
そのサイトは、アニメのキャラクターがエニアグラム的に、どのタイプに分類されるかを詳細に述べているものであった。
更に、サイトを見ていくと……今まで知らなかった概念が、次々と表示されていく。
「表の主人公と、裏の主人公。両者はぶつかり合うのが基本であり、そのため導く者を必要とする、か」
これは、俺の読んだ本では出てこない概念だ。
結希のパターンが、タイプ1、ウイング2だと仮定すると……。
「裏にあたるのは、漣か」
彼女は恐らく、タイプ6、ウイング5。
秩序や理屈を重視し、想定外を嫌うタイプ。
組織やルールなどに従順であることも、特徴の一つだ。
「今のところは、衝突する気配は見られないが……要注意だな」
漣が一歩引くタイプであることも、影響しているだろう。
しかし、この対立構造は覚えておく必要がある。
ちなみに、タイプ1にとって「導く者」は、タイプ7。
みかんが典型例で、楽しみを重視するタイプだ。
タイプ6にとって「導く者」は、タイプ9。
残念ながら、こちらは今のところ該当する人物はいない。
「さらに、闇落ち? そして、ヒロイン?」
キャラクターが「惹かれる」タイプを、ヒロインと定義している。
その方向は、エニアグラムでは「ストレスによる分裂」の方向と一致している。
「タイプ1の場合、ヒロインはタイプ4。なるほど」
奏は、恐らくタイプ4に分類されるだろう。
感性が強く、個性的なタイプ。
結希が惹かれるのも、納得がいく。
「健全度が高ければ、ヒロインを導くことができる。逆に健全度が低ければ、ヒロインに飲み込まれる、か」
今までに読んだ本とは、大きく異なる理論。
しかし、アニメのストーリーに沿った解釈がなされているため、説得力がある。
「しかし、舞の情報網はどうなっているのだ? そもそもあの人が、アニメを見る時間を確保できているのだろうか?」
疑問は尽きない。
だが、非常に有用な情報であった。
「さて、そろそろ戻るとするか。結希も、恐らく家についているだろう」
俺は喫茶店を後にして、自分の家に帰ることにした。




