第二章 第五話 同期する声
「さて、そろそろ別の話に移るわね。せっかくカラオケボックスに来たのだから、確認したいことがあるし」
その言葉に、ピンとくる俺。
結希も気づいたのか、顔を上げていた。
「結希と久郎の間で成立する、『シンクロニシティ』。これがどれだけの効果があるのか、そして限界がどこにあるのか。確かめるには、最適の場所でしょう?」
舞の言葉通りだ。
ここ以上に、その実験に適した場所は存在しない。
「そういや、お前たちが戦っているときに、歌っていたようだが……あれのことか?」
明が、疑問を口にする。
「そう、それ。もしかしたら、カントウ圏でも通じる力かもしれないと、私は考えているの」
「にゃ?! もしそうだとしたら、とんでもないことだにゃ!」
みかんが興奮する。
インターネットをはじめ、電子機器がまともに使えないことが推測されるカントウ圏。
そこで「通信する手段」があるとすれば、その価値は計り知れない。
「あまり、期待しすぎないでくれ。俺たちが知っている範囲では、そこまでの力はないから」
「うん。スピーカーを通した増幅はできるけれども、あくまでも声が届く範囲までだったはずだよ」
俺たちが、自分の能力について述べる。
それに対し、舞は少し考えるようなしぐさを見せた。
「まずは、普通に発動してみて。そして、漣。あなたの力で、増幅できないか試してくれないかしら?」
「増幅……やってみます」
舞の話によると、漣の力は「波」。
さまざまな波を操ることで、多くの効果が期待できるようだ。
音波ももちろん、その対象に含まれる。
「じゃあ、行くよ!」
俺たちはリズムを合わせて、シンクロニシティを発動させた。
今回選んだのは、昔のロボットアニメの主題歌。
迫力満点で、こういう場所で歌うのに向いていると思う。
「(久郎、聞こえる?)」
「(ああ、大丈夫だ)」
発動に問題はない。
「悪いけれども、少し動いてもらえる? 戦っている状態を、想定してね」
幸い教壇のような場所があるため、多少動くことが出来る。
そこで俺たちは、バグとの戦いを意識して動くことにした。
俺のワイヤーが、バグを絡めとる。
そこにすかさず、結希が攻撃。
攻撃する直前に、ワイヤーを回収して再利用する流れも、お手の物だ。
銃を使い、動きを制約する。
左右から徐々に狭めていき、前後以外の逃げ道を断つ。
そこに結希の『飛燕』。
縦に放たれる衝撃波が、逃げ道の無いバグを切り裂く。
もちろん、実際に行っているわけではない。
だが、動きとしては十分に、戦闘を再現できているだろう。
「ふぅ……こんな感じ、かな?」
「お疲れさま。上出来よ」
舞が、素直に俺たちを褒める。
彼女の目から見ても、十分連携がとれているようであり、俺もホッとした。
「とりあえず、今の時点で言えることは……歌魔法の系列に属する能力ということね」
歌を媒介として、世界に効果を示す魔法。
それが、歌魔法だ。
「そして、私も途中から歌ってみたのだけれども……受信するのが精一杯。割り込むには、よほどの能力がないと不可能だと思う」
その事実は、予想外であった。
舞の力をもってしても、シンクロニシティに割り込むことはできない。
だとしたら、あの声は一体……?
「そして、漣。増幅はできそう?」
「理論的には、可能です。ですが、私の技量では上手くできるとは言い切れません」
増幅させ、効果を発揮する距離を伸ばすためには、相当の集中を要するようだ。
加えて、ほんの少しずれるだけで、効果を維持することができなくなる。
漣が言うには、上手くいく確率は半分程度とのことであった。
「謎が、深まるばかりだな……」
「うん。そうだね」
俺たち二人の悩みは、更に深まることになった。




