第二章 第二話 終端を持つ世界
「まず、前提として述べておくわね。この世界は、ループを繰り返しているの」
舞がいきなり、爆弾を投下した。
「ループ? ということは……何回も、滅びているということなのか?」
俺の問いに、舞が返す。
「そうらしいわね。私自身も体感したから、事実だと思うわ」
「らしい?」
違和感を覚えた結希が、舞に尋ねる。
「うん。ちょっとこのホワイトボードを使うわね」
この部屋は、教室をモチーフにしたデザインになっている。
黒板こそないが、代わりにホワイトボードが備えられていた。
「私の協力者、メアというのだけれども……彼女は何度もループを繰り返しながら、この世界を滅びから救おうとしているらしいの」
横に大きな線を引き、区切り線を入れていく。
区切られた部分の数は、十五。
それが、メアという人物がループした回数なのだろう。
「そして、前回のループ。ここで私は、ようやくループを観測する手段を得たの」
最後の区切りの、一つ前のところに、赤でラインを引く舞。
そこが、舞が観測したループということなのだろう。
「あれ? 最後の一つは?」
結希の質問に、舞が返答した。
「ここが、今の私たちが存在する世界。そして、ループの果て」
「ループには、終わりがあるということなのか?」
俺の問い、舞が真面目な顔で答える。
「そう。この先はもう、存在しない。今回が最後のチャンスということになるわね」
……全員、声を出すことすらできない。
ループを前提としたライトノベルの醍醐味は、主人公がループを活用することによって、より良い方向に進んでいくことにある。
その前提が、機能していないのだ。
「なぜ、そんなことが言えるのかにゃ?」
「本人から聞いたの。これ以上のループは、肉体と精神の乖離に耐えられないって」
少なくとも、前回のループにおいては、舞とメアという人物は仲が良かったのだろう。
そこまで深い会話を交わせる人物が、険悪な関係であることは想定しがたい。
「今のところ、メアがどこにいるのかは分からない。でも、確かにこの世界にいるのは間違いないわ。何とか会えるといいのだけれども」
ループを体験している、張本人。
それは確かに、最有力の情報源であろう。
「それと、クマサカがどういう関係にあるのかにゃ? 繋がりが見えてこないにゃ」
「うん、分かっているわよ。ただ、前提を整えないと、その後も理解できなくなるから」
そして、舞は話を続けた。
「恐らくクマサカも、このループ構造を知っている」
「「「!!!」」」」
明、漣、みかん。
三人の顔が、青ざめる。
「メアからの伝聞だから、確定情報ではないことを前提に聞いてちょうだい」
舞が、追加説明を行う。
クマサカの利用している、スーパーコンピューター『デミウルゴス』。
それを使うことで、広範囲の洗脳、ネットの改ざん、更にある程度の未来予知が可能になるというのだ。
「未来予知というよりも、ループを断片的に知ることができる、という形ではないかと、メアは推測していたわ」
「ってことは、俺たちの動きも分かっていた、ということか……」
明が、悔しそうに言葉を漏らす。
残りの二人も、思い当たる節があるようだ。
「疑問があります。なぜ、このシズオカではその力を発揮できないのでしょうか?」
漣が、質問を投げかける。
「これも、メアと話し合った上での推測でしかないわ。それでも、ある程度は納得できる説明だと思うわよ」
俺たちは、舞の話の続きを聞くことにした。




