第二章 第一話 静かな確信
フジ駅前にある、カラオケボックス『マネキネコ』。
その店先が、指定された集合場所であった。
9時50分に、俺は到着する。
そこには結希と、明が待っていた。
「早えな。まだ10分残っているぜ」
「そういう明は、いつ来たんだ?」
どうやら、一番初めにたどり着いたのは結希。
その後、明が来たようだ。
「しっかし……早めに来て、正解だったぜ。かなり困っていたようだからな」
案の定というべきか。
結希はナンパされており、必死に断っているところに明が話しかけたとのことである。
「おかげで、カップル扱いされちまったぜ」
「うう……カルシウムも、プロテインも飲んでいるのに……」
色々と努力しているのは、俺も知っている。
だが今のところ、男性らしさには繋がっていないようだ。
「お待たせいたしました。まだ集合時間には、余裕がありますよね」
漣が、5分前に到着する。
優等生らしい行動だと感じた。
談笑する俺たち。
「お待たせ……やっぱり、一人足りないわね」
10時ちょうど。
舞が姿を現した。
「多分、5分くらい遅れるんじゃねえか? いつものパターンだし」
「ですね。やはり、リードを買って、連れて来るべきでした」
もはや、あきらめの境地に入っている二人。
みかんは少し、時間にルーズなところがあるようだ。
「ごめんにゃ! 屋台で時間をとられたにゃ!」
10時8分。
みかんがケバブを手にして、こちらに向けて走ってきた。
フジ駅前は近年、区画整理が行われた。
その結果、歩行者専用の区域が設けられ、屋台などが並んでいるのだ。
恐らくそこで、調達したのだろう。
「持ち込み許可のお店だからいいけれども、そうでないところもあるから気をつけてね」
「ダメだったら、この場で食べればいいだけにゃ!」
遅れたことに怒っても、仕方ないと分かっているのだろう。
舞は単に、持ち込みのことだけ注意していた。
「さてと。部屋はもう予約してあるから。みんな、行くわよ!」
俺たちは舞に続いて、店の中に入った。
指定された、部屋に入る。
「フリーでとっているから、時間はたっぷりあるわ。色々と話さないといけないことも、あるからね」
それは、ありがたい。
時間を気にしながらでは、集中できないだろう。
「フリーということは、昼食もここでとるのかにゃ?」
「ええ。山盛りポテトでも何でも、好きなものを注文してちょうだい」
みかんの手にしていたケバブは、既に胃の中のようであった。
相変わらずの食欲である。
舞が、食堂の時と同じ魔法が込められた、器具を使う。
これで周りの部屋からは、歌っているようにしか聞こえないはずだ。
「それだけお金を使うのは……世界が終わった後にお金があっても、意味がないから。ということか?」
俺はいきなり、核心に踏み込む。
「そうね。鼻紙に使えるのならともかく、本当に何もかも消えてしまうのだから」
あっさりと、舞が認めた。
「あの夢、本当なんだね……僕、朝食を食べられなかったよ」
結希が少し、青ざめた顔を見せる。
確かに、あの悪夢は強烈であった。
感受性の高い結希ならば、こうなるのも必然だろう。
「あなたたちも、見たわよね? 大丈夫?」
舞が、明たち三人に尋ねる。
「俺は別に。というよりも、三人とも、もっと酷い現実を知っているからな」
「ええ。トウキョウは、完全にクマサカの遊び場になっておりますし」
「さらし首なんて、あまりにも前世代すぎるにゃ!」
目を剥く、俺と結希。
「そんなこと、許されているの?!」
「さすがにそれは……あり得るのか?」
答えたのは三人ではなく、舞であった。
「事実だと思うわよ。長くなるけれども、順を追って説明するから」
俺たちは、舞の話に耳を傾けることにした。




