第一章 第十九話 白い光の夢
何とか風呂に入り、ベッドに潜り込む。
ちなみに俺は、入浴派だ。
シャワーだけだと、体がほぐれる感覚がないため、落ち着かない。
あっという間に、睡魔が襲ってくる。
眠りにつくのは、一瞬であった。
そして、俺は夢を見た。
それも、とんでもない悪夢だ。
戦いの中、力尽きる俺。
隣には結希の骸も、横たわっている。
目の前で、羽を広げる超巨大なバグ。
蝶の形をしたそれが、世界に向けて羽ばたく。
なぜか、視点だけは動かせるようだ。
俺は蝶の後を追うように、視点を移動させた。
蝶が通り過ぎた部分が、次々と白い光に飲み込まれ、消えていく。
堅牢な建築物も。
長い年月をかけて成長した、御神木も。
地面をはい回る、小さな生き物たちも。
すべて、分け隔てなく消え去っていく。
例外は、一つもない。
俺は必死に、情報を集めようとする。
蝶が来る前に、何とかこの状況に繋がるものが得られないか。
視線を蝶よりも先に飛ばし、街並みを確認する。
人の姿は、無い。
既に街は、滅びた後のようだ。
それでも、何らかの痕跡がないか確認する。
すると、民家の一つに入ることができた。
知らない部屋。
やや散らかっている、生活感のある空間。
主の姿は見られないものの、そこには確かに人の証が残されていた。
壁に掛けられていた、カレンダーを確認する。
来年の3月。
しかし、それ以上はぼやけたようになっており、日にちは読み取れなかった。
夢なのだから、これは仕方がないことだろう。
時計もある。
15時50分。
電波時計なので、ほぼ正確な値であろう。
あえて、部屋の中で蝶を待つことにした。
白い光が近づき、この建物が飲み込まれる直前に離脱する。
時間は、15時51分。
蝶の飛行速度は、相当に早い。
恐らくこの日のうちに、世界全てが白い光に埋め尽くされるだろう。
白い光から逃れるように、必死に視点を前に進ませる。
しかし、その努力をあざ笑うかのように、白い光は迫りくる。
俺はその光に飲み込まれ、意識を失った。
目が覚める。
時計を確認すると、午前6時34分。
昨日のトラブルで、学校が臨時休校であることを考慮するならば、少し早めの目覚めであろう。
スマートフォンを確認する。
メッセージアプリには、二人からの連絡が入っていた。
結希と、舞だ。
まず、早く入った結希のメッセージを確認する。
「久郎、悪夢を見た? 僕はどうしても、あれがただの夢には思えないんだ!」
すぐさま、返事を返す。
「見た。俺もあの夢は、リアリティがありすぎると思っている」
そして、舞のメッセージを確認する。
「だいたい、分かったと思う。その夢は、正夢よ。話し合いをしたいから、フジ駅前のカラオケボックスに集まるつもり。来れそうな時間を、教えてちょうだい」
背筋に冷たいものが走る。
俺たちが、この夢を見ることを舞は「知っていた」。
そして、それが「正夢」になることも、分かっているということだ。
「とりあえず、舞に連絡だな」
俺は、10時くらいであれば大丈夫であることを、送信する。
そして、一階に降りて顔を洗い、朝食をとることにした。
夢の内容が衝撃的であるからこそ、ルーティンは変えたくない。
万全の体調で、話し合いに臨まなければならない。
舞から、メッセージが入る。
午前10時に集合。
果たして、どのようなことが告げられるのだろうか。
To be continued
閑話を経て、第二章に進みます




