表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

第一章 第十五話 支払われる対価

「ところで、聞きたいのだが……舞先生、予算は大丈夫なのか?」


 車内で、俺が尋ねる。


「予算? みかんが思いっきり食べても、問題ないわよ」


 恐らく意図を見抜いたうえで、舞がずれた回答を行った。


「そちらではない。制服に、ワイヤー。どちらも多額の資金を要するはずだ」

「まあ、あなたならば分かるわよね。で、いくら私でも、ここまでポンポンお金を払うのは、不自然だと感じたってこと?」


 ようやく、こちらの問いに答える気になったようだ。


「まず、伝えておくわね。私の資産は、兄とは別になっているの」

「え?!」


 結希の驚きは、当然だろう。

 藤花コーポレーションがバックにあるからこそ、この大盤振る舞いだと考えていたのだから。


「その上で言うわね。全く問題なし。私、技術者として稼いでいるから」


 それも、分かってはいる。

 俺たちが使っている機体の発展に、大きく関与したのが舞であることは、広く知れ渡っている事実だ。


「それに……ううん、今はいいか。多分明日になれば、分かることだから」


 これ以上の情報を、言う必要は無いと判断したのだろう。

 ここで食い下がるのは、下策だ。

 俺は素直に、引き下がることにした。


「あ~。そちらとは別になるが……『戦闘(せんとう)報奨金(ほうしょうきん)』は、どうなるんだ?」


 明が、舞に尋ねる。


 ヒーロー科の生徒には、『学生手当(がくせいてあて)』が支給される。

 手取りでは8万程度と、それほど大きな金額ではない。

 しかし、加えて授業料免除、寮生活における衣食住の保証があり、かなり恵まれているのだ。


 そして、それとは別に支給されるのが『戦闘報奨金』だ。

 これは戦闘ごとに支給される、いわばボーナスのようなものである。

 難易度の高い戦闘に参加するほど、金額も大きくなる。


 もっとも、対価として支払う可能性があるのは、自分の命だ。

 今回、巨大バグとの戦闘で失われたのは、前衛が三人、後衛二人。

 合わせて、五人の命だ。

 状況が許すのであれば、撤退する判断も必要となる。


「もちろん、支払われるわよ。今回だと……多分、5万円くらいかしら」

「それは、助かります……加えて、亡くなった方への補償もあることを考えると、素直に喜べませんが」


 漣の言うとおり、戦死したヒーローには補償金が支払われる。

 とはいえ、一般の公務員が亡くなった場合に比べると、はるかに少ない金額だ。


 ヒーロー科への入学により、成人扱いされること。

 及び、危険な任務と引き換えに、学生手当が支給されていること。


 これらが、この扱いを正当化している理由だ。


「難しい話は終わったのかにゃ? そろそろ、お店についてほしいにゃ~」

「大丈夫よ、みかん。今、駐車場に入るところだから」


 言われて、顔を上げる俺たち。

 そこには「大衆食堂 マルダイ」の文字があった。


「フジ市にも、このお店の支店ができたことを知ったの。ここならば、みかんの食欲でも十分満足できると思うわよ」

「にゃ、楽しみにゃ!」


 俺たちは、店に入る。

 半個室の席が、あらかじめ確保されていた。


「次のニュースです。フジ市で起きた、バグの同時多発事件。その真相に迫ります」


 聞き捨てならない言葉が、流れてきた。

 同時多発事件?!


「あらら……まあ、いいか。家に帰れば分かることだし」


 店に設置されていたテレビから、情報が流れる。

 俺たちの学校を含めて、三か所で巨大バグが発生し、相当数の死者が出たようだ。


「幸いなことに、一般住民への被害はありませんでした」


 幸い……悔しいが、その通りだ。

 一般市民を、バグから守ること。

 それが、俺たちヒーローの役目なのだから。


「今は死者を(いた)むより、自分の体を労わるのが先よ。さあ、席に座りましょう」


 舞の言葉に、俺たちは素直に従うことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ