表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/23

第一章 第十四話 職人の部屋

「先に述べておきます。二人とも内向的な性格であるため、ご了承ください」


 店長が、一つの部屋のドアを開けた。


 無数のマネキン。

 そして、そこに掛けられている未完成の衣装。


 そして、二人の人物が作業をしていた。


 ハサミを持ち、裁断を行っている少女。

 黒いロングヘアに、ウェーブがかかっている。

 図書室などにいるような、そんな雰囲気を醸し出していた。


 もう一人は、布をミシンで縫い合わせている少女。

 黄色い髪が特徴で、少し浅黒い肌をしている。

 ニホン人でないのは、一瞬で分かった。


「裁断をしているのが、ニカ。ミシンを使っているのが、ジャンナよ。二人とも、手を止めて挨拶しなさい」


 店長の指示に従い、こちらに来る少女たち。

 後ろにいる俺たちに気づいたようで、警戒の色が見てとれる。


「ニカです……よろしく」

「同じくジャンナ。よろしく」


 名前だけの、極めて簡素な自己紹介であった。


「お客様が、特別な仕事を求めているの。話を聞いてもらえるかしら?」


 店長の言葉に従い、舞がワイヤーのことについて話し始める。

 二人の目が徐々に、職人のものに変わっていった。


「できるとは思う。このリードの形で、ワイヤーを編めばいいのね」


 ニカが、結論を出そうとした。

 その時、みかんが声を上げる。


「違うにゃ! そのままだと、瞬間的な張力(ちょうりょく)に耐えられなくなるにゃ!」


 ニカと舞が、驚いた顔でみかんを見る。


「だから、この部分をこういう風にしないといけないにゃ。けれども、この形だと柔軟性が損なわれるから、組み合わせる必要があるにゃ」

「そこのところ、詳しくお願い」


 ニカの質問により、三人が激しい討論を行う。

 専門的であり、かつ数式が飛び交う世界が繰り広げられる。


「久郎、何を言っているのか分かる?」

「残念ながら、俺は文系だ。ここまで高度な理系の話だと、さすがに専門外になる」


 結希の問いに、俺は答えた。

 ただ、確実に言えることがある。


 この三人は、妥協することは絶対に無い。

 プロ意識の塊だ。

 そう、確信した。


 餅は餅屋。

 俺が横から口を出すのは、やめた方が良いだろう。


「有意義な会話だった。新しく作るワイヤーの、権利関係はどうする?」

「設計図という形で、提供してもらえると助かるわね。そうしたら、フィフティ・フィフティでどうかしら?」


 ニカの問いに、舞が答える。


 ニカが半分。

 そして、舞とみかんがもう半分。

 役割分担を考えれば、妥当なところであろう。


「開発に必要なお金は、全部こちらから出すわね。妥協無しでお願いするわ」

「分かった。頑張る」


 交渉成立。

 ニカと舞が、握手を交わした。


 ちなみにジャンナは、一切口をはさむことは無かった。

 日本人でも、入るのが難しいレベルの単語が相次いでいたのだ。

 静観という判断は、正解であろう。


「だから、言っただろう? みかんが俺たちの中で一番、頭が良いって」


 明の言葉が、しみじみと実感できる。

 専門家の技術的な会話に、割り込んで問題点を指摘できる。

 これは、並大抵のことではない。


「ふぃ~! 疲れたにゃ。そろそろご飯が食べたいにゃ!」

「そうね。私も頭を使ったから、栄養補給しないと」


 俺たちは、店を後にすることにした。


 新しいワイヤー。

 俺だけではなく、他のヒーローにとっても大きな武器になることは、間違いないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ