第一章 第十三話 掘り出し物
「さてと。制服はともかく、もう一着選ばないとね」
舞の言葉で、自分たちの着ている服がボロボロであることを思い出した。
「ちなみにこのお店、普通の服だけじゃないのよ」
舞が、右手のコーナーを示す。
そこに並んでいるのは……。
「コスプレ衣装!?」
結希の言ったとおり、さまざまなアニメやゲームの衣装が揃っていた。
しかも、パッと見ただけでどの作品なのか、瞬時に分かる。
極めて完成度の高い、商品であった。
「着る服を選んだら、こちらのコーナーを眺めていてちょうだい。夕食を食べるお店は、まだ開いていないから」
「もしかして、その服もタダでもらえるのかにゃ?!」
みかんが喜色を示す。
既製品のコーナーには、ブランド品は一種類しかない。
Needle&Scissors。
よほどの自信がなければ、できないことであろう。
「ええ。みかんに合わせて、少しラフなお店を選んだから。フォーマルでなくても大丈夫よ」
「ああ……予算オーバーだったんだな……」
明が、天を仰ぐ。
確かにみかんの食欲を考えると、ランクを下げるのはありだろう。
「違うわよ。ただ、少しずつ質の高い料理が、何分もかけて提供されるのに、みかんが耐えられると思う?」
「「「「思わない!!!!」」」」
またもや、見事なシンクロであった。
俺は、スラックスとロングシャツ、そして上に羽織るジャケットを選ぶ。
スラックスは黒、シャツは白、ジャケットはライトグレーにした。
「久郎は、モノクロの服が好きだよね」
「シンプルで、あまり考えずに済むからな」
それに、色がついた服よりもこちらの方が、俺らしいと感じている。
名前に、好みが引っ張られたのだろうか。
「僕は……こんな感じ!」
白い男性用のセーラー服、いや水兵服に、レッグウォーマー。
上にクリーム色のコートを羽織っており、センス良く仕上がっている。
「おっ、いいじゃんか! 俺はまあ、適当だな」
明は、スリムタイプのスラックスとロングのTシャツ。
元々着ていた学校の制服を、マントのように羽織っている。
歴戦の強者という雰囲気で、似合っていた。
「私は、こちらにしました」
漣が選んだのは、ブラウンのトップス&アウター。
ファーがついていて、暖かそうな印象を受ける。
「みかんは、これにゃ!」
「すぐに、着替えてこい!」
みかんは……メイド服。
似合っているのは、間違いないが……これで外を歩くのは、勇者の所業だ。
明が止めるのも、当然である。
「そういえば、コスプレコーナーに……ありました。これ、おいくらですか?」
漣が手に取ったのは、リード付きの首輪。
ごつごつした猛犬用と、銀の鈴がついたシャープな猫用。
「「だから、動物扱いするな(にゃ)!!」」
「いえ、これはコスプレ用なので、人間向けですよ」
大真面目に、漣が答える。
意外と天然なところが、あるのかもしれない。
「うん? 少し見せてくれ!」
俺は、その首輪……正確にはリードの部分に、目を光らせた。
編み方が、普通のものとは明らかに異なっている。
「この技術を、ワイヤーに使うことができたとしたら……」
恐らく、今使っているワイヤーよりも、はるかに強度が上がる。
とんでもない「掘り出し物」だ。
真剣な目をしている俺に、舞が声をかけた。
「それ、そこまですごいの?」
「ああ。下手をすると、強度が五割増しくらいになりそうだ」
舞の目も変わった。
「すみません! 店長を呼んでください!」
「はい。どうされましたか?」
舞が、詳しく説明する。
「なるほど……もしかしたら、更に強度を上げる方法があるかもしれません。二階にある、スタッフと直接交渉していただけるでしょうか?」
店長の指示により、二階に案内される俺たち。
これを作ったのは、果たしてどんな人物なのだろうか。




