表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/21

第一章 第十一話 抗砂という名

 このコンビニには、比較的広いイートインスペースが設けられている。

 そのため、俺たちはそこで食事をとることにした。


 テーブルを埋め尽くす、おにぎりやスイーツ。

 入ってきた客が、二度見する。

 中には、写真を撮る者もいた。


 気持ちは、よく分かる。

 俺でもこの光景を目にしたら、写真を撮りたくなるだろう。

 それほどに、凄まじい状況であった。


「お待たせ。結希と久郎の家に、連絡を入れておいたから」

「「あ!!」」


 すっかり、忘れていた。

 スマートフォンを取り出すと、両親からのメッセージがいくつも届いている。

 かなり心配したようであり、説教は確定であろう。


「残りの三人は、寮の方に連絡したから。一緒に食事をとるから、夕食は無しにしておいたわよ」

「にゃあ……夜食にしようと思っていたのにゃ……」


 この昼食に加えて、夕食を食べる予定なのに、さらに夜食。

 ブラックホールに胃袋が直結しているというのは、あながち間違いではないのでは? と感じずにはいられなかった。


 食事が終わろうとした時。

 追加でみかんが、1リットルの黒烏龍茶(くろうーろんちゃ)を購入した。


「そして、最後にこれにゃ! 黒烏龍茶で、カロリーゼロにゃ!」

「「「「「そんなわけ、あるか!!!!!」」」」」


 みかん以外の全員が、異口同音にツッコミを入れる。

 今ならば、みかんを除くメンバーで『シンクロニシティ』を発動できるかもしれない。

 それほどに、見事な調和であった。


「さてと。それじゃあまた車に乗ってね。洋服店に行くから」


 俺たちは、コンビニを後にすることにした。

 車に乗ってすぐに、みかんは眠ってしまう。


「まさに、猫だな」


 俺の声に、明が反応する。


「それが許される状況になった、ということだぜ」


 話を聞くと、三人はトウキョウからシズオカに来たようである。

 トウキョウでは、クマサカの影響もありかなり、厳しい状況をくぐり抜けて来たようだ。


 クマサカ・トモクニ。

 カントウ圏を支配する、独裁者といっても過言ではない存在だ。

 一種の宗教団体である『恒河社(こうがしゃ)』をバックに、強大な権力によって立法、行政、司法の全てを牛耳っている。

 政教分離の原則は、奴にとっては戯言(ざれごと)でしかないのだろう。


 評価は二分されている。


 カントウ圏では、賛辞の声。

 それ以外では、蛇蝎(だかつ)のごとく嫌う声。


 特にシズオカでは、圧倒的に嫌う者の数が多い。

 統計上でも有意に、反支持者の数が突出している。

 原因は不明であるが、それもカントウ圏からシズオカへの移住が増えている一因であろう。


「俺たち三人は、『抗砂(こうさ)』と呼ばれていたからな」


 カントウ圏でも、クマサカに対抗する勢力は存在している。

 恒河社の元になっている言葉は、恒河砂(こうがしゃ)

 ガンジス川の砂の数を語源に持つ、非常に大きな数字の単位だ。


 それに対抗する、「砂粒」のような存在。

 抗砂という言葉には、そのような意味合いが込められているようだ。


「巨大バグとの戦いで、戦線崩壊が早かったの、もしかして……」

「ああ。新入生の中にも、恒河社の息がかかったやつがいたのだろうな」


 結希の問いに、明が答える。

 やはり結希も、どこか「おかしい」と感じていたのだろう。

 俺も、納得できる答えであった。


「さて、そろそろ洋服店につくわよ。みかんを起こしてくれる?」


 舞の声で、我に返る。

 彼女のような人が、利用する洋服店。

 いったい、どんなものなのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ