第一章 第十話 空腹という現実
「あの戦闘で、お腹が空いたでしょう? 体型に影響のない範囲で、好きなだけ食べていいからね」
舞の言葉に、天を仰ぐ明と漣。
一体、どうしたというのだろうか。
「あちゃ~。それ、言っちまったか……」
「暴走する前に、止めましょう」
自己紹介でみかんは、食べるのが好きだと言っていた。
しかし、暴走とは穏やかでない。
既にみかんは、コンビニの中に入っている。
一体どのような状況になっているのか、確認することにした。
「これと……これにゃ!」
かごの中にあったのは……大食漢の女性が目印の、マンガのコラボ商品。
1,000キロカロリーを超える、巨大な弁当だ。
さらに、もう一つ。
ニンニクマシマシラーメン。
「ふぎゃ!」
明のチョップが、みかんに炸裂する。
「お前……これからの行動、口に出してみろ」
「車に乗って、洋服店。そして食事にゃ!」
漣が、少し怖い顔でみかんに詰め寄る。
「車の中で、強烈なニンニクの匂い。さて、言うことは?」
「うっ……ごめんなさいにゃ」
どうやら、最悪の事態は免れたようだ。
結希共々、ホッとする。
「仕方ないにゃ……じゃあ、この棚を全部にゃ」
選んだのは、おにぎり。
端から一つずつ、全てをかごの中に入れていく。
「冗談だよね? いくら戦闘で、お腹が空いたと言っても……」
「残念ながら、これがみかんの通常運転だ。胃がブラックホールに繋がっているのかもしれないな」
結希の問いに対する明の答えは、非情なものであった。
「おっ、スイーツの新商品発見! これは見逃せないぜ!」
明が、新商品のシールが貼られたスイーツを、次々とかごに入れていく。
「はあ……先生、犬用と猫用。リードを一つずつ、通販で購入できないでしょうか?」
「分かった。猫用は、鈴付きで良いわよね?」
慌てて、二人が叫ぶ。
「「俺を、動物扱いするな(にゃ)!」」
……いや、したくなる気持ちは分かる。
この俺が、あっけにとられるレベルだ。
「なんだか、濃いメンバーだね。僕はこれにするよ」
結希が選んだのは、かつ丼とサラダチキン、そしてミニサラダ。
飲み物に、プロテイン飲料も加わっていた。
「向こうはそっとしておこう。巻き込まれたくない」
俺も、棚に向かう。
選んだのは、カルボナーラと栄養ブロック。
飲み物は、新商品を試してみることにした。
「それ、飲むの? 前に同じ系列で、ひどい目にあっていたようだけれども……」
「それはそれ、これはこれだ。挑戦心は大事だからな」
意外と思うかもしれないが、俺はわりと新しい物好きだ。
新商品、期間限定という文字に弱い。
試してみなければ、評価はできないからだ。
「私はこれにします。エネルギーの補給は、必要ですから」
漣は、天ぷらそばと助六セットを選んだ。
飲み物は緑茶。
「それだけで、足りるの? 遠慮はしなくていいのよ」
「はい、大丈夫です……あの二人とは、消費カロリーが異なりますので」
明は牛カルビ弁当に卵サンド、さらにスイーツ5つ。
みかんは巨大弁当と、おにぎりが10個。
「まあ、思春期だからね……それにしても、みかんは本当に大丈夫なの?」
「腹八分目という言葉もあるにゃ。このくらいにしておくにゃ!」
舞の問いに対し、みかんが答える。
全員、言葉の使い方が間違っていると思ったのだろう。
声を発する者は、一人もいなかった。




