第一章 第九話 名前を交わす時
「俺の名前は、秋葉明。名前の呼び捨てで良いぜ!」
バグとの戦闘で真っ先に飛び出した印象の通り、とにかく元気な少年のようだ。
「特技は格闘技、好きなものは甘いもの。よろしく!」
甘いもの……いわゆる、スイーツ系男子というものだろうか。
印象とのギャップに、少し戸惑う。
「で、お前は一体……むぎゅ!」
水色の髪をした少女に、頭を押さえつけられて黙る明。
何となく、しっかり者の尻に敷かれているのが、似合っているような印象を受けた。
「恥ずかしいところをお見せして、すみません。私は清水漣。漣と呼んでください」
落ち着いた声。
戦闘中も、的確に回復魔法を使っており、個人的に好感を抱いている。
「得意なことは、回復、補助魔法です。趣味は将棋で、この二人のお目付け役のような立場だと自認しています」
「二人ってことは……みかんも、なのかにゃ!」
三人目の名前が、ここで判明した。
この三人の中では、漣がまとめ役なのだろう。
「気を取り直して、にゃ。わたしは志田みかん。みかんで良いにゃ!」
「みかん……本名?」
結希が尋ねる。
「本名にゃ。少しキラキラしているかもしれないけれども、自分は気に入っているにゃ!」
それに、みかんが答えた。
本人が気に入っているのならば、問題ないだろう。
「得意なのは、黒玉、白玉による遠距離攻撃にゃ。好きなことは食べることにゃ!」
頭の上にある、カチューシャがピコピコと動く。
「それ、どうなっているの? クラスに入った時には、つけていなかったようだけれども……」
「脳波に反応して、動くように作ったにゃ。戦闘前に、身につけたにゃ!」
俺は、目を見開いた。
明らかに「作った」と言っている。
かなり高度な技術であることは、間違いない。
「こいつ、ふざけた口調をしているくせに、俺たちの中で一番頭がいいんだよな……うらやましいぜ」
明が、みかんの頭をぐりぐりしながら述べる。
「揺らすにゃ~! 明の力でやられたら、バカになるにゃ!」
みかんは抗議しているが、本気の口調ではなさそうだ。
これが「いつもの光景」ということなのだろう。
「さて、それでは俺の方もだな。俺は神崎久郎。久郎と呼んでくれ」
「くろう……苦労人になることが、想像できるにゃ……にゃあ~!」
明のグリグリが、激しさを増す。
この口調、慣れ親しんだキャラにそっくりなのだが……それは後で確認することにしよう。
「特技はワイヤーと銃。後は法律や文学を少々」
「少々っていうレベルじゃないよ! 行政書士試験の、合格者でしょ!」
結希がツッコミを入れる。
「まあ、最年少記録保持者ではある。わずか一年で更新されたがな」
俺は、それに応えた。
もし、ヒーローとして致命的な傷を負ったとしたら。
その時に備え、法律を学び、行政書士試験に合格しているのだ。
もともと、本を読むのが好きであった。
しかも、小学生が求めるような普通の本ではない。
六法全書、医学書、広辞林。
明らかに異常な子供であったのは、自覚している。
俺がゲームに興味を示したとき、両親はむしろ安堵したほどだ。
思い出して、少し苦笑いが浮かぶ。
「最後は僕だね。御門結希。結希と呼んでほしいな」
にっこりと微笑む結希。
それに対し、明が顔を赤らめた。
「一応言っておくけれども、僕は男子生徒だから」
「「「ええ~!!!」」」
三人の大声が、車内に響く。
「本当よ。資料で確認したから」
舞が、こちらを見ずに補足した。
「いや、でも、なあ……」
「正直、驚きました」
「リアル男の娘、キターーーーぐえっ」
グリグリでは止まらないと判断した明によって、首を絞められるみかん。
凄まじい表情をしているのだが、大丈夫だろうか……?
「特技は剣。好きなことも、剣技を極めること。よろしく!」
「一応、俺と共通の趣味でカラオケもある。剣だけの化け物ではないから、安心してくれ」
俺は、結希の言葉を補足した。
とはいえ、それ以外ではせいぜい俺と同じゲームをやっているくらいであり、それ以外の全ての時間を剣に捧げているといっても、過言ではないのだが。
「さて、コンビニについたわよ。降りる準備をしてね」
舞の言葉に従い、俺たちはシートベルトを外した。




