遅番あけ
明日は休日。今朝まで遅番だったので、この後は仕事なし。なので、ほぼ2日休みとなる。
ハルは、仕事が終わって部屋に戻ると、お昼過ぎまで睡眠をとり、軽く食事を済ませてから、図書館に向かった。先日フィオレッティが行った“魅了“。“対魅了“をものともしないほどの強力な“魅了“は、自分にも行使可能なのか、そもそもどうやっているのか。それを確かめるべく、図書館に足を向ける。
一方フィオレッティは仕事が終わった後、部屋には戻らず、ある場所に向かった。そこは、王立学園。門をくぐり、とある部屋の前に立つ。
コンコン。
「どうぞ」
声の主は部屋の主人、ロッドウェル。
「先生、話が違うぜ、何だ、あのバケモンは。」
「いきなり、ご挨拶ですね、フィオレッティ君。」
「そりゃぁ、そうだろよ。それより、どうだいアイツ、おもしれぇだろ?」
「何だ、いたんですか、エレファルドさん。」
「話が違う、とはどういうことですか?」
「どうもこうも、規格外だろ、あんなの。」
「何やったんだ、アイツ。」
「アンチ・インビジブル、アンチ結界、隠蔽結界、念話、俺の魅了の痕跡消去、それと、普通に剣術もA級レベル。」
「あっははは、こりゃいい。スゲェな、アイツは。」
「それで、どうですか、行けそうですか?」
「えぇ、合格でしょ、普通に。少なくても、敵に回したくないです。」
「なら、決まりですね。」
「で、あっちの件は?」
「あぁ、フィオのいう通り、相当まずい状況だな。ここまで進んでいるとは思わなかったぜ。おそらくは、」
「そうですね、近々行われる“巡礼の儀“がターゲットでしょう。」
「確か、護衛は近衛師団の選抜隊なんですよね?」
「えぇ、そしてそこに君とハルにも入ってもらう予定です。」
「まぁ、俺はいいとして、ハルには、いつ伝えるんです?」
「そうですねぇ、直前でいいでしょう、彼に伝えるのは。」
「わかりました、それなら、しばらくは普通に接します。」
「そうしておいてください。」
「そういやぁ、フィオ。遅番明けで眠みぃだろ?ほれ、コレ。」
「おぉ、“ベリミル“じゃん。サンキュー、これ食って、さっさと寝ます。んじゃ、俺はこれで。あとは頼んますよ、“センパイ“。」
「お疲れ様。」
「なんかアイツ、楽しそうじゃねぇか。」
「そうですね、“ハル“、でしたっけ?彼のおかげ、ですかね。」
「そうですねぇ。で、次は、あなたの番ですよ、ミゼル。」
「はいはい。私の場合、少し手荒くなるけど、いいですよね?」
「ほどほど、にお願いしますね。」
「気をつけます、たぶん、ですけど。」
部屋を出ていくミゼルの後ろ姿を見送りながら、深いため息をつくロッドウェル。でも、表情は穏やかだった。
「大変だね、ダンナ。」
「そうでもないですよ、これでも結構楽しんでます。」
「なら、いいがな。じゃぁ、俺もいくわ、カミさんに叱られるんでね。」
「後で、食べに行きます。スペシャル。」
「はいよ。」
「う〜ん、“魅了“についての記述はあったけど、“対魅了“については、どの魔法書にも記述がないなぁ。まぁ、“魅了“が分かれば、その応用で“対魅了“はできるってことなのかなぁ。実際あの時、僕にも“対魅了“は察知できたのだから、そういうものなんでしょう。でも、それをどうやって克服するんだろう?どこかしらを強化するんだろうけど、それがどこなのか、わかんないや。まずは、“対魅了“からかな。今度帰った時、ゼノ爺に聞いてみようっと。」
ハルは、大きく伸びをして、図書館を後にした。




